カリモク家具株式会社 様
「お客様相談室」が真価を発揮するITとは──“CRMデータの共有”が示す進化の道程
概要
国内大手の木製家具メーカーのカリモク家具は、その高品質な商品づくりで知られる老舗企業。
メーカー(製造業)にとって、エンドユーザーと直接コミュニケーションできる機会は限定されている。
お客様相談室は、その貴重なチャネルであり、そこで蓄積されるCRMデータは重要な経営資源だ。
カリモク家具は、3月から「AmazonConnect」と「CTBASE/AgentProSMART」を本格稼働させ、相談室業務を大幅強化する。
VOCの活用に加え、応対の生産性向上も図ることで新しい役割を模索。"頼られる部門"として価値創出を図る。
課題
国内大手の木製家具メーカーのカリモク家具は、その高品質な商品づくりで知られる老舗だ。
親世代が購入した商品を、続けて愛用する顧客も多い。修理依頼やメンテナンス方法に関する問い合わせに対応するお客様相談室では、「可能な限り顧客のニーズに応える」ことをスタンスに運営。電話とメールで月約1000 件の問い合わせに9名の正社員スタッフで対応する。商品管理部の榊原岳広取締役部長は、「中には、図面が残っていないほど古い商品もありますが『思い入れがあるため、お金がかかっても直したい』と言ってくださるお客様たちの思いに応えたい」と強調する。
その結果、商品知識を熟知していないと相談室の業務は難しい。そのため9名は、ほぼベテランのスタッフが担当。問い合わせそれぞれに、1人のスタッフが最初から最後まで一貫して受け持つ。さらに修理対応では、商品の状態を把握するために顧客から送られてきた画像を含めて応対履歴を高精度で残し、それをさまざまな業務に活かす方針があり、CRMは極めて重視している。
履歴は、スタッフによるCRMへのテキスト入力と、顧客との通話録音を応対データとして残す。かつては、「IBM Lotus Notes/Domino」を自社仕様にカスタマイズしていたが、入力したテキストデータの品質に入力者によってバラつきが生じるのが課題だった。データを製品開発・改善やマーケティング活動に反映させたい意向はあったが、品質のばらつきに加え、集計に手間がかかるといった課題も残っていた。そこで、テキスト入力の自動化による後処理時間(ACW)の短縮とあわせ、数々の課題を解消すべくCRMのリプレースを検討開始した。
解決へのアプローチ
目的はCRM 活用と生産性向上 課題解消までのロードマップを描く
10社以上のIT企業から提案を受けるなか、NTTテクノクロスの提案を採用。コンタクトセンターの基盤システムとして「Amazon Connect」、肝心のCRMは「CTBASE/AgentProSMART」の導入を決定、1年以上の導入期間を経て、2024 年3月から本格運用を開始する。
情報システム関連業務を担当するカリモク皆栄 情報システム部の田島 実取締役部長は、「お客様相談室の業務内容や課題を詳細にヒアリングいただき、課題解消までの道筋を明確に示していただきました」(図1)と説明。
また「EC部門などを含めた顧客データの一元化といった将来構想も視野に入れたシステム案を示してもらえたこと。さらに必要なライセンス分のみの、スモールスタートから利用できる無駄のない料金設定にも納得感が得られました」と採用理由を述べる。
同社の販売チャネルは、家具の専門店が主力ながら、百貨店、自社EC サイト、そして住宅メーカーなど多岐にわたる。これらのデータの連携・一元化は次のフェーズになるが、CTBASEをその基盤にしたいという狙いもあるようだ。またコスト面については、Amazon Connectの従量課金という料金設定を高く評価。開発・運用の柔軟性や拡張性が高い点もポイントとなった。
しかし、相談室のスタッフの多くは、従来システムの操作性に対してこれといった不満は抱いてはいなかったため、リプレースの計画に対しては反発もあったという。NTTテクノクロスは、事前にスタッフの方々に、画面構成や操作性について確認をいただきながら、システムが切り替ることへの不安を一つひとつ解決していった。
図1 お客様相談室 方向性実現までのストーリー
ソリューションとその成果
音声データの活用に期待大 生の声が作り手の励みになる
修理品の受け渡しは、全国各地の拠点の営業担当者が行う。今回のシステムの本格運用後には、顧客と相談室のやり取りを、音声とテキストで営業担当者が確認できるようになる。営業担当者にとって、「顧客の温度感」を事前に把握できることへの期待感は大きい。また、これまで、顧客の「感謝の言葉」は、相談室からの“報告”としてしか共有していなかった。今後は、「応対データを使って、とくに工場などのお客様に接する機会の少ない製造部門のスタッフたちに伝える予定です。実際の使用感へのコメントなど、作り手にとってはかなり大きな励みになるはず」(榊原氏)と、新たなVOCの活用法も見出している。
また、応対データを自動でテキスト化、要約することでもたらされるACWの短縮などにより生じた時間的余裕を活かす施策も検討中だ。「修理対応は、お客様のロイヤルティを高めるうえでも、収入源という意味でも欠かせない業務。お客様相談室が実践しているコミュニケーション手法を、経験や社歴の浅い営業職のスタッフを中心に、教育コンテンツとして共有する体制を強化したい。顧客対応のベストプラクティスを発信して、“頼りがいのある部門”という認識を持ってもらいたい」(榊原氏)というように、より高い貢献度を示す方針だ。
図2 Amazon Connect / AgentProSMART─コンタクトセンターシステム概要
今後の展開
お客様プロフィール
設立 | 1947年(昭和22年)2月5日 |
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事業概要 | お客様のライフステージにあわせて、長く使える品質が高い家具の製造・提供 |
資本金 | 4500万円 |
従業員数 | 920名 |
URL | https://www.karimoku.co.jp/ |
※2024年3月現在