概要

 保健同人フロンティアは、書籍『家庭の医学』のWeb/モバイルアプリ化に伴い、電話による24時間365日体制の健康相談サービスのシステム基盤を刷新。N T Tテクノクロスによる支援のもと、コミュニケーション基盤として「AmazonConnect」、CRMシステムは「CTBASE/AgentProSMART」を導入。業務品質の向上とともに、時代の変化に合わせて即応できる体制を整えた。

課題

 体の不調やケガへの対処法が記された医学書『家庭の医学』。昭和期は、一般家庭の多くが所有し、家族の健康を支えてきた。発刊から約55年、インターネット・スマートフォンの普及を背景に、Web/モバイルアプリ『みんなの家庭の医学』へと姿を変え、健康に関する疑問の解消を支援している。これらの提供元であり、健康保険組合や企業人事向けの健康相談サービス、EAP(Employee Assistance Program)サービスなどのヘルスケア事業を展開するのが保健同人フロンティアだ。

 先般、『みんなの家庭の医学』を中核とした事業全体のシステムのグランドデザインの見直しを推進。その一環で、現行システムがEOL(End of Life)を迎える時期にあったコールセンターの電話相談管理システムの刷新プロジェクトが立ち上がった(図1)。

 図1)プロジェクト化の背景

 コールセンターは、事業の柱である健康相談サービスの電話対応を担っており、相談員は看護師や管理栄養士、臨床心理士といったヘルスケアに関する有資格者で構成されている。「お腹に痛みがあるが、食事は摂っていいか」「眠りが浅くて日中気だるいので対処法を教えて」など、健康保険組合の加入者や契約企業の従業員からの心身に関する相談に24時間365日体制で対応している。価値創造推進部 企画・マーケティング室 企画マネージャーの栗空 小百合氏は、「従来のシステムはオンプレミスだったため柔軟性に欠け、事業の拡張や方針変更も、システムのライフサイクルに合わせざるを得ませんでした」と振り返る。『家庭の医学』のコンセプトは、“ご利用者がいつでも頼れる身近な存在”。チャネル嗜好などの変化への即応や、パンデミック、大規模災害時の運営体制の確保が可能なクラウドサービスへのリプレースに着手した。

 

解決へのアプローチ

移行時に「業務を止めない!」総合力でベンダーを選定

 リプレースで最も重視したのは、「移行時の稼働の安定」だ。コールセンターを統括する執行役員 カウンセリング部 部長の川杉貴代氏は、「センシティブな相談内容が多く、システム停止によってご利用者が相談するタイミングを逸する事態はあってはならない」と強調する。運用開始後の安定稼働はもとより、移行時も「無停止」を前提にベンダーを検討。結果、6年前にCRMシステム『CTBASE/AgentProSMART』の導入・構築実績があったNTTテクノクロスを選択した。「深い業務理解のもと業務課題を解決する提案、それを実現した技術力、サポート体制など、総合的に評価し、安心してお任せできると判断しました」(川杉氏)。


 導入システムは、NTTテクノクロスの要件確認や業務課題を踏まえた提案内容をもとにシステムを選定(図2)。


図2)Amazon Connect / AgentProSMART─コンタクトセンターシステム概要

 音声基盤は、「運営コストの最適化とデータのクラウド管理」を要件としてシステムの検討を進め、従量課金制で実態に見合ったコストで利用でき、拡張性にすぐれた『AmazonConnect』を採用した。
 CRMシステムは、「操作性」「機密性の担保」を重視してCTBASE/AgentProSMARTのクラウド版を採用。操作性は、それまでのシステムと連続性のあるU I(ユーザーインタフェース)で業務インパクトが低い点に加え、カスタマイズで業務に“フィット”させられる点が決め手となった。


 顧客情報の登録画面は、相談の会話の流れに沿って、CRMへの入力が必要な項目を表示し、切り替えることで、相談員の視線やマウス操作の動きを最小化。川杉氏は、「相談業務の難しさは、たとえ正しい回答でも、伝え方次第で相談者に余計なストレスをかけてしまうことにあります。会話に細心の注意を払うためにも、快適な操作環境が不可欠」と説明する。また、従来は別システムで管理していた3000件のFAQをCRM画面上に取り込み、相談業務に必要な操作を統合した。「FAQの修正や更新なども簡単にでき、管理がしやすくなったことで、FAQメンテナンスの効率化にもつながりました」(栗空氏)。
 適切に削除すべき個人情報など指定した項目については、ルールに従って該当箇所を自動でマスキングする機能を適用。また、録音・保存した音声データを一定期間の経過で自動削除することで安全性を高めた。

ソリューションとその成果

スムーズに移行&稼働開始 相談員の「疲れ」抑制にも寄与

 移行は、NTT テクノクロス側が通信キャリアと連携。一晩かけて約1000ある電話番号を順番に切り替えることで「業務無停止」を成し遂げた。
 移行後は、システム画面の操作について、相談員からの問い合わせはほとんどない。「肌感覚ですが、以前よりも相談に集中できています。また、旧システムに比べ、さらに人間中心設計に準じた作りになっており、色調が淡くなっていたりと、相談員の視覚的な負担の軽減にもつながっています」(川杉氏)。今後は、『みんなの家庭の医学』から健康相談サービスへの導線としてチャット対応などを検討していく。

写真左から 川杉 貴代 氏、栗空 小百合 氏

お客様プロフィール

 お客様プロフィール
設立 1946年6月1日
事業概要 出版・相談事業で培ったナレッジや、専門ネットワークにデジタルの技術を掛け合わせた複合的なWell-beingサービスで、健康経営、疾病予防の実現をサポートしている
資本金 10,000万円
URL https://www.hokendohjin.co.jp/

※2024年5月現在