MarketingAuthority CX&ポイントコラム 第2回:後編
エムズコミュニケイト 岡田社長に訊く! CX&ポイントコラム 第2回
ポイント会計処理~上場企業に強制適用!引当金処理から切替必要:後編
2021年から上場企業に強制適用されるポイントサービスに関する会計処理が初めて国内で規定された。
今まではどう処理するのが一般的だったのか、また従来の一般的な方法との違い、そもそも新たな会計処理は、どのような考え方のもと規定されたのか等について解説していきます。
- ・ポイントサービス制度の会計処理が規定された背景
- ・新ポイント会計基準とは?
- ・ポイント新会計基準の留意すべきポイント
- ・自社グループ共通ポイントの会計処理はどうする?
- ・ポイントサービスの有効期限の見直しも必要
- ・新ポイント会計基準における今後の留意点
自社グループ共通ポイントの会計処理はどうする?
自社グループ共通ポイントの会計処理はなかなか悩ましい問題を抱えていることが多いです。
グループ共通ポイントといっても、もともとルールの異なるポイントサービスを実施している複数の事業会社のポイントサービスを一つの付与交換ルールにまとめるのは各事業や顧客の特性から難しいケースが多く、付与、交換が同一ルールで行われているケースは少ないようです。
後述しますが、まずはグループ会社毎に異なるポイントシステムを導入していたとしても、ポイント会計処理の観点から、付与、交換の履歴データがきちんと取得保管できるシステム環境であるかをまずチェックすることが重要です。また、経理処理を各社で行うのか、本社一括で行うのかも論点となります。
企業によっては、グループ間事業会社の中でのポイント発行、ポイント利用の管理処理が複雑なため、ポイント発行管理専門の子会社をそのために新たに立ち上げるケースも珍しくないようです。
ポイントサービスの有効期限の見直しも必要
ポイントサービスの有効期限に関しては留意する点があります。ポイントサービスの有効期限を1年として、購入利用があった場合、最終購入日からさらに1年延長されるといった延長利用方式を採用しているようなケースの場合、顧客がもし、ポイント利用を意識せず、貯め込んでしまうと、繰り延べられた売上が、いつまでたっても「回収」できない事態となってしまいます。よって、一定期間で必ず失効させる方式に変更するなど、見直しは必要でしょう。システムの変更も伴うかもしれませんが、該当する場合は検討した方がよいでしょう。
新ポイント会計基準における今後の留意点
今後は、自社として購入ポイントとアクションポイントの実施をどのような組み合わせでやっていくのか、また、ポイントの交換は値引きのみとするのか、値引き以外の交換商品(例えば、500ポイント貯まったら交換できるお買い物券、ポイント交換限定商品など)も用意するのか、といったことをポイント会計の観点でも捉え直し、経理部門と将来戦略の考え方も含め共有していくことが重要となります。
2021年から上場企業に強制適用されるという割に、ポイントサービス運用部門と経理部門とのコミュニケーションが薄く、会計処理方法についてきちんとした話し合いが行われていないケースは大手でも多いと聞きます。
例えば、現在はアクションポイントを採用していなかったとしても、今後、WEBサイトへのアクセス強化を目的に、アクションポイントを導入する傾向は大いにあるでしょう。そのような計画が経理部門に届いていない場合、経理部門はすべての発生ポイントを新会計基準一本でしか処理できない環境を作ってしまう恐れもあります。
ポイントサービスの企画運用部門がポイント新会計基準について認知がなく、また、自社でポイントサービスを実施していること自体を経理部門が認識していないというケースも実際に生じています。
また、新会計基準に基づく会計処理が可能なように、ポイント付与、交換の顧客ID毎の履歴の取得、データ保管・抽出ができるシステム環境になっているかという点も重要です。経理部門からの要望によっては、ポイントシステム上で新ポイント会計処理用の経理帳票を出力できるシステム開発が必要となる場合もあるでしょう。
ぜひ双方の関係部署がコミュニケーションを取りあい、自社における正しいポイント会計処理のあり方において共有認識をもっているようにしたいものです。
新基準に対応したポイントシステム MarketingAuthority
【岡田社長 最新コラム】 ポイントサービス導入あるある! ~落とし穴とその対策
岡田祐子プロフィール
株式会社エムズコミュニケイト代表取締役社長 岡田祐子
執筆者紹介:慶應義塾大学卒業後、大日本印刷入社。
2003年に国内唯一のポイントサービス/会員組織構築・運用に関する専門コンサルティング会社エムズコミュニケイトをDNPグループ会社として設立、2018年にMBO。
参考・引用出典:
・「ポイントサービスのしくみと会計・税務」EY新日本有限責任監査法人編(中央経済社発行)エムズコミュニケイト岡田執筆協力
・「成功するポイントサービス」株式会社エムズコミュニケイト岡田祐子著(WAVE出版発行)
『プロが教えるポイントカードの仕組みやメリット、導入する際の注意点』など、ポイントサービスの導入や改善に関するノウハウを読みやすい記事形式で紹介している。