東北電力株式会社 様
AI音声合成とRPAでコールセンターが大進化
顧客の利便性向上とオペレーターの負担軽減を両立
1. AI活用の音声合成による音声ガイダンスと、音声入力のテキスト変換を組み合わせ、高度な自動応答を実現
2. 自然な音声ガイダンスをAI活用の音声合成システムで生成。ガイダンスは担当者自身が調整可能となり、自由度と業務効率が大幅に向上
3. 顧客が音声入力する契約者情報をテキスト認識し、データベースに自動登録。RPAで基幹システムへの転記も自動化。顧客の利便性向上とオペレーターの負荷軽減を両立
概要
国内有数の電力大手として東北地方6県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)および新潟県を中心に人々の生活を支える東北電力。「より、そう、ちから。」をグループスローガンに掲げ、「お客さまにより沿い」「地域に寄り添う」サービスの提供に日々まい進している。そうした取り組みの一つにコールセンターのサービス充実があるが、「引っ越しシーズンに電話がつながりにくく、オペレーターの負担が増える」という課題があった。そこで導入したのがNTTテクノクロスのAI音声合成とテキスト認識の組み合わせによる自動応答システムだ。プロジェクトを推進した担当者に導入の経緯と効果について聞いた。
お客様プロフィール
東北電力株式会社様
URL:https://www.tohoku-epco.co.jp/
設立:1951年5月1日
資本金:2,514億円
従業員数:5,061人(2021年3月末時点)
事業概要:東北6県と新潟県へ低廉で環境に配慮した電力を安定的に供給する電力会社。現在は、電力供給事業の構造改革を進めるとともに、スマート社会の実現に向けた事業へとビジネスモデルの転換に挑戦している。
©2021 株式会社エスエス
課題
ピークシーズンの三重苦。コール待ち、オペレーター確保、業務負担増
東北電力は2021年5月に創立70周年を迎えた。新たな節目に向けてさらなる企業価値の向上を目指す同社が注力するのが、個人顧客の利便性の向上だ。Webサイト上で契約情報の変更ができる会員制Webサービス「よりそうeねっと」の利用が進んでいるものの、電話による各種契約手続きの申し込みを希望する顧客も依然多く、コールセンターの重要性は引き続き高い。
コールセンターを運営するカスタマーサービスの副長を務める渡辺貞輔氏は、「コールセンターにいただくお電話が1年のうちで最も多いのは2~4月の引っ越しシーズンです。この時期にはオペレーターの人数を増やすなどの対策を取ってきましたが、それでも想定を上回るお電話をいただいてつながりにくくなります。途切れなくいただくお電話の対応で、オペレーターにも負担がかかっていました」と振り返る。
オペレーターは育成にかかる期間が必要なため早期に確保する必要もある。しかし、期間限定の人材確保は毎年厳しくなっているという。電話がつながりにくい、オペレーターの確保が難しい、オペレーターの負担も大きい――。引っ越しシーズンのコールセンター対策は、東北電力にとって三重苦といえる大きな課題だった。
その課題を解決すべく新たに導入したのが、AIを活用した音声合成と、入力音声のテキスト化を組み合わせた進化型IVR(自動応答システム)だ。
経緯
NTTグループと二人三脚で最適なコールフローを構築
コールセンターの課題について、東北電力では取引のあるNTTコミュニケーションズと日頃から共有し改善を重ねていたという。そうした中で提案されたのが、NTTテクノクロスが提供する音声合成ソリューション「FutureVoice」と音声自動応答システム「VoiceMall」の組み合わせによる進化型IVRだった。AIを活用した音声合成と、顧客の入力音声をテキスト化するこのシステムなら、自然な電話応対と自動化を実現できる。20年6月に検討を始め、システム環境の整備や細部運用の確認、オペレーターの指導などを経て、21年2月から運用を開始した。
導入の決め手について、担当の渡邉匡人氏は、「NTTテクノクロスのFutureVoiceとVoiceMallは、すでに別業務での導入実績がありましたので、引っ越しのお申し込み受付でも活用と効果が期待できました」と語る。
また、コールセンター業務を熟知しているNTTグループの総合力や迅速なサポート体制も、安心して導入できた材料の一つだったと渡邉氏は話す。その安心感が実際に現れたのが、コールフローの作成作業だ。
電話による引っ越しの申し込みでは、今までは、最初に顧客によるプッシュ操作で要件(フロー)を絞り込み、その後オペレーターによる名義・住所・電話番号といった定型要件をヒアリングしていた。これは、多くのコールセンターで行われている典型的なフローといえる。
今回、定型要件のヒアリングのほとんどを顧客の音声入力のみで完了できれば、オペレーターの応対時間が大幅に短縮できる。また自動応答のみで申し込み手続きが完了できるならば、顧客は好きな時間に手続きができ、顧客の利便性も高まる。業務効率向上と利便性向上の両立が可能になるのだ。
自然な音声自動応答の実現のためには、まず、音声認識に適した定型用件の抽出と、それを聞き出すコールフローの設計が欠かせない。この設計について、システム構築を推進したメンバーの1人である大沼麻衣氏は、次のように話す。「コールフローを見直す作業の過程で、定型用件のどの部分を音声自動応答システムに振り向けるべきか、検討を重ねました。NTTコミュニケーションズやNTTテクノクロスの豊富な経験とノウハウのおかげで、最短時間の内容で最大の効果を上げるコールフローを作成できました」
効果1
自社での音声ガイダンスの作成・変更・調整が可能に
最適なコールフローをつくることができた東北電力のチームは、次に音声ガイダンスの作成に進んだ。ここで威力を発揮したのが、音声合成ソリューションのFutureVoiceだ。従来の音声ガイダンスの作成方法では、まず修正したい部分の音声をナレーター(人間)が収録し、試し聞きして微調整を加えるという繰り返しで、実際にシステムに組み込むには数週間を要していた。
FutureVoiceは、テキストから合成音声を自動生成する。これまで多大な手間が掛かっていたナレーターの収録が不要な上に、作成した音声ガイダンスの内容を後で自社の担当者が設定・調整できるのも大きなメリットだ。
運用中の自動応答システムで、お客さまがどこで入力を中断したか把握したうえで、直前のガイダンスの言い回しを変更し、完了率を高める改善も自社で実施できる。内容の変更にかかる時間も大幅に短縮できる。
「重要な部分を話すスピードをゆっくり目に設定したり、抑揚を付けて全体にメリハリを出したりするなど、細かい調整が自分でできます。設定画面ではイントネーションや“間”が図や記号を使って視覚的に表示されています。誰でも直感的に操作できるのもいいですね」と大沼氏は満足感を示す。
「FutureVoiceではテキストを登録するだけで音声データがつくれ、修正も設定画面上で簡単にできるため、実際にシステムに組み込むまでに30分もかかりません」と渡邉氏は音声合成ソリューションの導入メリットを強調する。
効果2
進化型IVRで顧客体験(CX)が向上。処理時間が半減した効果も
今回の進化型IVRでは、音声合成のFutureVoiceに加えて、音声自動応答の「VoiceMall」とRPAの組み合わせが業務効率化に大きく貢献した。VoiceMallは、顧客が発した音声を自動認識し、テキスト化する。東北電力ではさらにRPAを活用し、このテキストデータを顧客管理システムへ転記する作業を自動化した。
渡邉氏は次のように説明する。「オペレーターが口頭で受け付ける場合、お聞きした内容を当社の顧客管理システムに手動で入力する必要があります。一方、今回構築した進化型IVRでは、お客さまが音声入力された名義や住所などの情報が自動でテキスト化され、データベースに蓄積されます。オペレーターはお客さま情報を顧客管理システムと容易に照合できるようになりました。さらに、顧客管理システムに入力する処理をRPAで自動化したため、電話で受け付けていた時に比べて全体の処理時間が半分くらいに減らせました」
今後の展開
さらなるCX向上を目指して
前述したFutureVoiceとVoiceMall、そしてRPAの組み合わせは今後、大きな効果を生みそうだ。お客さまが電話口で話すだけで引越などの変更が可能になり、しかも24時間365日いつでも好きな時間に申し込みできるようになった。顧客体験(CX)が大きく向上したといえる。加えて、オペレーターの負担が軽減され、さらなる業務効率化も期待できる。
また、自動応答システムで多数の問い合わせに応対することで、オペレーターは、お客さまにより沿った、有人でしかできない応対に集中することもできる。
副長の渡辺氏は、「FutureVoiceとVoiceMallは、今後の新たなサービスやキャンペーンの展開においても活用できるものだと確信しています。NTTテクノクロスは当社特有のシステム構成も深く理解しており、これからも支援をいただければと思います」と今後の展開にも期待を寄せる。
NTTテクノクロスは、CXの向上とコールセンター業務の改善を通じて、これからも東北電力様の顧客とのより良いコミュニケーションを支援していく。
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