CRM/ポイントシステム導入検討において押さえておくべきこと
【第3回】 CRMシステム導入・見直しプロジェクトを成功させるコツ

CRM/ポイントシステム導入検討において押さえておくべきこと

 第1回ではコロナ禍においてCRM関連のシステム投資が増えているという独自の調査結果を紹介いただいき、第2回では企業におけるCRMシステムの見直し、導入を検討する際に発生する諸問題についてCRMやポイントサービスなどのロイヤルティプログラム構築・運用を専門に支援しているコンサルティング会社、エムズコミュニケイト代表の岡田祐子氏に、弊社CRM/顧客管理・ポイント管理システムMarketingAuthority開発責任者の村井盛宜がインタビューを行いました。

 第3回はPJを成功させる秘訣について。NTTテクノクロスではそのような諸問題に対してどのように対応、解決しているか、事例を交えて紹介いたします。

第3回  CRMシステム導入・見直しプロジェクトを成功させるコツ

岡田:サービス設計のご支援からシステム導入、リリースまでを伴走させていただく機会も増えていく中で、事前の社内システムとのFIT&GAP分析や、システムベンダー側の提案のスコープのすり合わせ、要件定義での細かいフォロー、シナリオテストの設計などでの役回りが、QCD(品質・費用・納期)に貢献できていると感じる場面も少なくありません

村井:我々もPMO体制のダブルチェックで提供するなど、QCDには細心の注意を払っているつもりですが、具体的にどのようなところですか?

岡田:最近、CRM関連のMAやポイントシステムはスクラッチ開発でなくSaaS型パッケージシステムを導入するケース増えています。ただ、SaaS型なら比較的リーズナブルであろうという企業の期待とは裏腹に、既存の基幹システムと接続する場合、I/Fをどちらで合わせるかという段になって、改修コストの上積みをされるというのはよく聞く話なのですが、企業の担当者の側からするとそこまで想定できているケースの方が少ないのです。

村井:基幹システムがある場合、そちらの改修の方が大変ですから、そのようなことは仕方がない部分かもしれませんね。

岡田:確かにそうなのですが、ベンダーによっては、カスタマイズはできるだけ少なくするのでと言って低めに見積を出しておきながら、要件定義の段になってどんどんとカスタマイズ費用を上乗せしてくるところも少なくありません。それが良いか悪いかという話ではなく、企業の担当者がシステムについて知見がある場合とない場合の認識の差が激しいので、そのあたりのコミュニケーションも重要だと考えています。

村井:私どもの事例でも、システムに明るくないクライアントや、とてもお詳しいクライアントなどさまざまいらっしゃいますが、そのあたりは目線合わせをしながら進めていくことを心がけています。

岡田:もう1つ事例を紹介すると、要件定義や設計開発の段階において、企業側もシステムベンダー側も答えを持っていないため、コンフリクトが発生することがあります。

村井:たとえば、どのようなケースですか?

岡田:マルチベンダー開発の場合において、既存のシステムとのつなぎこみに追加で工数がかかると言われると、システムベンダーも対応せざるを得ず、企業側も飲むしかない。ただ、それによってコストが膨れ上がり、納期も後ろ倒しになる可能性があると言われると誰もジャッジができなくなるのです。そのような場合は、あるべき論に立ち返り、提案内容を精査するなどして、QCDを担保したケースがあります。

村井:それはなかなかタフなコンフリクトでしたね。もし私たちが当事者の立場であれば、エムズさんと同じようにしっかりとグリップを握ってQCDを担保できるよう、調整をかけていくというスタンスを取りますね。

岡田:第2回で、要件定義や設計開発の段階において、企業側もシステムベンダー側も答えを持っていないコンフリクトが発生することがあると紹介しましたが、実際ご経験はありますか?

村井:そうですね。よくあるのが、複数部門間がまたがる時に、要件定義の検討プロセスに関与していなかったため、後になってこうでないと困ると言ってくるケースなどがありますね。

システム開発の成否は要件定義のスコープにあり

村井:プロジェクトをスムーズに成功に導くポイントは要件定義だと考えています。私たちはここに時間を掛けさせてもらっていますが、ここでスコープが十全に定められるので、開発、リリースにおけるスケジュールのずれが起こったことは一回もありません。

岡田:要件定義を進める秘訣があるのですか?

村井:我々は“こういう機能を開発してほしい”と言われても、言われた通りに機能を作りました、というやり方をしないんですよ。

岡田:それはどういうことですか?

村井:まず、関連するステークホルダーをすべて並べて、関連する業務フローから逆算する形で機能を考えていく方式を採っています。機能開発ばかりでコストが増える場合は、業務フローそのものを調整するということもやっています。

岡田:他のベンダーさんに比べ丁寧によくやってくれるとお褒めの言葉を頂くことも多いのではないですか?

村井:そうですね(笑)


支援実績を踏まえ事例を語るNTTテクノクロス村井盛宜氏

某通信会社の入会登録時の離脱防止の事例

岡田:どの企業も会員登録を促進させたいという課題はよくありますが、その点で工夫された事例はありますか?

村井:某大手通信会社では、入会がなかなか進まないという課題を頂きました。入会登録時に、離脱の多い画面を特定し、そこの案内を改善することで入会登録段階での離脱を防ぐことができた事例があります。

岡田:入会登録は情報を集める貴重な機会ですので、ついあれもこれもと項目が増えがちですが、いかに負担を減らすかというナビゲーションの工夫の余地はたくさんありますね。

村井:また、ポイントの使い方での改善事例では、お客様のインサイトが異なることを踏まえたご提案をしたケースがあります。ポイントを一気に使う方は退会しやすいという傾向を捉え、ポイントを長期に貯めて使ったことがない方に、3か月に一度、ポイント抽選にチャレンジしてもらい、ちょこちょこ使ってもらう施策を組み入ることで、離脱防止に対する効果を上げることができました。

某メーカーのユーザー情報の収集方法改善の事例

村井:某メーカーさんは販売代理店による販売方式が100%なのですが、商品の性質上、法定点検が義務付けられています。そのため、最終エンドユーザーにいつ販売し、どのような製品をお使いかという情報収集と管理に、膨大なコストと労力がかかっているというケースがありました。

岡田:どのように対応されたのですか?

村井:まず、メーカーが直接販売していないので顧客情報が取得できません。そこで、ユーザーに直接購入情報を登録してもらうマイページの仕組みを作りました。その後、ECとマイページを統合したCDP構築を行い、BIツールも導入して、顧客情報が可視化できる仕組みを作ることで、大幅な業務改善につながりました。

企業に寄り添うシステムベンダーのスタイルとは?~NTTテクノクロスの強みとは

岡田:NTTの研究所でのソフトウェア開発を前身とするNTTテクノクロスさんならではの開発力の強みがMatketingAuthorityに詰まっていると認識しているのですが、もう少し掘り下げて教えていただけないでしょうか。

村井:当社はシステム導入にあたり、お客様の言うことをそのまま実施することを是としていません。理由は、お客様の考えている方式の誤りや、より良い手段、漏れなどを放置することにつながるからです。業務フローも含めてチェックさせていただく中でベストなソリューションを提案するスタンスをとっています。

岡田:私たちにポイントサービスの設計のご依頼があるケースでも、企業の担当者なりに考えていらっしゃるものの、専門家の観点からすると抜け漏れや、見落としがあるので、言われたものを作るというのはプロジェクト単体としてはいいかもしれませんが、お客様のビジネスに真に貢献できるかという視点ではリスクがあると思います。

村井:おっしゃる通りです。言われた通りにシステムを開発したとしても顧客のビジネスが目指すゴールを実現できなければ、結果としてシステム導入の失敗に繋がる可能性が高くなると考えているためです。

岡田:ビジネスや業務フロー全体もスコープにいれて考えていかないと、継ぎ接ぎに追加システム開発を行ったり、導入したけれど結果として使われなかったり、やりたいことができないでいるという話はよく聞く話ですね。

村井:当社では、上記のような失敗を起こさないようにするために、最初のお客様との要件定義を重視しています。要件定義でステークホルダの皆様と十分なコミュニケーションをとることで関係者各位の思いと当社の考え方のすり合わせを行い、関連する部門の納得が得られた上で次工程に進めさせていただいています。

システムベンダーとして重要なスタンス

岡田:そのようなお考えの背景にあるNTTテクノクロスのビジョンについてお聞かせいただいてもよろしいですか。

村井:私たちは“企業と企業のお客様の間の良好な関係構築をデジタル技術でサポートする”というビジョンのもと、ポイントを単にお得感の醸成のためだけに利用するのではなく、お客様と、お客様の円滑なコミュニケーションを促進するためのいわば潤滑剤として活用できるように開発しております。ポイントをお客様の行動に応じて付与し、付与したポイントをお客様に通知・活用していただくことでお客様の積極的な行動につなげ、接触頻度を向上させ、ザイオンス効果を高めることを目的としています。

岡田:クライアント企業へはどのようなスタンスで臨んでいらっしゃいますか?

村井:システム導入時のスタンスは上述の通りですが、システム導入後もお客様毎に必ず保守窓口を開設し、運用時のお困り事などの相談や問合せを気兼ねなくいただけるようにしています。また当社ではMarketingAuthority以外にもセキュリティやシステム連携、コンタクトセンターなどのソリューションに強みを持っており、デジタルだけでなくアナログの顧客接点も含め、トータルでセキュアな顧客接点の構築のご支援をさせていただいております。

岡田:企業としてセキュリティへの取り組みはシステム的には最も重要な課題ですが、サービスの面からすれば、統合IDやコールセンターとの連携をいかにシームレスに実現していくかということは、CS向上につながる重要なポイントですので、そのあたりも含めてトータルでサポートいただけるのは非常に心強いですね。

村井:CRMへの投資とそこにおけるポイントサービスの活用から、CRMシステム導入時の問題点、成功の秘訣についていろいろお話いただき、有難うございました。

岡田:顧客管理システム、CRMシステム、ポイント管理システムいずれにせよ、企業に寄り沿ってくれるシステムベンダーさんを選ぶことは何より重要な成功ポイントかもしれませんね。

トータルサポートで安心導入 MarketingAuthority

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岡田祐子プロフィール

株式会社エムズコミュニケイト代表取締役社長 岡田祐子

執筆者紹介:慶應義塾大学卒業後、大日本印刷入社。

2003年に国内唯一のポイントサービス/会員組織構築・運用に関する専門コンサルティング会社エムズコミュニケイトをDNPグループ会社として設立、2018年にMBO。ガイアの夜明けに出演

執筆著書:
・「ポイントサービスのしくみと会計・税務」EY新日本有限責任監査法人編(中央経済社発行)エムズコミュニケイト岡田執筆協力
・「成功するポイントサービス」株式会社エムズコミュニケイト岡田祐子著(WAVE出版発行)

『プロが教えるポイントカードの仕組みやメリット、導入する際の注意点』など、ポイントサービスの導入や改善に関するノウハウを読みやすい記事形式で紹介している。

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