エムズコミュニケイト 岡田社長に訊く! CX&ポイントコラム 第1回
顧客管理の一元化/ID統合の事例と方法:前編

顧客の一元化、顧客ID統合の課題や各業界の実施事例、また一元化、統合する際のポイントについて前編、後編でご紹介していきます。

前編
  • ・顧客ID 一元管理とは?
    実現できることは何?
  • ・顧客の一元管理ができていないNG事例
  • ・企業が顧客ID管理・統合に動く理由と背景
  • ・顧客ID統合の業界動向事例
  • ・顧客ID統合とポイントサービスの活用
後編
  • ・顧客ID統合の方法とその事例紹介
  • ・顧客ID統合の方法はどのように決定するか
  • ・顧客一元化・ID統合システム構築時の技術的ポイントとは?

はじめに

 ここ数年、顧客の囲い込みにおけるトレンドとして、自社にて拡散している顧客IDを一つに統合し、一元管理できる顧客プラットフォームを再構築する動きがあります。
 これの動きは大企業はもとより、中堅企業にも当てはまる傾向となります。

顧客ID 一元管理とは? 実現できることは何?

 顧客ID統合、顧客の一元管理とは、自社において複数の事業やサービス毎にバラバラに行っていた顧客管理を、顧客IDを統合することにより一元化することで、顧客にとっても、利便性が高まります。
 企業にとっては、自社グループのA事業とB事業において、どの程度相互利用があるかをデータ上で検証でき、それを促進したい場合、相互に誘客、送客を行うことができます。顧客データを統合することで、より質の高いマーケティングができるということです。
 しかし、自社において顧客が一元管理できていないことによるNG事例は枚挙にいとまがありません。

顧客の一元管理ができていないNG事例
~大手メーカーや全国展開スーパーでも~

 例えば、ある大手自動車メーカーでは、車の販売は販売会社が行っており、販売会社にて顧客管理がなされていました。またレンタカーサービス、カーシェアサービス、EC物品販売事業等、多角的に展開しており、それぞれの事業毎に顧客管理を行っており、顧客の重複管理チェックは元より、グループ内の複数事業利用の実態も把握できていませんでした。

 また、あるスーパーは古くからポイントカードを導入し、購入に応じたポイント付与を行っていました。しばらくするとクレジットカード会社から売込みがあり、クレジットカードタイプのポイントカードも導入し始めました。続いて、自社プリペイド(ハウス電子マネー)の導入が流行りはじめると、プレミアム分のコストはかさむもの、顧客の月の食費に相当するキャッシュを先に預かることができ、またキャッシュレス促進にもつながるメリットもあり、プリペイドカードの導入もしました。

 いずれも、その時々の目的に応じて導入、さらに導入担当部門が異なっていたことから、 元々のポイントカードとは連携しておらず、どのカードを持ってもらうことがよいのかという全体としての顧客戦略もなく、ポイントカード、クレジットカード、プリペイドカードと3枚保有しているような顧客も発生するありさまです。それぞれのシステムが異なるため当然ながら顧客IDも異なり、自社グループ全体での優良顧客の把握をすることもできず、運営システムコストも増大する一方でした。また、それぞれの導入効果も見えない状況でした。

 その他、メルマガ会員、自社の店頭ポイントカード会員、通販会員がそれぞれバラバラに管理されていて、顧客の重複チェックや一元管理できておらず、店頭購入と通販購入のクロスセル促進ができていないケースなどもよく見られるNG事例です。

企業が顧客ID管理・統合に動く理由と背景

 昨今、エネルギー業界、住宅メーカー、不動産など、直接の顧客接点をあまり持たなかった業界においても、顧客に会員登録をさせ、会員サービスを展開する動きが活発になっています。
 IDで自社(グループ)に接点を持たせ、囲い込みを行っていくことは、人口減少時代に生き残るための不可欠な手段であるからです。

企業の顧客ID統合によってできることのまとめ

  • - 顧客ID登録により、企業、企業グループ内の購買行動に紐づくデータ活用が可能
  • - 顧客行動履歴に応じたアプローチ手法が採用でき、アプローチの期間・タイミング・インセンティブ施策内容がそれぞれコントロールできるようになる。
  • - ポイントサービスを絡めることでクロスセル、アップセルン促進が図れる。

顧客ID統合の業界動向事例

1.家電メーカーの小売を飛び越えた顧客囲い込みの動き

 大手家電メーカー各社では、国内の少子化と、家電の買い替え年数の伸長により、製品自体の販売数の下限傾向が止まらないため、IoT家電を続々と投入、ハード販売以上に、IOTコンテンツであるソフト販売にシフトしていく業態変革が進展しています。
 具体的にはTVというハードの売り切り販売スタイルから、放送されるコンテンツ込みのサブスクリプションモデルでの販売提供スタイルに変更するなどがその例です。
 パナソニックは、自社製品のユーザーに購入製品のアフターサポートのサービス提供等をうたい、クラブパナソニックという会員サービスを展開しています。

2.電鉄グループのグループ顧客ID統合による沿線住民囲い込みとブランディングの動き

 百貨店、商業施設、ス―パーなどの小売、不動産、ホテル、飲食、 レジャー、旅行代理店、新電力、通信等々、すべてのサービスを自社グループ内で利用してもらうべく、グループ共通ポイントを導入、各事業毎についている顧客からより売上、収益をあげていくことが可能となりました。さらにはロイヤルティを上げ、しいては沿線のブランディングにもつなげようという動きが進んでいます。
 自社グループの事業、サービスを複数利用すればするほど、ステージランクが上がる制度を導入している会社もあります。

3.不動産業界における顧客ID統合によるグループ内、バリューチェン拡大の動き

 従来、一生に一度買うか買わないかという購入頻度である住宅・不動産業界は、売った後、法律で定められた定期点検による顧客接点は持つものの、それ以外の顧客接点作りには特に重きを置いていないことがほとんどでした。しかし、業界でも、ライフタイムバリュー戦略を取り入れ、新築/中古購入後のリフォーム、転売、インテリア、ハウスクリーニングの関連商材・サービスの販売等をすべて自社グループまたは提携サービスにおいて顧客に提供していこうという動きが加速しています。住宅販売時の契約情報とは別に、オーナー会員制度による、さまざまな顧客接点情報管理を行い、そのような動きを実現させています。

顧客ID統合とポイントサービスの活用

 顧客ID一元化、統合における最大の留意点は、そのこと自体は企業都合に過ぎないという点です。
 顧客がメリットと思っているインセンティブを、IDに対する顧客アクションの対価として供与することが必要となります。
 従って、ポイントサービスをうまく活用することが肝要です。
 ポイントは、おトク・値引きなどの概念を遥かに越え、企業と顧客の関係性上に成り立つ、これからのマーケティングに必然的な手段、と捉えるとよいでしょう。

 NTTテクノクロスが提供する「MarketingAuthority」はまさに顧客ひとりひとりを多面的に見ることを開発思想に置いているとのこと。顧客管理のシステム選びには機能の比較だけでなく、開発の思想がどのようであるかもぜひ確認いただきたいと思います。

顧客管理の一元化/ID統合の事例と方法:後編

岡田祐子プロフィール

株式会社エムズコミュニケイト代表取締役社長 岡田祐子

執筆者紹介:慶應義塾大学卒業後、大日本印刷入社。
2003年に国内唯一のポイントサービス/会員組織構築・運用に関する専門コンサルティング会社エムズコミュニケイトをDNPグループ会社として設立、2018年にMBO。

参考・引用出典:
・「ポイントサービスのしくみと会計・税務」EY新日本有限責任監査法人編(中央経済社発行)エムズコミュニケイト岡田執筆協力
・「成功するポイントサービス」株式会社エムズコミュニケイト岡田祐子著(WAVE出版発行)

『プロが教えるポイントカードの仕組みやメリット、導入する際の注意点』など、ポイントサービスの導入や改善に関するノウハウを読みやすい記事形式で紹介している。

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