CRM/ポイントシステム導入検討において押さえておくべきこと
【第1回】 CRMへの投資とポイントサービス活用ニーズの増加実態

CRM/ポイントシステム導入検討において押さえておくべきこと

 新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、生活様式や企業活動が大きく変化を迫られるに伴い、生活者の消費行動も著しく変容しました。対面販売の制限によるデリバリー業態の活性化や、店舗業態のECへのシフト、キャッシュレス決済導入が急速に進みました。

 リモート勤務やオンライン会議がここまで一般的になるとは誰が想像できたでしょうか。企業も新型コロナウイルス感染症の拡大防止策の一環として、半ば強制的にDXにシフトせざるをえない状況が起こりました。

 コロナ前からもDX推進の必要性が叫ばれていましたが、このようなニューノーマルの到来を受け、現実的に地に足の着いたDXを展開する時がやってきたといえるでしょう。

 多くの企業はこのような状況を踏まえ、どのように考え、様々な課題を解決のために何を進めようとしているのでしょうか。

 そのあたりを、企業の背景、抱えている事情なども含め、CRMやポイントサービスなどのロイヤルティプログラム構築・運用を専門に支援しているコンサルティング会社、エムズコミュニケイト代表の岡田祐子氏に、弊社CRM/顧客管理・ポイント管理システムMarketingAuthority開発責任者の村井盛宜がインタビューを行いました。


多数のコンサル経験を踏まえてインタビューに答えるエムズコミュニケイト代表 岡田 祐子氏

第1回 CRMへの投資とポイントサービス活用ニーズの増加実態

6割の企業がCRMに関するシステム投資を検討

岡田:エムズコミュニケイトの2021年の企業調査では、コロナ禍における企業のポイントシステムなどのCRMに関するシステムに6割の企業がポイントサービスのシステムリニューアルを予定・検討していると回答がありました。

予定・検討が58%

岡田:この6割という数字は、コロナ禍において売上の先行きが見えない企業も多いと言われた中、高い数字だと思いました。もともとMA、DXが叫ばれている中、実質的に顧客リスト化できている顧客に対し、確実にアプローチし、売上、利益を下支えしてもらわなければいけない、自社を支えてくれているのは日ごろから購入してくださっている優良顧客であることが分かったという点が大きいと思います。お客様にきちんと届く形で情報を発信し、お客様単位で顧客管理をしていく必要性を改めて感じ、舵を切らざるを得ないといった事情を反映した結果だと考えます。

*調査概要 ( 調査詳細はこちら
  • ・調査タイトル:全国ポイントサービス実施企業実態調査
  • ・実施期間:2021年6月
  • ・調査方法:主に郵送による記入式アンケート
  • ・調査対象:全国のポイントサービス導入企業
  • ・回答企業数:ポイントサービス実施企業152社(内、上場企業・大手企業は約3割)(業種内訳はメーカー、クレジット、銀行、エネルギー、商業施設、スーパー、ドラッグ、専門小売、外食、ホテル、通販等、自治体も含む)
  • ・調査主体:株式会社エムズコミュニケイト

岡田:弊社へのご相談に至る背景を色々と伺っていると、自社が持つデータを活用しようとCDP(カスタマーデータプラットフォーム)を導入し、CRMを実施する具体的な方法としてポイントサービスの導入を検討しているというケースが最も多くみられます。

村井:以前はDMP(データマネジメントプラットフォーム)で企業独自のマーケティングデータ(顧客属性情報、購買情報、各種プロモーションの結果等)と外部のオーディエンス情報を紐づける動きがありましたが、2019年頃からCDPの方へシフトする傾向にあるように思います。最近はCookie使用の禁止や制約なども後押ししているのでしょうね。

岡田:他には、BIツールやMAツールを導入したものの、優良顧客の育成や囲い込みのためには、これらでは不十分だと感じたため、ポイントサービスを導入したいというケースも少なくありません。

岡田:また、先の調査に先駆け、アフターコロナの顧客戦略に関する緊急アンケートを実施しましたが、その中でも優良顧客の貢献度が高いと回答した企業が約5割となりました。また、優良顧客の育成や囲い込みのためのソリューションとしてポイントサービスをより積極的に活用していきたいという企業は6割、以前と変わらず活用したいという回答を合わせると9割近い結果となりました。

優良顧客が貢献した:50% / アフターコロナでポイント・会員サービスを積極的に活用したい:60% 優良顧客が貢献した:50% / アフターコロナでポイント・会員サービスを積極的に活用したい:60%
※調査概要 ( 調査詳細はこちら
  • ・調査名:アフターコロナの顧客戦略に関する緊急アンケート
  • ・調査期間:2020年5月25日~6月8日
  • ・調査方法:記入式アンケート調査
  • ・調査対象:全国ポイントサービス導入企業
  • ・回答企業数:30社(7割強が上場または大手企業)
  • ・回答企業業種:メーカー・エネルギー・銀行・クレジット・鉄道・ホテル・商業施設、通販・ドラッグ・スーパー・専門小売・外食等
  • ・調査機関:株式会社エムズコミュニケイト

岡田:コロナ禍だからこそ、既存顧客重視、DX強化、アフターコロナを見据えて、CRM関連のシステム投資が増える傾向にあるのだと思います。

村井:このあたりはニューノーマルの対応として避けられない側面があるのでしょうね。

CRM戦略としてのポイントサービス

岡田:企業がCRMを強化しようとする中で、ポイントサービスの導入を検討する企業も少なくありません。

村井:弊社の支援事例でも、市場環境の変化から、顧客を囲い込む必要性が生じ、ポイント会員制度を構築したという事例がございます。

岡田:コロナ以降のご相談の特徴として、今までポイントサービスを導入していなかった全国規模のスポーツ用品など専門小売企業や、不動産や建設業界、顧客と直接接点を持ちたいメーカーなど、流通小売以外の引き合いが増えるようになったということが挙げられます。

村井:弊社でも2022年の年明けからポイントサービスをやりたいという問合せが急激に増えています。これまで、営業マンの属人的資質で売上を担保してきた企業が、コロナで営業活動が制限されたことで、本格的にCRMをやる必要がでてきたという事情があるようです。

岡田:店頭などでお客様とコミュニケーションを丁寧に交わし、関係性を構築していく手法だけでは十分な売上を担保できなくなってしまったということなのでしょうね。

村井:自社のサービスを使ってくれるとこんな特典があるという打ち出し方の一環で、ポイントサービスを始めた企業もあります。DX推進のトレンドもあると思いますが、コロナ以降、顧客とのデジタル接点の構築をいかに実現するかというのも、新しい企業の課題となっていますね。

岡田:とはいえ、留意しておきたいのは、顧客とのデジタル接点の構築というのはあくまでも手段に過ぎないということです。企業のLTVを最大化するには、優良顧客の育成や囲い込みを実現といった目標を明確に設定しなければいけません。

村井:ポイントサービスが注目されるのは、顧客との接点の創出と、優良顧客の育成、囲い込みを実現する手段として最適なツールだからなのですね。

岡田:はい、ロイヤルティプログラムそのものは欧米が発祥ですが、“ポイント制度”は外資系ホテルグループにも取り入れられるようになっており、日本から海外へ輸出されているといってもいいでしょう。

ポイントサービスは企業の課題を解決する手段

岡田:ポイントサービスの導入を検討する企業をご支援する際に、まず指摘させていただくのが“何のために、どんなポイントサービスをやるのか”という点です。私たちは、これを“ビジネス要求”と呼んでいます。

村井:もう少し具体的にお聞かせいただけますか。

岡田:ポイントサービスの導入に際して、単に購入時に何%かを付与すればよいのだろうというくらいの考えの担当者が多く、ついでにポイントシステムベンダーが提供する機能の中から、あれとこれをやりたいと適当にピックアップする形でサービスを設計することが少なくありません。

村井:私たちも多くのRFPを拝見していますが、ポイントサービスを顧客目線で考え、CX(カスタマーエクスペリエンス)を高めようという意図のこもったものは、エムズさんからの引き合い以外では皆無といっていいくらいですね

岡田:はい、企業として考えるべきは、まず、自社の課題はどこにあるかを整理すること。そして、ポイントサービスによってどのようにその課題をクリアし、LTVを最大化していくかを顧客目線で考えてプログラムに落とし込むことなのです。

村井:アクションポイントも、単なる目の前のインセンティブの人参としてぶら下げ、囲い込もうとういう発想だけで相談されることが多いです。本来のアクションポイントは、CRMシナリオ設計を考え、それに基づき行動変容を起こすために使われる機能だと私たちもとらえています。

岡田:ポイントサービスの導入検討にあたって、顧客戦略を考える経営企画部と、それを発注するシステム部との間に意識の乖離があると、どうしてもシステム部がイニシアチブを握ってしまうことが少なくありません

村井:そのあたりは我々としても、もっと詳しく聞かせていただきたいです。

岡田:そこは、ベンダー選定において直面する課題として次回のテーマで詳しくお話しいたしますが、上記のような“アクションポイントのねらい”を汲み取れていないと、機能としての“できる・できない”をコスト見合いでジャッジしてしまい、本質を外したサービスができあがってしまい、CXが著しく低下する要因になってしまうのです。

岡田:いずれにしても、LTVを最大化するために企業として、あるべき顧客との関係性を考え、それを実現するためにはどうしたらいいのかという視点で、ポイントサービスを設計する必要があります。

 次回は、いざCRMシステムの導入、見直しをしようとすると発生する諸問題について実例を踏まえてご紹介いたします。


第2回 いざCRMシステムの導入・見直し時に発生する諸問題

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岡田祐子プロフィール

株式会社エムズコミュニケイト代表取締役社長 岡田祐子

執筆者紹介:慶應義塾大学卒業後、大日本印刷入社。

2003年に国内唯一のポイントサービス/会員組織構築・運用に関する専門コンサルティング会社エムズコミュニケイトをDNPグループ会社として設立、2018年にMBO。ガイアの夜明けに出演

執筆著書:
・「ポイントサービスのしくみと会計・税務」EY新日本有限責任監査法人編(中央経済社発行)エムズコミュニケイト岡田執筆協力
・「成功するポイントサービス」株式会社エムズコミュニケイト岡田祐子著(WAVE出版発行)

『プロが教えるポイントカードの仕組みやメリット、導入する際の注意点』など、ポイントサービスの導入や改善に関するノウハウを読みやすい記事形式で紹介している。

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