ポイントサービス導入あるある!~落とし穴とその対策【中編】

<前編>では検討開始の2パターン。トップダウン・ボトムアップの各状況に応じてどのように進めて行けば建設的な検討議論ができるかをお伝えしました。

ポイントサービス導入検討においてもう一つよく出る議論が「共通ポイントか自社ポイントか」の議論です。こちらにおいても会社の役員の中で意見が分かれ、担当者として板挟みになり、方向を決定するのに苦慮しているケースが散見されます。
この中編ではこのテーマについて解説すると共に、ポイントサービス導入検討において大切な検討ポイントをご紹介します。
担当者のお悩みを初めから読む方は<前編>

共通ポイントか自社ポイントか!?

山下「では次に、共通ポイントと自社ポイント、どちらがよいか検討する際の、比較ポイントや違いを教えて下さい」

岡田「はい。まず大きな違いは顧客情報を自社で保有し管理するか否かの違いがあります。その他、主な違いを表にしてみました」

共通ポイントと自社ポイントの主な得失整理

共通ポイント 自社ポイント
顧客の個人情報の管理運営 共通ポイント事業者 自社
ポイントコスト 付与時点で発生 使用時点で発生
顧客の個人情報の利用料 有料 無料
施策の自由度 一部制約あり 制約なし
CRM貢献度 既存顧客の囲い込みに弱い 既存顧客の囲い込み、優良顧客育成に強い
新規獲得貢献 共通ポイントの顧客基盤の利用に期待できる
※但し結果検証は不可
新規獲得には向いていない

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山下「結構はっきりした違いがあるものなんですね」

岡田「共通ポイント各社によって、さらに違い、特徴もあります。また、共通ポイントの導入パターンも複数あるんですよ。共通ポイントもdポイント、楽天、Tポイント等の中から、1社選んで導入するのか、マルチポイントといって、複数の共通ポイントを同時に導入するパターンもあります。さらに、共通ポイントと自社ポイントを併用することも可能で、お客様にどちらも付与することもできますし、どちらか選んでもらい付与することもできます」

岡田「さらには、共通ポイントにも加盟店になる条件がそれぞれあり、さらに各社異なります。既に競合企業が加盟店になっていたり、顧客人数が少なかったりすると導入したい共通ポイントの審査に通らない場合もあります」

山下「知りませんでした」

共通ポイントか自社ポイントか悩んだら!?

山下「いろいろ勉強になりました。ただ、共通ポイント派か自社ポイント派か、社内の幹部で意見が分かれるんですよね…」

岡田「そういう時は顧客目線で考えてみるとよいと思います。個人情報を管理する必要がない方から共通ポイントがよい、等と企業目線で考えた場合の判断理由があるならよいのですが、共通ポイントの方がメジャー感があるから、自社で利用するより利便性、汎用性が高いから、といった理由で共通ポイントがいいと言っているなら、例えば、自社ポイントを導入してポイント交換先にメジャーな共通ポイントやJAL/ANAといったメジャーマイルとの交換を出口に用意すれば、その自社サービスは十分お客様から見たら、メジャー感が演出できます」

山下「なるほど、そういう整理は今まで社内の議論では出てきませんでした」

本来ポイント/CRMの導入検討はどのように進めて行くべきか?

山下「ここまでお聞きするだけでも、ポイントサービスの導入検討担当者として圧倒的に情報が足りていないということが分かりました。一方、ポイントサービスの導入検討をまとめていくことは大変な作業なのだとも分かり、茫然としてしまいます。一体どうやって導入検討を進めて行けばよいか、近道はありますか?セオリーがあれば教えてください」

岡田「ありますよ。簡単に整理すると、以下の5項目がポイントサービス導入時に検討すべき基本項目となります。さらに後で述べる検討すべき拡張項目を合せると、およそポイントシステムやベンダーを選ぶ時の要件につながります」

ポイントサービス導入時に検討すべき基本5項目

  1. 何に対してポイント付与するか
  2. ポイントの交換をどうするか
  3. 会員証/会員IDは何で行うか
  4. 会員登録はどうするか
  5. 会員管理はどうするか

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山下「ぜひ詳しく解説してください」

岡田「はい。①のポイント付与については、一般的には利用金額に応じてポイント付与するのが基本ですが、昨今は購入以外のアクション、例えば、アンケート回答やWEBのマイページログインにポイント付与するなどが顧客との関係性強化につながることが実証されています。他にも、期間限定ポイントをやりたいとか、特定商品だけポイント付与をしたい等、実施したいポイントサービスの内容は予め明確にしておくとよいでしょう。ポイントシステムベンダーによって、案外、できるかできないが異なるからです。
②のポイント交換についても、1ポイント1円で使えるだけでは他社との差別化にならない場合があるでしょう。ポイント交換はバリエーションがあった方がよく、例えば、自社の非売品商品や業種によっては工場見学、特別なイベント参加等、自社の特徴が出る交換商品を打ち出すと導入効果につながりやすいです」

岡田「④の会員証や会員IDは業態にもよりますが、顧客のリテラシーも勘案し、バーコード付きの会員カードを発行するのかアプリにするのか、またはスマートホン会員証(※アプリとは異なる)にするなど、さまざまな選択肢があります。会員登録も、店頭の場合等は、その場で行ってもらうのか、後日行ってもらうのか、現場のオペレーション対応により選択方法が異なってくるでしょう。⑤の会員管理についても、実施していきたいサービスと関連します。例えばお誕生にポイント2倍したいと考えるならば、お客様の誕生月も取得管理していく必要がある等です」


ポイントサービスの導入には検討すべき事項が沢山

岡田「これに加え、ステージ制やランク制を導入するのか、有効期限はどうするか、有効期限の年数だけでなく、顧客の利用起点で考えるのか、企業の会計起点で考えるのかによっても異なるでしょう。その他、どのような顧客分析をしたいか、どのような施策をしたいか、さらには、社内内部、または外部システムとの連携が必要な点があるのか否かも重要な検討論点となります。これらがはっきりしないとシステム選びもできないと言えます」

 後編は、導入検討項目についてをご紹介いたします。

後編:一番大切な導入検討項目は?

以下から検討用資料をPDF形式でダウンロードできます。

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岡田祐子プロフィール

株式会社エムズコミュニケイト代表取締役社長 岡田祐子

執筆者紹介:慶應義塾大学卒業後、大日本印刷入社。
2003年に国内唯一のポイントサービス/会員組織構築・運用に関する専門コンサルティング会社エムズコミュニケイトをDNPグループ会社として設立、2018年にMBO。ガイアの夜明けに出演

執筆著書:
・「ポイントサービスのしくみと会計・税務」EY新日本有限責任監査法人編(中央経済社発行)エムズコミュニケイト岡田執筆協力
・「成功するポイントサービス」株式会社エムズコミュニケイト岡田祐子著(WAVE出版発行)

『プロが教えるポイントカードの仕組みやメリット、導入する際の注意点』など、ポイントサービスの導入や改善に関するノウハウを読みやすい記事形式で紹介している。

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