エムズコミュニケイト 岡田社長に訊く! CX&ポイントコラム 第2回
ポイント会計処理~上場企業に強制適用!引当金処理から切替必要:前編

 2021年から上場企業に強制適用されるポイントサービスに関する会計処理が初めて国内で規定された。
 今まではどう処理するのが一般的だったのか、また従来の一般的な方法との違い、そもそも新たな会計処理は、どのような考え方のもと規定されたのか等について解説していきます。

前編
  • ・ポイントサービス制度の会計処理が規定された背景
  • ・新ポイント会計基準とは?
  • ・ポイント新会計基準の留意すべきポイント
後編
  • ・自社グループ共通ポイントの会計処理はどうする?
  • ・ポイントサービスの有効期限の見直しも必要
  • ・新ポイント会計基準における今後の留意点

ポイントサービス制度の会計処理が規定された背景

 まず、ポイントサービスの会計処理が国内で初めて規定された経緯について説明します。
 そもそもは、日本の企業会計の国際会計基準化の動きに端を発しています。日本の会計基準は、企業会計基準委員会(通称ASBJ)で審査され規定されます。その中で、今回、「収益認識に関する包括的な会計基準」について大きく見直されました。ポイントサービスについても、売上に対して付与したポイントは将来使われることを踏まえると付与した段階で収益と見なすべき、という判断となり、従来、ポイントの会計処理で行われてきた引当金処理※は認めなくなりました。
 今回定められたポイントサービスの会計処理は、2021年から上場企業には強制適用されるため、準大手企業もそれに従うことになるでしょう。また、中小企業においても引当金処理が明確にNGとされたため、従来の会計処理は見直した方がよいでしょう。

※注) ポイント制度の従来の会計処理方針は、一般的な定めはなかったため、実務上、将来にポイントとの交換に要すると見込まれる費用を引当金として計上する処理が主でした。総発行ポイントに対し、どの程度の引当金を計上するかというのは、各企業の判断に一任されており、一般的には昨年度の使用実績に応じて引き当てる場合が多く、例えばポイントサービスの利用使用率が50%だった場合、ポイント発行量の半分に相当する金額を引き当てていました。

新ポイント会計基準とは?

 先に説明した「収益認識会計基準」では、ポイントは、将来発生する「費用」でなく「収益」として認識します。

例:10,000円の商品購入について、1,000円分のポイントを付与した場合

従来
現金 10,000円 売上 10,000円
引当金繰入 1,000円 引当金 1,000円
新会計基準
現金 10,000円 売上 9,090円※1
契約負債 910円※2

 上記を例に見て頂くと分かるように、新会計基準では、10,000円の商品購入に1,000円分のポイントを付与した場合、売上マイナスの処理を行います。

参考)独立販売価格の計算式
※1)10,000円×10,000円/(10,000円+1,000円)=9,090.9090…円
※2)1,000円×10,000円/(10,000円+1,000円)=909.0909…円

ポイント新会計基準の留意すべきポイント

 留意すべきこととして、この新基準が採用されるポイントサービス(ポイント付与)は、購入など取引に伴う金額が発生する場合に限られるということです。来店ポイントやWEBログインポイント、入会ポイントのような金額の伴わないポイント付与、いわゆる「アクションポイント」は、従来通りの引当金処理となります。

 ポイントサービスの付与において何が新会計基準に該当するかが論点となります。
 ポイントサービスの付与の種類により、履行義務の有り無しの規定が異なり、今回定められたポイント会計で処理をしなければならないのか、それとも従来の引当金処理のままでよいのかが異なってくるからです。
 ポイント付与種類は、購入に応じたポイント付与、購入以外のアクションに応じたポイント付与の他、継続利用に対するポイント付与やボーナスポイントなど、様々な種類があります。
自社のポイントの種類を会計仕訳の視点でとらえ直し、経理部門と情報連携していくことが必要となります。
 後編では、昨今顧客管理一元化の動きに伴い事例が増えている「自社グループ共通ポイント」の会計処理や今後留意すべき点等について解説を続けます。

ポイント会計処理~上場企業に強制適用!引当金処理から切替必要:後編

岡田祐子プロフィール

株式会社エムズコミュニケイト代表取締役社長 岡田祐子

執筆者紹介:慶應義塾大学卒業後、大日本印刷入社。
2003年に国内唯一のポイントサービス/会員組織構築・運用に関する専門コンサルティング会社エムズコミュニケイトをDNPグループ会社として設立、2018年にMBO。

参考・引用出典:
・「ポイントサービスのしくみと会計・税務」EY新日本有限責任監査法人編(中央経済社発行)エムズコミュニケイト岡田執筆協力
・「成功するポイントサービス」株式会社エムズコミュニケイト岡田祐子著(WAVE出版発行)

『プロが教えるポイントカードの仕組みやメリット、導入する際の注意点』など、ポイントサービスの導入や改善に関するノウハウを読みやすい記事形式で紹介している。

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