概要

「分析機器、医用機器などを中心に幅広い事業を展開する島津製作所。同社はこの度、計量器の校正*1 部門にデータブリッジを導入。シンプルな操作性で業務効率向上とペーパーレス化を実現するとともに、クローズドな装置制御ネットワーク(OT/FA*2系ネッ トワーク)と業務ネットワーク間のデータ授受を容易化したことで、データの利用・活用を推進する確かな手応えを感じている。

島津製作所様

左:CS統括部 シニアマネージャー 増田 裕一氏
右:CS統括部 計量管理グループ 萩野 敦也氏

*1 校正:機器の精度や機能、動作を確認する業務
*2 OT:Operational Technology。製造工程を制御・運用するシステムの総称
FA:Factory Automation。製造工程の自動化を図るシステムの総称

課題

業務系ネットワークと分離された装置制御系ネットワーク内の機器校正業務

 「科学技術で社会に貢献する」を社是とし、創業から140年以上、分析機器、医用機器などを中心に航空機器、真空ポンプや油圧機器など、幅広い事業を展開する島津製作所。近年では新エネルギー開発支援や病気の超早期診断、新薬開発の支援など最先端の科学技術を用いた事業を広げており、昨今のパンデミック時にはCOVID-19の全自動PCR検査装置を上市。多くの医療機関に採用され、感染症の拡大防止にも貢献している。

 一般的に、製造業現場の装置制御ネットワークには機密となる数値データなどが存在するため、インターネットにつながる業務系ネットワークとは分離されている。加えて装置制御ネットワーク内にあるPCには古いOSや古い制御ソフトが利用されていることもあり、技術面やコスト面とのかねあいで容易にアップデートできないという課題がある。

 CS統括部 シニアマネージャーの増田裕一氏は、同社の製造や検査現場においても同様の課題があったと、次のように話す。「年間約600件に上る計量器の校正の際、専用の機器を装置制御系ネットワーク内のPCと接続して実施します。そのPCは業務系ネットワークに接続できないスタンドアローンのため、装置制御用PCから校正データをプリンタで出力し、業務用PCで作成する検査成績書の添付書類として、2点を合わせて紙で管理していました。業務効率化の観点からこの業務フローを見直し、紙を介さずダイレクトにExcelの検査成績書を作成できる方策を検討していました。」

 CS統括部 計量管理グループの萩野敦也氏は、もう一つの課題を次のように話す。「本件に限らず、全社的にデータの利用・活用を推進する動きがあり、その際も分離された2つのネットワーク間のデータのやり取りが煩雑なことが課題でした。そのため、できるだけコストや手間をかけずに実現する方法はないか、模索していました。」

解決へのアプローチ

提供形態や安全性、シンプルな操作性などを評価
評価機による実環境テスト運用で確信

 そこで同社は、ファイル受け渡しを安全かつ手軽に行える製品のリサーチを開始した。萩野氏は当時の状況について次のように語る。「スタンドアローンPCからデータをやり取りする際、USBメモリやUSBリンクケーブルを使用することが一般的です。それに類似する製品をインターネットで検索していたところ、『データブリッジ』に辿り着きました。」

 同社は2022年5月にNTTテクノクロスに問い合わせ。提案を受けた後、評価機を実環境に設置し、2週間のテスト運用を実施。ファイルサイズやファイル形式なども確認し、機能や操作性に問題ないと判断され、同年8月に採用に至った。

 複数社の製品と比較した中で、データブリッジを採用した決め手について、増田氏は次のように話す。「他社製品の多くは中間サーバと呼ばれる仕組みで、導入の工数やコストが多くかかることでハードルが高く感じました。その点、データブリッジはインストールが容易で、機器1台で利用できてコスト的にも魅力です。古いOSにも対応していることや、物理的にネットワーク分離したまま、独自プロトコルによる一方通行のデータ通信が可能な、安全性の高さも評価しました。そして最終的に決め手となったのは、誰もが迷わずに実行できる、シンプルな操作性です。」

ソリューションとその成果

ペーパーレス化と業務フローのデジタル化を実現
アラート通知の仕組み構築により品質向上にも貢献

 データブリッジの本番運用が開始されたのは2022年9月。ダイヤルゲージなどの計測器を校正する際、専用機器に接続するPCと、隣接する業務系ネットワークPCとの間にデータブリッジを接続することで、校正作業時のファイル受け渡しが容易にできるようになった。

 その導入効果を、萩野氏は次のように語る。「データブリッジ導入により、業務フローのデジタル化が実現しました。初めからExcelデータに入力できるようになったことで、紙への出力・手書き作業が年間約600枚分減りました。加えて、計器の不合格の予防も可能になりました。ダイヤルゲージの校正ではμm単位の精度が求められますが、その上下限値に近い値がExcelに入力されると、自動でアラートを表示する仕組みを作りました。これにより計器の異常を確実に捉えることができ、品質の向上にも貢献します。」

今後の展開

同様の課題を持つ3部門にも導入展開
データの利用・活用を推進する確かな手応えを実感

 同社はこの成果を評価し、現在同様の課題を抱えるグループ会社を含む3つの部門にデータブリッジの導入を進めている。

 増田氏は、今後の展開について次のように話す。「データブリッジを利用することでファイルを安全に受け渡しできるので、今後は各種業務フローのデジタル化を、より推し進めたいと考えています。また、顧客先PCにある分析計測データなどの授受の際もUSBメモリが使用禁止であるケースが多く、そういった場面でも活用できないか検討したいと思います。こうした閉じた環境からのデータの受け渡しが容易になることで、社内でその先の動きが起き始めている点は、非常に大きな意義です。実際、データブリッジを利用し始めてからBIツールにデータを送ろう、画像判別しようといった声も活発に上がるようになり、データの利用・活用を推進する確かな手応えを感じています。」

 同様の課題を持つ製造業企業へのアドバイスとして、増田氏は次のように語る。「紙やUSBメモリで運用する制御装置端末ごとにデータブリッジを導入すると、費用対効果が合わないと感じるかもしれません。しかし、当社のように複数の制御装置でクローズドなネットワークを作り、そこに1台のデータブリッジを接続すれば、部門ごとに1 ~数台で済むことが多いので、コスト効果も悪くないと思います。接続の手間も気にならないレベルです。さらに、USBメモリを使うことで起こりがちな、紛失、情報漏洩、作業工数やミスなどのリスク回避策としても勘案すれば、さらにその効果は大きなものとなります。いま、多くの企業が人手不足に伴う事業継続対策、データ利用・活用によるDX推進に頭を悩ませていると思います。データブリッジはその点からも、有効なソリューションです。」

 最後に、NTTテクノクロスへの評価と期待を、増田氏は次のよう結んだ。「提案からデモ機の貸し出し、本製品の導入から活用方法のアドバイスまで、常に迅速かつ柔軟に対応いただき、感謝しています。今後も現場のニーズに応える、使いやすくてリーズナブルな製品やサービス提供に期待しています。」

CS統括部のデータブリッジ利用による業務改善

CS統括部のデータブリッジ利用による業務改善

お客様プロフィール

 お客様プロフィール
事業概要 所在地:京都府京都市中京区西ノ京桑原町1 「科学技術で社会に貢献する」を社是とし、分析計測機器・医用機器・航空機器・産業機器など幅広い事業を展開。
URL https://www.shimadzu.co.jp/

※2023年3月現在