概要

nex-tone2016年2月、イーライセンスとジャパン・ライツ・クリアランスの合併・事業統合により発足したNexToneは、音楽著作権管理事業を中心に、デジタルディストリビューションサービスやキャスティングサービスなど、著作物や音楽コンテンツの「管理」と「利用促進」を融合させたサービスを複合的に展開する日本で唯一の民間企業だ。「権利者に選ばれ、利用者から支持される著作権管理事業者となる」という経営理念のもと、音楽産業・文化のさらなる発展に貢献している。

 同社では、楽曲の著作権者などに向けた著作権使用料分析ツール「croass(クロアス)」の開発にBIツール「Yellowfin」を組み込むことで実現。NTTテクノクロス株式会社(以下、NTTテクノクロス)が開発パートナーとして支援を行い、導入から保守までを担っている。

課題

膨大な行数の著作権使用料明細をわかりやすく可視化したい
セキュリティ、使いやすさ、画面の美しさから「Yellowfin」を選択

株式会社NexTone営業本部ライツ&リレーション部山本氏(左)
株式会社NexToneシステムズ 渡邉氏(右) 

 音楽はテレビやインターネット、CD、DVD、映画、カラオケなど、さまざまなメディアや場面で利用され、その利用形態はますます複雑化している。NexToneは、楽曲の著作権者から委託を受け、レコードメーカーや放送局、音楽配信事業者などの利用者への許諾取り次ぎと使用料徴収を行っている。

同社ではこれまで、作詞家や作曲家、音楽出版社などの著作権者に対して著作権使用料の分配をする際、「楽曲がいつ、どこで、誰に、どのように利用されたか」を示す明細をPDFやCSV形式のデータで提供してきたが、ここに課題があった。これらの明細は、利用形態、利用時期、製品、サービスなどによって細かく記載されるため膨大な行数となり、全体を俯瞰するためにはデータを表計算アプリなどで加工する必要があった。そこで、「どの楽曲がどのメディアでどのくらい利用されているのか、最も利用数の多い楽曲はどれなのか、といった権利者さまが求めるデータを可視化できるプラットフォームを作りたいと考えました」と同社営業本部ライツ&リレーション部の山本氏は語る。

この著作権使用料分析ツールを開発するにあたり、同社のグループ会社であるNexToneシステムズと検討を重ねた。NexToneシステムズの渡邉氏は「権利者さまに向け、より早く付加価値の高いサービスを提供するための開発を加速する狙いもあり、アウトソースすることに決めました。今回はBIツールを活用することとし、BIに詳しい社内のメンバーと選定を行いました」という。

通常、BIツールは在庫管理や生産管理など社内向けに使われることが多いが、今回は社外に向けたデータ提供であるため、ツールの選定には注意が必要だった。「外部向けなので、セキュリティの高さ、権限管理の厳密性は重要なポイントでした。また、権利者さまによってITリテラシーがさまざまなため、誰にとっても使いやすい、直感的に操作しやすいことも重視しました」と渡邉氏。音楽関連のお客様に見せるものだからこそ、画面デザインの美しさにもこだわり、最終的に「Yellowfin」を選択した。

セキュリティやパフォーマンスを重視して組み込み開発。
最大限のコストパフォーマンスを発揮

 今回、Yellowfin社から紹介を受け、開発パートナーのNTTテクノクロスが組み込み開発を行った。「NTTテクノクロスさんはインフラに詳しく、BIツールの導入ノウハウも豊富です。過去の事例なども共有してくださり、パートナーとして信頼できると感じました」と渡邉氏。AWSの知見があることに加え、情報漏洩対策などのセキュリティの設定面でも評価された。また、パフォーマンス改善という根気のいる作業において、NTTテクノクロスが試行錯誤を重ねて対応したというエピソードを明かしてくれた。

「処理するデータ量が膨大なため、想定通りのパフォーマンスが出せず画面の表示が遅くなることがありました。そのときには、ページのデザインを変更し、表示件数を絞るなどの工夫でパフォーマンスを改善しました。このような場面でもNTTテクノクロスさんは粘り強く対応してくださり助かりました(渡邉氏)」

開発フェーズでは、NexToneとNTTテクノクロス間で週1回の定例会議を実施し、進捗管理を行った。「NTTテクノクロスのプロジェクトリーダーを窓口とし、開発は全面的にお任せしました。管理コストを抑えてスムーズに進行でき、非常によかったです。また、データの取り込みに関してOSSのETLツールを活用して運用コストを抑えるなど、弊社の基幹システムにも横展開できるようなノウハウ共有もしていただき、シナジー効果が得られています」と渡邉氏は語る。コスト面でも、想定の予算内でローンチできたという。

開発時のエピソードとして、渡邉氏はデータクリーニングの重要性についても語ってくれた。「データベース内で表記揺れが生じ、同一アーティストのデータが別名で複数存在する事態が起きていました。そこで、関係各社で調整を行いながら、データベースのクリーニングを3カ月かけて行いました。この経験からBIツールにおけるデータ集計時の注意点が整理できたので今後に生かしていきます」

「こういうものがほしかった!」ユーザーから喜びの声が届く

 できあがった著作権使用料分析ツール「croass」では、配信や放送、カラオケなど種目別でのサマリーをグラフとテキストで閲覧でき、過去3年分をさかのぼって確認できる。作品別、アーティスト別、サービス別などの絞り込みも可能になった。また、特に利用が拡大しているYouTubeについては、動画単位でURL付きの利用数ランキングが見られるなど、著作権者に必要とされる情報を提供できるようになり好評を得ている。

croassトップ画面

croassトップ画面

YouTube動画タイトル別利用数ランキング

YouTube動画タイトル別利用数ランキング

「権利者さまから『こういうものを待っていた』というお褒めの言葉をいただくなど、高い評価を頂戴しました。croassによって、権利者さまが利用ボリュームに応じた適正な分配額を得られているかをすぐにチェックできるようにもなりました。また、マーケティングデータとしてもご活用いただいております。NexToneでは透明性を大切にし、著作物の利用データを詳細に開示することを強みの一つとしているので、croassをさらにブラッシュアップして活用していくつもりです(山本氏)」

NexToneスタッフもマーケティングにcroassを活用しているという。「どんな楽曲、どのアーティスト、どのような利用が活性化しているかといった、トレンドの把握に役立っています。弊社では様々な権利者さまのプロモーションのお手伝いも行っているので、croassのデータを権利者さまへの提案に活用しています」と山本氏は語る。

リアルタイム性の追求など、ユーザーの希望に合わせてブラッシュアップしていきたい

 NexToneでは2021年4月に海外利用における著作権使用料徴収を開始、2022年4月には演奏権管理に一部参入するなど、さらなるチャレンジを進めている。「コロナ禍で音楽の楽しみ方はさらに多様化しました。思いもよらない形で楽曲がブレイクすることも少なくありません。新しい時代に合ったサービスを提供し、権利者さまに選ばれることを目指して進化していきます」と山本氏は語る。

 「croassの今後については、よりリアルタイムに近い形でデータを閲覧できるように改善したり、ツールの閲覧ログを分析してさらなる機能追加を行ったりと、よりよいものに育てていきたいです。NTTテクノクロスさんには、弊社のビジネスをより深く理解していただき、第三者の目線でさまざまな提案をしていただきたいですね。croass以外の開発などでも、ぜひ力を貸していただきたいと思います(山本氏)」

お客様プロフィール

社名 株式会社 NexTone(ネクストーン)

URL https://www.nex-tone.co.jp
本社所在地

〒150-0012 東京都渋谷区広尾 1-1-39 恵比寿プライムスクエアタワー20F

設立 2000年9月
資本金 1,192,392,000円(2022年3月31日現在)
従業員数 92名(2022年3月31日現在)
事業内容

著作権等管理事業(著作権管理業務、デジタルコンテンツディストリビューション業務) / キャスティング事業(アーティストブッキングやライブへのユーザー招待、楽曲タイアップに関わる音楽コンテンツの権利処理等を通じたコンテンツ利用促進コーディネート、家庭向けライブ配信サポート、ライブビューイング等) / その他(著作権・原盤権等の権利処理システムの開発・提供、コンテンツ配信関連のシステム開発・提供、及び、各種社内システムの開発・運用等)

※2022年8月現在