概要

全国に先駆けて村の窓口業務のほぼ全てを郵便局で行う「地方公共団体事務の包括委託」を開始した長野県下伊那郡泰阜村は、分離されたシステム間でのファイル受け渡しにNTTテクノクロスのデータブリッジを導入。簡単・安全な住民ファイル受け渡しと共に、業務効率化と住民サービスの向上を実現した。

課題

全国で初となる郵便局への役場業務の包括委託
ネットワーク分離システム間でのファイル受け渡しが課題に

 長野県下伊那郡泰阜村は、長野県下伊那郡の南部に位置する、人口1,600人の自然豊かな村だ。人口減少の中、泰阜村では全国に先駆けて2019年7月29日より、村南支所で行う窓口業務のほぼ全てを郵便局で行う「地方公共団体事務の包括委託」を開始した。支所機能を維持しながら郵便局で行政サービスの受付を行うことで地域住民の利便性の維持、拡大を図る取り組みとして、高い注目を集めている。

 郵便局で対応する窓口業務は、公的証明書の交付、住民票の写しや証明書の交付、国民健康保険・介護保険、国民年金、児童手当の申請受付など26にも上る。ここで課題となるのが、総務省が推奨する「自治体情報システム強靭性向上モデル」、いわゆるインターネット系と情報系、基幹系のシステム分離との兼ね合いだ。

 実際の業務フローでは、窓口対応を行う郵便局側に入力用PCを設置し、住民が押印した手書きの申請書をスキャナで取り込みPDF化。郵便局職員がEXCELシートを作成し、そのファイルはCATVネットワーク網を通じて村役場内の受信用PCに保存される。問題は、このファイルをいかにして各種証明書を発行する基幹系PCに受け渡すか、という点だ。泰阜村役場 住民福祉課長 高田良明氏は、当初の課題を次のように話す。

 「当初はUSBメモリでの受け渡しを検討したものの、業務効率と紛失時の情報漏えいなどセキュリティ観点との両面で、懸念がありました」

 USBメモリを使用すると村役場内の情報系と基幹系の端末でファイルを保存し、抜き差しして移動する煩雑な作業が発生することに加え、情報漏えい防止の観点からその都度、利用申請書などの提出が必要となる。さらにファイルの削除など利用後の報告、管理など運用上の業務負荷が非常に高くなる。今後の継続した住民サービス提供を踏まえると、避けたいところだった。

解決へのアプローチ

ファイルの安全、簡単な受け渡しにデータブリッジを検討
省スペース、自動削除、簡易無害化機能などを評価

 高田氏からの相談を受けたBSNアイネット 長野事業所 飯田サポートセンター シニアチーフの川又太郎氏は、NTTテクノクロスのデータブリッジを提案する。川又氏は提案の経緯をこう話す。

 「ご要望をお聞きして、ネットワーク分離環境のセキュアなファイル受け渡しに特化したデータブリッジしかない、と思いました。すぐに試用機を取り寄せ、社内で検証してみたところ操作もシンプルでわかりやすく、誰でも扱えると感じました」

 その後、試用機での検証は、現地でも行われた。評価したポイントについて高田氏は次のように話す。

 「最大の懸念であったファイルの安全かつわかりやすい受け渡しが実現することに加えて、データが自動的に消去される点も安心でした。また、筐体が小型で設置しやすいことも、専用端末の多い役場では省スペースで助かっています」

 加えて川又氏は、データブリッジの簡易無害化機能も非常に有効であったと語る。

 「データブリッジの簡易無害化機能でファイルをPDFに変換して送ることができます。それを応用して、もう一つの課題であった役場から送る証明書をいかにして郵便局内の複合機で印刷するか、という点が解決できました」

 これにより郵便局側では申請手続き後、各種証明書の出力を待つだけとなり、ここでも業務負荷の軽減が実現する。

ソリューションとその成果

シンプルな操作で導入後の活用もスムーズ
RPAも含めた業務省力化と住民サービス向上を実現

 こうした高い安全性と業務効率性が評価され、正式に採用となったデータブリッジ。事前に試用機での運用テストを行い、操作マニュアルを用意した効果もあり、導入当初からスムーズに利用されたという。高田氏はこう感想を話す。

 「郵便局の方々は通常業務でオペレーションには長けておられますし、村役場内のデータブリッジの利用もシンプルな操作感で、導入当初からまったく問題なく利用開始できました」

 村役場内の郵便局との送受信用PC横にはパトランプが設置され、郵便局からファイルが届くと職員がすぐに気付く工夫が施されている。当初は申請時に電話での連絡となっていたが、少しでも双方の業務負荷を減らしたいという思いが表れている。

 また、印鑑登録証明書、住民票抄本、各種税証明など特定の入力にはNTTアドバンステクノロジのRPAツールWinActor(ウィンアクター)を活用するなど、ITの利活用による業務効率化、省人化と住民サービス向上に取り組んでいる。

今後の展開

データブリッジにより業務フローが確立、
さらなる業務効率化と展開に期待

 今回、全国に先駆けて行われた郵便局への「地方公共団体事務の包括委託」。全国の支所統合課題のある町村からの照会、見学などが相次いでいるという。

 さらに今後、役場内の他の業務においても、情報系と基幹系システム間でのファイル受け渡しにデータブリッジを活用する検討が進んでいる。また、郵便局内の窓口業務にタブレットを活用し、住民にヒアリングしながらファイルを作成するといった、窓口での入力業務の負荷削減もさらに進めていく考えだ。川又氏は次のように話す。

 「データブリッジの活用で業務フローが確立されたことで、今後、他の出先機関での窓口業務展開など、いろいろな可能性が広がったと感じています。全国的な人口減少、過疎化地域の課題解決に向けて、これからも取り組んでいきたいと思います」

 これを受けて高田氏は、次のように締めくくった。

 「今回の全国初となる郵便局への委託業務に関して、関係各位の努力でようやく軌道に乗せることができました。NTTテクノクロス、BSNアイネットには今後も引き続き、住民サービス向上に向けてのさまざまなアイデア、提案に期待しています」

泰阜村 証明書発行の運用フロー

泰阜村における証明書発行の運用フロー

お客様プロフィール

 お客様プロフィール
事業概要 所在地:〒399-1895 長野県下伊那郡泰阜村3236-1
長野県の南部、下伊那郡の南東、天竜川の東側に位置する村。 人口約1,600人
URL https://vill.yasuoka.nagano.jp/

※2020年4月現在