CRM/ポイントシステム導入検討において押さえておくべきこと
【第2回】 いざCRMシステムの導入・見直し時に発生する諸問題

CRM/ポイントシステム導入検討において押さえておくべきこと

 第1回ではコロナ禍においてCRM関連のシステム投資が増えているという独自の調査結果を紹介いただいたCRMやポイントサービスなどのロイヤルティプログラム構築・運用を専門に支援しているコンサルティング会社、エムズコミュニケイト代表の岡田祐子氏に、弊社CRM/顧客管理・ポイント管理システムMarketingAuthority開発責任者の村井盛宜が引き続きインタビューを行いました。

第2回 いざCRMシステムの導入・見直し時に発生する諸問題


エムズコミュニケイト代表 岡田祐子氏とインタビュアーのNTTテクノクロス村井盛宜氏

CRM投資が増える企業の背景にあるもの

 岡田氏は、多くの企業は、CRMをやっていかなければと言いつつ、本当の意味で推進できている企業は少なかったのではと語っています。コロナ発生以降、CRM関連のシステム導入(新規導入、見直し共)について、実際に相談が来るケースには以下のような声があるとい言います。

  • 自社でCDPを構築し、顧客リストを整理し、セグメントメール配信をしているレベルでは優良顧客の育成、囲い込みができないことが分かった。
  • 属人的な営業スキルに頼るのではなく、戦略的に顧客とコミュニケーションをとっていかなければならないと気付き本当のCRMを考え始めた。
  • 従来は購入に応じてポイントをつけておけば他社並みレベルが保てると考えていた。
 このままではいけないという危機感の中で、
  • 顧客に長く愛される企業となるために自社のミッション、ビジョンをお客様サービス(会員サービスのコンテンツや思想など)にきちんと反映したCRM戦略を考えていきたいという切実感が社内で増している。
  • 今後は実施しているポイントを使ってコミュニケーションをもっと深めていきたいという声が上がってきた。例えば、コミュニケーション接点強化のために顧客の購買以外のアクションへポイント付与するなど。
  • コミュニケーションのタイミングの設計、ポイントサービス等のインセンティブの付与量や実施タイミングの見直しを図りたい。

といった検討に至ったようです。
これらがこのようなCRM関連への投資に力を入れはじめた企業の背景であると見ています。

ポイントサービス導入検討は社内横断的なプロジェクトで

岡田:ここからが今回の本題なのですが、ポイントサービスだけでなく、CRM関連のシステムの見直し、強化を進めて行こうとすると、企業の担当者には当初想定していなかった色々な課題が立ちはだかることになります。

村井:CRM特有の色々な課題とは具体的にどのようなものですか?

岡田:会計システムや在庫管理といった一部の業務に特化したシステムと異なり、CRM関連のシステムは社内の複数部門に連携が及ぶことが多く、社内横断的な調整やプロジェクト管理が必要になってきます。

村井:そのあたりは企業ごとの体制もあると思いますが、我々ベンダー側からは見えないところですね。

岡田:社内の担当部署がイニシアチブを取り、他部門を牽引していく必要があります。システム部のことはシステム部がやるからといった具合に、縄張り争いが起きてしまうと、時間とコストをかけたプロジェクトそのものが頓挫するケースも少なくありません。

村井:それは往々にしてあるかもしれませんね。

岡田:また、社内にシステム部門がない、またあっても社内業務システムの管理が専門で、マーケティングや施策関連のシステムを構築・運営した経験がないと、やろうとしていることに対応イメージが追いつかず、うまくいかないケースをよく見かけます。

岡田:また、今まで本格的にCRMをやってきたことがない企業ほど、顧客管理をしているようで、様々な顧客データが社内に分散する形で存在していたりするなど、ひとりの顧客を顧客ID単位で見ていくシステム構築をしていないなど、おざなりなケースが多いようです。

村井:顧客の一元管理やID統合は、企業からの需要も多いテーマですね。たとえば、企業の合併、統合に関連して企業毎にバラバラ立てていた顧客情報の管理やバラバラにやっていたポイントサービスをひとつにまとめたいという相談が多くなっています。

岡田:とはいえ、単なるID統合・サービス統合ありきになってしまうと、本来のCRM全体の目的が見えない、あっても漠然としたものになってしまいます。このような場合は、話を進めて行けばいくほど、何のためにやっているのか、ベクトルが合わず、システムの要件定義以前のビジネス要求の整理で行き詰ってしまうことが多いですね。

ベンダー選定における導入コストの考え方

岡田:目的が定まり、社内の共通理解が形成されると、システムベンダーを選定するステップに進んでいくのですが、支援の現場でよく聞かれるのが“ベンダーの提案の比較がなかなか難しい”という声です。

村井:はい、選定される立場として、どのような内容があるとわかりやすいのかは気になるところです。

岡田:前回も少し触れたのですが、ポイントサービスの与件をあまり理解しないままRFPが作成され、(得意不得意が異なる)システム会社にあちこち声がけをした結果、スコープの違う提案が集まってしまったということが、そもそも論外なのですが、かなりの頻度で起きていると感じています。

村井:企業の側としては、自分たちが何を求めているのか、それをどこにお願いすれば実現できる提案が出てくるのかが、わからないことは仕方がないのかもしれませんね。

岡田:私たちがご支援に入る場合でも、RFPに対する提案書の内容はベンダーにより千差万別で、十数枚程度のものもあれば、100ページ超に渡るケースもあり、横並びで比較するためにはそれなりの知識や経験が必要です。


概算見積から商品紹介資料、具体的な提案書など、システムベンダーによって出てくる資料の粒度はさまざま。比較するのが難しく担当者の頭を悩ませる場合が多い。

岡田:できる・できない、のレベル感で語られるのならまだしも、RFPに対して、システムベンダーのスコープが異なると、実際プロジェクトが始まった後に相当のズレが生じ、そこを埋めるために“想定外のコスト”として最終見積が膨れ上がることになります。

村井:一般的には、システム開発のコストは当初の概算見積の“−50%〜+100%”と言われています。当社の場合はなるべく上振れがないよう、事前にヒアリングを重ねた上で、予算内に収まるような提示の仕方を心がけています。

岡田:実際の企業にとってみれば、あらかじめ予算を抑えてプロジェクトを進めるので、+100%という話は到底許容できないケースもある一方、安全率をみた予算の確保というのも難しい部分もあります。

村井:そうですね、あとは事前にヒアリングを重ねても、認識そのものが抜け落ちているケースがあるとどうしても開発に影響が出ますので、エムズさんのようなコンサルティングの支援が事前に入られることで、結果的に予算の最適化となるケースもあるのでしょうね。

村井:余談ですが、開発コストも大事ですが、ITリテラシーが高い企業は個人情報や資産の取り扱いのセキュリティに対する要求が明確です。逆にそうでない企業はお金の話に終始することが多いですね(笑)

岡田:情報漏洩などのインシデントへの対応コストは莫大ですから、トータルでコストを考えると、当然そうなるのでしょうね。

村井:セキュリティに対しても、インハウスで守り、外部に出さない方針から、セキュリティを分解して考え、どこに対するリスクを、例えば暗号化して外部に持つ等、アプリケーションレイヤーでカバーしていく考え方にシフトしています。

岡田:次回はそのあたりをもう少し詳しくお聞かせください。私からはCRMシステム導入プロジェクトを成功させるコツについてお話をさせて頂きます。


第3回  CRMシステム導入・見直しプロジェクトを成功させるコツ

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岡田祐子プロフィール

株式会社エムズコミュニケイト代表取締役社長 岡田祐子

執筆者紹介:慶應義塾大学卒業後、大日本印刷入社。

2003年に国内唯一のポイントサービス/会員組織構築・運用に関する専門コンサルティング会社エムズコミュニケイトをDNPグループ会社として設立、2018年にMBO。ガイアの夜明けに出演

執筆著書:
・「ポイントサービスのしくみと会計・税務」EY新日本有限責任監査法人編(中央経済社発行)エムズコミュニケイト岡田執筆協力
・「成功するポイントサービス」株式会社エムズコミュニケイト岡田祐子著(WAVE出版発行)

『プロが教えるポイントカードの仕組みやメリット、導入する際の注意点』など、ポイントサービスの導入や改善に関するノウハウを読みやすい記事形式で紹介している。

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