特集 [「感情分析」で心の「声」をキャッチ!]

「真の感情」を活用し、コールセンターの
EXが向上しCX向上にもつながる

多くのコールセンターでは、人手の安定確保と定着という課題を抱えています。解決のためにはEX(従業員体験)の向上が欠かせません。従業員に安心とやりがいを感じてもらえれば、オペレーターを含む従業員は成長し、長く働いてもらえます。今、コールセンターのEX向上の有効策として注目されているのが、お客さまやオペレーターの発話の「音声」に着目した「感情分析」です。感情分析でお客様の真の感情を把握し適切な応対ができるようになれば、コールセンター従業員は自信と余裕を持った対応ができるようになり、EX向上にもなります。そして、お客様への応対も向上し、CX向上にもつながります。さまざまな可能性に満ちた「感情分析」についてご紹介します。

お客さまの感情を可視化する「感情分析」が進化

 コールセンターでは、お客さまが「何を求めているのか」「満足されているのか」を把握して適切な応対に役立てるために、さまざまな発話分析が行われています。代表的な分析手法が「テキストを用いた分析」です。お客さまの発話内容をテキスト化し、感情を表す特定の単語がどれだけ発話されたかによって満足度を評価します。お客さまの発話中に感謝や喜びを表す「ありがとう」という単語が多ければ、お客さまがオペレーターの応対に満足しているという判断材料になります。
 ただ、感情を把握するには、テキストだけによる分析では限界があります。感謝や喜びを表す「ありがとう」という単語も、心から感謝しているケースもあれば、建前で言葉を発しているだけで、実際には「怒り」「不満」といったネガティブな感情を抱いている場合もあります。感謝の「ありがとう」なのか怒り・不満の「ありがとう」なのかを見極めるための手法として注目されているのが、音声の感情分析です。
 感情分析の手法にはさまざまなものがありますが、「声の震え」などの人間の耳で捉えられない音声パターンの違いを解析するもの、音声的特徴、言語的特徴(単語のつながり)、対話的特徴(会話の流れ)などを組み合わせて解析するものなどがあります。
 音声による感情分析でお客さまの感情を把握できれば、CX(顧客体験)向上につながる場合もあります。お客さまの発した言葉が、心からのものか、それともネガティブな感情を隠したものかにより、オペレーターに対するスーパーバイザーのサポート方法も変えられます。もし、ネガティブな感情だった場合、スーパーバイザーがすぐにオペレーターをサポートし、お客さまのネガティブな感情を上昇させずに応対を完了させることが可能です。時にはポジティブな感情に変わる可能性もあります。その結果、お客さまの満足度が向上することもあるでしょう。 さらに、お客さまの心からの「ありがとう」が発話されている場面での応対を抽出、適切な応対ノウハウを他のオペレーターに展開すれば、コールセンター全体の応対品質の底上げにもつながります。
 音声を用いた感情分析の進歩には目覚ましいものがあります。「喜怒哀楽」といったシンプルな感情の他にも、「集中」「不安/困惑」「ストレス」といった多岐にわたる感情を抽出し、より精緻な感情分析が可能となっています。

同じ「ありがとう」でも感情が異なる。感情分析で違いを把握

同じ「ありがとう」でも感情が異なる。感情分析で違いを把握

日本人特有の怒り方も検知できる

 「怒り」という感情は、お客さまが電話口で怒鳴っている状態だけではありません。
 感情を抑えて、直接的な表現よりも含みを持たせた言葉遣いをし、声を荒げてはいないけれど、静かに冷静に怒っているというパターンもあります。これは日本人特有の怒り方で、「コールドアンガー®※」と呼ばれます。
コールドアンガーは単語やフレーズの分析だけでなく、会話のリズムや言葉遣い、会話全体の文脈や流れなど様々な観点から分析を行うことで検知することができます。コールドアンガーを検知することで、お客さまが抱える潜在的な不満や不安を的確に把握し、効果的な解決策を提供することができるようになります。
またこのような感情分析技術を用いることで、お客さまの「満足感情」を定量的に測定・分析することも可能です。その分析結果をトークスクリプトに反映させることによって顧客満足度を向上させることができるでしょう。
※コールドアンガー®は、日本電信電話株式会社の商標または登録商標です。

オペレーターの感情分析も可能。定点観測でフォロー

 音声を用いた感情分析は、オペレーターの感情を分類・可視化することもできます。感情を定点観測して分析すれば、スーパーバイザーの適切なフォローに役立ちます。例えば、オペレーターの応対音声を定点観測した結果、特徴的な感情として高いレベルのストレス感情が検出されたとします。この場合、体調面やモチベーションに問題があったり、離職の危険性が高まっていたりするサインと考えられます。スーパーバイザーはオペレーターとの面談や、業務の変更を検討するなどの対応が必要となります。
 また、複数の感情パラメータを組み合わせることで、より詳細な感情分析も見込めます。「思考」「自信」という2つの感情パラメータを組み合わせた場合に、オペレーターが非常に高いレベルで「思考」をしている一方で、「自信」については低く検出されたとします。オペレーターへのヒアリング結果も併せて分析すれば、「オペレーターは一生懸命考えて応対しようと試行錯誤しているものの、応対に必要な“知識”が不足しているため自信が下がっている」と推測できます。オペレーターのパフォーマンス向上のために、コーチングを強化して知識を補完するといった具体的な対応策を取ることができるでしょう。

オペレーターへの適正な評価、適切な支援でEX向上

 感情分析によりオペレーターのEXを高めるアプローチは大きく2つあります。
 1つは、「応対の感情分析による適正な評価」です。例えば、お客さまが「ありがとう」と発した通話を分析して「不満足のありがとう」「普通のありがとう」「満足のありがとう」に分類。チームやオペレーターごとに「満足のありがとう」の件数や割合を可視化すれば、チームやオペレーターを適正に評価できます。
 もう1つは、「スーパーバイザーによる適切なフォロー」です。オペレーターがお客さまとの応対に困っていても、スーパーバイザーは挙手などの支援依頼のアクションがないと気づかないこともあります。音声認識と感情分析を組み合わせれば、困っているオペレーターを自動検知・通知ができます。そして、スーパーバイザーが能動的にフォローできるようになります。オペレーターの「ハイストレス」といった感情アラートが画面に表示されると、スーパーバイザーがそれまでの通話内容を確認しながら、直ちに適切な支援を実施できるのです。
 オペレーターがオフィスに出社せずに、自宅でコールセンターのオペレーター業務ができる「在宅コールセンター」が普及する昨今では、オペレーターの通話内容が把握できず、フォローもしづらいという新たな問題も浮上しています。音声認識と感情分析を活用すれば、複数名の通話内容と感情をリアルタイムに把握できます。応対を代わる場合もスムーズに引き継げます。

お客さまとオペレーターの双方の感情をリアルタイムに推定。ストレスなどを検知して適切な支援が可能

お客さまとオペレーターの双方の感情をリアルタイムに推定。ストレスなどを検知して適切な支援が可能

多面的なEX向上。相乗効果でCX向上の好循環を実現

 感情分析を活用したアプローチにより、オペレーター1人ひとりのモチベーションや応対技術が着実に向上します。オペレーターのEXも向上し、人手の安定確保と定着につながる可能性が高まります。オペレーターへの適正な評価や適切なフォローの実現は、スーパーバイザーや管理者の仕事のしやすさにつながるという意味でも重要です。
 コールセンターで働くすべての従業員のEXが向上すれば、会社に対する信頼や安心感を持ち、自分の業務に対して愛着を持つようになります。より意欲的に仕事に取り組むようになり、相乗効果でコールセンター全体の応対品質が上がります。お客さまの心からの「ありがとう」が増え、感情分析によってオペレーターに感謝がフィードバックされれば、お客さまに対してより自信を持って応対するという好循環が生まれます。「売上の向上」「コストの削減」「レピュテーションリスクなどの経営上の深刻なリスクの回避」など経営への効果にもつながっていくはずです。
 NTTテクノクロスでは、感情分析を組み合わせたコールセンター向けソリューションを提供しています。最新のテクノロジーを生かした感情分析でEX向上にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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