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web3関連ビジネスで注目される技術
ブロックチェーンを利用したビジネスモデルとして、「web3」というキーワードが取り沙汰されています。
2021年初頭からは「NFT」(のマーケットプレイスなどによる流通)が活性化し、それに伴って2021年の終わり頃から少しずつ「web3」というキーワードも浸透してきたようです。
Google Trendsでのキーワード検索数の推移を見ても、加熱したNFTブームと入れ替わるかのようにweb3というキーワードが関心を集めていることが分かると思います。
ここで改めて、web3がどのようなものなのか、簡単におさらいをしていきたいと思います。
【目次】
web3とは
web3とは、イーサリアム(Ethereum)やポルカドット(PolkaDot)などの創設者であるGavin Wood氏によって概念が提唱された非中央集権管理型のインターネットの在り方です。
1990年~2000年の初期インターネットでは、ネットワークとしては分散構成となっていましたが、その上で動く情報システムはWebサーバと閲覧するユーザという中央集権的なシステム構成でした。 共有する情報はWebサーバに情報を載せる管理者によって決定され、ユーザ側は一方的にその情報を受信するというのが一般的な使われ方でした。
2005年~2020年ごろになると、さまざまな技術の発展やユーザ自身のリテラシーの向上により、FacebookやX (Twitter) などのソーシャルメディアや、YouTubeやニコニコ動画などによる動画配信など、 特定の管理者が管理するプラットフォーム上でユーザ自身が情報を発信するという形態が出現するようになりました。 これにより、情報の流れは双方向的になってきたものの、依然としてプラットフォームは管理者によって中央集権的に管理されていました。
運営プラットフォーム自体が中央集権的であったWeb2のプラットフォーム経済から、 さらにプラットフォーム自体の運営も分散化され、真にユーザ自身がデータの所持、利活用をする時代が3期インターネット (=web3) となります。
web3の概念に基づいてサービスが行われているようなシステムの例としては、以下のようなものがあげられます。
- 中央管理組織がいない分散型金融取引 → 仮想通貨、(仮想通貨/FT)分散型取引所 DEX/DeFi
- 中央管理組織がいない自由取引(マーケットプレイス) → NFTマーケットプレイス、GemeFi
- 中央管理組織がいない分散型ファイルシステム → IPFS (InterPlanetary File System)
- 中央管理組織がいない分散型処理実行システム → スマートコントラクト
- 中央管理組織がいない組織運営 → DAO (Decentralized Autonomous Organization)
- 中央管理組織がいないID管理、証明 → DID(Decentralized ID)、VC(Verifiable Credential)
DEX (デックス, 分散型取引所, Decentralized Exchange) とは
通貨や証券の取引所のように、中央管理組織によって運営される取引所を中央集権型取引所 (Centralized Exchange = CEX) 、 反対にブロックチェーン上のスマートコントラクトなどを用いて、異なる暗号資産の売買を成立させる取引所をDEX (分散型取引所、Decentralized Exchange) と呼びます。 また、分散型取引所によって行われる金融サービスをDeFi (ディーファイ、分散型金融サービス、Decentralized Finance) と呼びます。
全体で500億$程度の取引が中央を持たない分散システムとして処理されており、現時点ではまだ中央集権型の取引規模には及ばないものの、決して無視できない規模の取引量になりつつあります。
売り注文、買い注文を募ってマッチングさせる形式の分散型取引所も存在しますが、ちょうど良い注文が相互に存在しないと売買が成立しない、という欠点があります。 このため、Uniswapなど分散型取引所の大手サイトでは、単純な売り注文/買い注文のマッチングではなく、流動性プールを用いた取引を行っています。
暗号資産を流動性プールに提供した供給者は、流動性プールに暗号資産を預け入れていることの証明としてLP(流動性提供者、Liquidity Provider)トークンを受け取り、LPトークンの償却を行うことで、支払手数料の分配を受けるという形式です。 (預け入れることにより報酬を得られる仕組みを近年は「レンディング」として区別することも多くなっています)
DeFi市場は2020年ごろから加熱的な高まりを見せて、2022年5月ごろにDeFiバブル崩壊を起こしたものの、2023年7月でも47B$ほどの時価総額を保っています。 一時の熱狂こそ過ぎ去ったものの、多種の暗号通貨をカバーする利便性やその手軽さにより、中央集権的金融の一強状態から分散型金融との共存へのシフトは少なからず進んでいくものと考えられます。
NFTマーケットプレイスとは
NFT (Non-Fungible Token) を使用した暗号資産を売買、交換することができるサービスを、NFTマーケットプレイスと呼びます。
ユーザ間で取引を成立させるという意味では既に一般化しているオークションサイトと大きな違いはないものの、 アーティストやクリエイターなど、コンテンツを創出した著作者が二次流通以降も報酬を得る仕組みを スマートコントラクトによって成立させている点が大きな違いとなります。
NFTマーケットプレイスにもオープン型 (出品自由) とクローズ型 (契約者のみ出品可能) があります。 オープン型サイトの先駆者としてはOpenSea (https://opensea.io/) が有名でしたが、NFTバブル崩壊に伴う市場の変動により、近年はBlur (https://blur.io/) などの手数料のより安いサイトへのシェア移行が進んでいます。 国内ではLINEや楽天、CoincheckなどがNFTマーケットプレイス事業を展開しています。 特定のサイトでのみ購入可能なNFT (ファントークン) なども、ある種の「クローズ型NFTマーケットプレイス」と考えられます。
NFTマーケットプレイスで取り扱うNFTには以下のようなものがあります。
- アート: NFT市場の中で最も多く取り扱われている。一点もののCGアートを取り扱うNFTや、現実の美術品を元にしたNFT、プログラムで多数の画像を生成したアートNFTなどが存在する。
- トレーディングカード:アートと似ているが、他の人との交換を前提とし、同一仕様のカードが複数枚存在することもある。スポーツ選手やアイドルなどのカードも売買されている。
- ファッション:ゲームやメタバース上で利用できるファッションはもちろん、現実のスニーカーやカバンと紐づいたNFTが販売されていることもある。
- ゲームアイテム:ゲーム内のアバターに限らず土地なども売買されており、ゲーム上の空間で経済圏を形成している事例もある。
- 音楽: 音楽データをNFT化することで著作権や所有権を担保できるのに加え、二次流通によってアーティストに収入が入る仕組みを構築することができる。
IPFS (InterPlanetary File System)とは
IPFS (InterPlanetary File System) とは、Protocol Labsによって開発されたファイル共有のための分散型P2Pネットワークプロトコル、およびそれを実装した共有プログラムです。 最も代表的なものはGo言語によって実装されたKubo (https://github.com/ipfs/kubo) です。
ユーザ間でのファイル共有を可能にし、各ノード間でファイルの複製を行うことで冗長性を高めます。 また、コンテンツの中身 (ハッシュ) を索引としてファイルの共有をするため、ファイルの内容は同じものが共有されることが保証されています。 つまり、特定のデータ (ファイル) を保持するサーバの管理者に権力や責任を集中させず、ネットワーク全体で非中央集権的にファイルの分散・保持を行うことに注力したサービスとなります。
ただし、IPFSだけでは単なる「分散ファイル共有システム」であり、格納したファイルの永続性や冗長性は保証されません。 本来、永続性を保つためには自身でIPFSノードを持ち、ファイルが消えないようにするPINという処理を行う必要があります。 IPFSへのデータ保存API、データ取得APIと併せて一定料金と引換えに、IPFS上でファイルが消滅しないためのピン止めを行う Pinata (https://www.pinata.cloud/) などの外部サービスを利用することもできます。
DAO (Decentralized Autonomous Organization)とは
DAO (Decentralized Autonomous Organization) は、特定の管理者がいない状態で事業の推進が可能な組織を指します。
スマートコントラクトを用い、参加者間であらかじめ合意されたルールに基づき運営・収益分配等を自動執行することや、
運営方針を参加者の投票により意思決定することを可能とします。
概念自体はスマートコントラクトの提案初期から提唱されていたものです。
ただし、DAOを形成するために必要な処理や機能を提供するサイト (DAO Operating Systems) の登場や、
ネイティブトークン以外の暗号資産 (ERC20などのトークン) による価値交換の多様性が上がったことなどに伴い、
再び脚光を浴びるようになりました。
DAO Operating Systemsの代表例としては、Aragon
(https://aragon.org/)
やColony
(https://colony.io/)
などが挙げられるでしょう。
Grants DAOなどと呼ばれる資金分配を目的としたDAOや、クリプトに特化した人材派遣会社のような組織を
構成するService DAOsのように、目的に応じて多様化が進んでいます。
まとめ
web3とは、Gavin Wood氏によって提唱された非中央集権管理型のインターネットの在り方です。
運営プラットフォーム自体が中央集権的であったWeb2のプラットフォーム経済から、
さらにプラットフォーム自体の運営も分散化され、真にユーザ自身がデータの所持、利活用をする時代が
第3期インターネット (=web3) となります。
そして、Web3の概念に基づいて行われているサービスの例として、DEX/DeFi、NFTマーケットプレイス、
IPFS、DAOがあります。
ビジネスを考えられる方々にとっては、ブロックチェーンはブラックボックスとして、
その特徴やメリット、デメリットを踏まえた上でうまく活用することに注力されるとよいかと存じます。
NTTテクノクロスでは、このようなブロックチェーンを活用したビジネスの検証サービスとして
ContractGate PoC Service
PUSH!
をご提供しております。
執筆者紹介
兼松 和広(かねまつ かずひろ)
高度専門人材 / テックリード
2002年NTTテクノクロス(旧NTTソフトウェア)に入社。
さまざまなシステム開発や保守運用を担当しながら、データベースの専門家として
技術支援や研修講師を担い、数々の表彰を受賞。
2015年からブロックチェーンやweb3についての自らの知見や技術力を活用し、
多くのプロジェクトに参画。
2023年に高度専門人材として社内で任命される。
ブロックチェーンの団体であるEthereum Enterprise Alliance Japanのイーサリアム性能評価ワークショップに参加し、
ブロックチェーンのビジネス利用に必要な性能評価観点【ETHTerakoya × Blockchain EXE 】の発表等も実施。
日々、専門性を高めるべく自身を磨き続けている。
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