一橋大学 神岡教授に訊く! ニューノーマル時代のカスタマーエクスペリエンス
【第3回】 デジタルCXの成果を出すためのマーケティングソリューションとは

第1回では、カスタマーエクスペリエンス(CX)の現状、CXとDXの関係についてを、第2回では、デジタルを活用してCXを向上させるための要点、成功事例を解説しました。

最終回となる本回では、NTTテクノクロス社のデジタルマーケティングツール「MarketingAuthority」開発責任者も交え、顧客管理システムを活用したCX向上の成功事例及び今後の方向性について解説します。

第3回:デジタルCXの成果を出すためのマーケティングソリューションとは

  • 顧客とのタッチポイント毎に最適なコミュニケーションを行える仕組みが必要
  • 「MarketingAuthority」のデジタルCX向上の活用例
  • ポイントプログラムは「お得感の醸成」から「行動変容の促進」にシフトへ
  • カスタマーエクスペリエンスの注目キーワードは「メタバース」と「EX」

顧客とのタッチポイント毎に最適なコミュニケーションを行える仕組みが必要

ニューノーマル時代のマーケティングにおいては、デジタルとリアルを自由に行き来する顧客とのタッチポイントをシームレスにつなぎ、個々に最適化されたコミュニケーションが求められています。そのためには、顧客の行動データを集約して一元管理できる仕組みが必要となります。


顧客管理システムは数多く存在しますが、その中でも顧客データを活用したデジタルマーケティング統合プラットフォームがNTTテクノクロス社の「MarketingAuthority」です。

「MarketingAuthority」は、顧客管理、コンテンツ管理、メール配信、アンケートおよびユーザー応対といったコミュニケーション機能とポイントサービス機能を備えています。


例えば、次のようなことが可能です。

  • ユーザーの年代や家族構成、購買履歴などのセグメント情報に基づいて効果的な購買促進メールや資料が配信できる
  • メール配信履歴やアンケート結果に基づき、会員サイトのマイページ上にユーザー個別の関心に合ったコンテンツの出し分けが可能
  • 会員サイトへのログイン、アンケートへの回答などのユーザーの行動に対し、デジタルポイントの付与や交換をスムーズに行える
  • BIなど異なるシステムとのデータ連携が容易、かつ大容量データを高速処理できる

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「MarketingAuthority」開発責任者の村井盛宜氏は、製品の特長をアピールします。
「マイページ単体やポイント単体で管理できるツールは数多くあります。しかし、それらを有機的に組合せ、特許取得済みのパーソナライズ機能で顧客へのアプローチに活用できる唯一の製品が『MarketingAuthority』です」(村井氏)

MarketingAuthority」のデジタルCX向上の活用例

村井氏は、「MarketingAuthority」導入ニーズが、近年急増している背景を説明します。


「大きく2つあると考えます。1つ目は、お客様データを集約し、リアルタイムに分析することでCXを高める動きです。2つ目は、製造業が販売代理店や小売りを介さず直接エンドユーザーに向けて製品を販売する『DtoC(Direct to Consumer)』ニーズです。『MarketingAuthority』とデジタル分析ツールを連携させて顧客データベースやポイント情報を一元化することで、マイページ上で最新の顧客情報を閲覧できます。これまで、顧客とのコミュニケーションチャネル増加による利便性向上、電話問合せの業務効率化、解約・離反抑止といった成果が得られています」(村井氏)


また、村井氏は、BtoC企業だけでなく、BtoB企業への導入が広がっていると力を込めます。


「最近BtoB企業からのお問い合わせが増えているのが、不動産業界と製造業です。不動産会社では、仲介終了後も顧客との関係を維持するためポイントサービスを導入する動きが出ています。例えば、不動産会社が大家さんにポイントを付与し、家のメンテナンスやリフォームなどに利用するなどです。製造業では、販売代理店への動機付けや関係強化のためにポイントサービスを利用しています」(村井氏)


「MarketingAuthority」開発責任者の村井盛宜氏

ポイントプログラムは「お得感の醸成」から「行動変容の促進」にシフトへ

ポイントプログラムとCXの関係について、神岡教授は次のように語ります。
「ポイントプログラムはCX向上やそのきっかけ、入口とするのに有効です。しかし、航空会社やECなど多くの消費者向けサービス企業で同様な仕組みがあるため、ポイントだけでは差別化は難しくなっています。私は『納得感』が重要だと考えます。つまり、購入頻度や購入金額、あるいは顧客に手間をかけたことなどに見合ったポイントが付与されているかどうかです。常にポイントを大盤振る舞いしているショップも見受けられますが、そうなるとポイントがつかないと買わないということになります。顧客のエンゲージメントにはつながりにくく、企業側からすると投資効果上問題です」(神岡教授)

村井氏は、ポイントサービスの導入目的が、「お得感の醸成」から「行動変容の促進」にシフトしていると指摘しました。


「代金割引や来店率向上の見返りとしてポイントを付与するだけでなく、例えば、お子さんが生まれた、家族構成が変わったといったタイミングでポイントを付与するケースが挙げられます。つまり、最新の顧客情報を入手し、パーソナライズされたコミュニケーションを行うための潤滑剤としての位置づけです」(村井氏)


自治体が「地域通貨」として使えるポイントを発行する動きも広がっています。
例えば、一部の自治体が取り組んでいる健康ポイント事業では、スマホアプリなどを利用して、運動量や健康イベント参加に応じたポイントが貯まる制度を導入しています。健康ポイントの導入により、市民の健康への意識を高め、医療費を抑制することが狙いです。

カスタマーエクスペリエンスの注目キーワードは「メタバース」と「EX」

今後のカスタマーエクスペリエンスの方向性について、神岡教授は「メタバース(インターネット上の3次元の仮想空間)」と「EX(Employee Experience:従業員の経験)」を挙げました。


メタバースでは、ユーザーはVR(Virtual Reality)ゴーグルを頭につけ、自分のキャラクターとして「アバター」を使って、バーチャル空間での生活ができます。空間内では、他のアバターと交流したり、買い物したりすることもできるため、新たな広告媒体や販売チャネルとして注目されており、大手企業が続々と参入しています。


EXは、従業員の採用から退職するまでのサイクルを通して、従業員と良好な関係を保つことの重要性を示す概念です。従業員エンゲージメントを高めることで、社内ひいてはお客様に対してもより良い体験を提供することになるという考え方です。


「今後はメタバースに費やす時間が増えると予想しています。そのため、メタバースでの顧客体験をいかに良いものにするかが重要になるでしょう。メタバースで過ごすことを目的とした、つまりそこでの顧客経験を向上するための商品やビジネスが生まれつつあります。また、EXも重要です。人材不足やコンプライアンスを背景として、企業の労働環境が一層問われることになるでしょう。デジタル技術によりさまざまな働き方が実現できる環境になりつつあり、数年前とは全く異なる状況です。リモートがいいか悪いかという宗教戦争の問題ではなく、それを自分にあったように臨機応変に選択できるということがポイントです。今こそリアルの価値を改めて見直してCX再設計を行うべきです」(神岡教授)


村井氏は、「MarketingAuthority」の今後の開発について展望を語りました。


「これからは、自社のお客様像であるペルソナを把握し、カスタマージャーニーを起点としてCXを考えていくことが益々重要になると考えます。つまり、顧客がどのような人かを知るだけでなく、どんな行動をするのかを把握することです。そこで、今後はタッチポイントの情報収集の拡充やコールセンターCRMとの連携を計画しています。さらにCX向上に貢献できるよう開発を進めています」(村井氏)


デジタル化の進展と、顧客の価値観の変化や多様化が進み、まさに「VUCA」の時代に即したカスタマーエクスペリエンスが求められています。

今回のポイント

  • NTTテクノクロス社の「MarketingAuthority」は、顧客属性や行動に合わせた最適なコミュニケーションを提供する統合プラットフォームである
  • 「MarketingAuthority」導入ニーズのキーワードは「顧客との関係性強化」と「DtoC(Direct to Consumer)」
  • ポイントプログラムはCX向上に有効であり、「行動変容の促進」目的で活用されている
  • 今後のCXは「メタバース」と「EX」に注目

(文責:ISBマーケティング株式会社)

※本コラムに記載されているシステム名、製品名は各社の登録商標または商標です。なお、本文では、「™」、「®」は明記しておりません。

オールインワンCXツール MarketingAuthority

神岡太郎教授プロフィール

一橋大学 経営管理研究科教授 工学博士

主な研究テーマは、マーケティングにおけるITの利活用、ITマネジメント、CMO、CIOである。研究論文以外に、著書として『デジタル変革とそのリーダー CDO』(同文舘出版、2019年)、共著として『マーケティング立国ニッポンへ』(日経BP社、2013年)、『CIO学』(東大出版会、2007年)、『CMO マーケティング最高責任者』(ダイヤモンド社、2006年)などがあるほか、企業と共同でマーケティングの実証実験にも多数参加している。

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