株式会社鳥羽様

　顧客企業（樹脂製品の総合メーカー）の工場で生産するチューブやフィルムは、世界的に需要が増す半導体の製造機器・設備にも使用されるため、生産性の向上が求められていた。カギとなるのは、いかに早く、ラインのチョコ停（生産設備のトラブルで、一時的に設備や生産が停止・空転する現象）を復旧するかだ。

　「チョコ停した際も作業員がすぐ近くにいる場合は、大きなロスにはなりません。ですが多くの工場と同じく、お客様の工場も配置できる人員には限りがあり、全てのラインに作業員を割り振れません。チョコ停したラインの近くに作業員がいない場合は、各人が持ち場の作業を止めて誰が対処するかの相談をしなければならず、その間、異常検知を知らせる警報音が鳴りっぱなしといったこともあります」

　こうした状況を改善するためには、まずは全ての作業員が警報音を「リアルタイムで認識する」こと、その上で作業員同士が手を止めることなくコミュニケーションを取り、事態に対応する人員を合議して、一分一秒でも早く駆けつけてラインを復旧することが必要だ。

　このケースに最適な機器やシステムは鳥羽の取引先メーカーでは扱っていなかったため、國井氏はインターネットも活用して調査を重ねた。「これだ」と見極め、顧客企業に提案したのがNTTテクノクロスの「Wi-Fiインカムシステム」だ。

　「顧客企業では当初、どのラインで異常が起きたかを示す液晶モニターの設置や、特定小電力トランシーバーの導入を考えていました。ですが、どの場所からも異常を視認するためには複数台のモニターが必要でコストがかかりますし、トランシーバーでは同時通話ができないため、複数人で相談したいケースには不向きです」

　一方、Wi-Fiインカムシステムであれば、製造ラインで鳴る警報音（アナログ音声）を「音声入出力ユニット」を通じて現場の作業員に一斉に伝えることができる。警報音はライン毎に異なっており、この音の違いによって、作業員はどのラインで異常が発生したかを瞬時に認識し、素早く復旧対応ができるようになった。

　また、全ラインに1台ずつ音声入出力ユニットを設置する際に無線を利用することで、工場床に余計な配線を増やさなかった点も高い評価を得た。業務エリア（床）に配線が這うと、作業員の業務に支障をきたす場合があるためだ。

　こうした課題を解決する機能性に加えて、國井氏が顧客企業への提案にNTTテクノクロスを指名した背景には、顧客本位の対応力があったという。問い合わせのメールを送ってからの迅速な反応や、見積もりの提示から納品までの期間も、自身の経験則に比べて期待を超える早さだったと評価する。「定型製品をそのまま卸すという発想ではなく、現場の『困りごと』を丁寧にヒアリングした上で最適の構成を提案できました。顧客企業は当社以外にもご相談していましたが、私たちはお客様に寄り添った提案をスピーディーに行えたので、採用いただけたのだと思います」

　また、工場にはWi-Fi環境が未整備だったため、NTTデータ関西の「DX Wi-Fi」を組み合わせた。1台のアクセスポイント（AP）で広域をカバーでき、複数APの切り替えが不要で音質が安定しているのが魅力だ。

　Wi-Fiインカムシステムの導入により、作業員が業務を止めずに各人の状況確認などのやりとりをして、限りある人員でより迅速に警報音に対応できるようになった。もちろん、歩留まりも改善し、生産性の向上につながる効果を得た。現場からは「通話がクリア」「軽くて携行しやすい」といった使い勝手の良さへの評価の声も上がる。

　國井氏は、Wi-Fiインカムシステムが自社の取扱製品に加わることで、提供するソリューションの幅が広がることへの期待も込める。「顧客企業では今回の工場の別の棟でも導入することが決まっており、他の地域の工場での導入もご検討いただいています。最小限の人員でラインを回して生産性を向上させるのは、規模の大小を問わず全ての工場の課題です。当社としても、製造現場の困りごとを解決できるWi-Fiインカムシステムのご提供先をさらに広げたいと考えています」