概要

 東日本電信電話株式会社(以下、NTT 東日本)は、お客様との重要な接点であり、多種多様なニーズに対応することが求められるコンタクトセンターの業務を支援するため「ForeSight Voice Mining」を導入。
 各オペレーターの通話をモニタリングし、パフォーマンスを客観的に分析できるようになったことで指導・育成の質が向上。通話音声が自動でテキスト化されることにより検索力が向上し、長時間かけていた通話録音の聞き直し作業が短縮され、業務改善に貢献した。また、既存の販売管理システムと連携し、営業情報とマッチングさせた高度な分析への活用を試験的に開始した。

課題

大量の通話音声からのサンプル確認ではトークスクリプトの改善が不十分

 NTT 東日本は、光回線によるインターネットアクセスのより一層の拡大・利活用促進や、ブロードバンド環境のさらなる高度化と普及を実現することで、ICTによる豊かな社会の実現や地域企業・自治体の持続的な成長と発展、社会的課題の解決を支援している。
 現在、100以上のサービスを提供する同社にとって、お客様との重要な接点となっているのが、各種商品・サービスの総合受付窓口である「116センタ」や、「BCC」(ビジネスコンタクトセンタ)などだ。その116センタとBCCの業務を支援するため、2017年7月からNTTテクノクロスが提供する「ForeSight Voice Mining」の運用を開始し、効率化と業務改善を実現している。

 「当社は提供する製品やサービスの数が多く、お客様層が幅広いことから、お問い合わせやご要望も千差万別です。116センタやBCCのオペレーターには、お客様のニーズを把握し臨機応変に応えるための豊富な商品知識やコンサルティングスキルが要求されるほか、インバウンドのみならずアウトバウンドでのアフターフォローコールなども担うため、日常的な教育・指導が非常に重要となっています」と語るのは、システムの導入や維持・運用を主管する部門に所属する恵本 智充氏だ。
 オペレーターへの教育や指導でおこなわれるのが、お客様との通話記録をベースとした振り返り作業だが、IP-PBXの録音装置に大量蓄積しているお客様との通話音声データに関してはこれまで十分に活用できていなかったという。

 BCCでのシステム活用推進などをおこなう佐々木 恵氏は、「どのような提案内容がお客様に喜ばれたのか、反対にどの部分に問題があったのかを分析するには、スーパーバイザー(SV)やグループリーダー(GL)が録音された通話音声を聞き直したり、テキスト化して通話内容を確認する必要があります。しかし、全ての通話を後で聞き直すには手間と時間がかかるとともに、録音された通話音声ではお客様との通話中にリアルタイムで指導することができないため、録音に加えて通話のリアルタイムなテキスト化および簡易に通話データの検索や分析などが可能なシステムの導入が望まれていました」と説明する。

解決へのアプローチ

ForeSight Voice Miningを実環境でPoC オペレーターの全通話をモニタリング

 同社が注目したのはNTT研究所が開発した音声認識・分析技術と、NTTグループ各社が商用開発したAI技術の「corevo®」だった。ForeSight Voice Miningは、それらの技術を適用していることもあり、リアルタイムなテキスト化と音声認識率が格段に向上。実用化に達したため2014年から販売開始をしていた。
 その実力を確かめるため、当時ディープラーニングを活用した他社の音声認識システムと、生の通話録音を用いて比較のための技術検証を実施。その結果、ForeSight Voice Miningの音声認識率が他社を上回り、機能検証においても実業務で利用可能な精度が確認されたことから、正式に導入が決定した その後、116センタの一部で試験運用を開始し、ボイスマイニング機能を活用した勧奨優良トークの抽出などを実施。順次各センタへの導入を進めていった。一方で、BCCにおいてもボイスマイニングの試験運用を実施。そして2017年7月に、116センタとBCCでの商用運用がスタートした。

 関信越地区(埼玉・栃木・群馬・長野・新潟)を所管するBCCセンター長の中村 雅彦氏は、「現在、ForeSight Voice Miningによって各オペレーターの応対通話をモニタリングし、パフォーマンスを分析できるようになったことで、指導・育成の質が格段に向上しています」と述べる。
 目的の通話記録を容易に検索・抽出することが可能になったため、オペレーターの応対品質向上のための指導により多くの時間を使えるようになり、それが販売成果にも貢献しているという。

 また、NTT 東日本独自の活用方法にも注目だ。例えば、SVやGLが活用する管理者向けUIの「ワードアラート機能」では、「移転・引っ越し」「クラウド」「セキュリティ」といった、トータルソリューション提案につながるキーワードがお客様から発話された場合に、管理画面上のオペレーターの座席位置が点灯。選択すると通話内容がテキストでリアルタイムにモニタリングされる仕組みとなっている。SVやGLは内容を確認し、必要に応じてオペレーターをサポートしたり具体的な指示を与えたりすることが可能だ。

ソリューションとその成果

既存の販売管理システムとの連携でより実践的な分析が可能になる

 さらに、試験的な運用として、関信越のBCCではForeSight Voice Miningのデータと、営業情報を保有する販売管理システムのデータとをマッチングさせて、より高度な分析に活用できるよう取り組んでいる。
 受注/失注などのデータと通話記録とを融合させることで、販売実績上位者と下位者の比較だけではなく、受注案件と失注案件の会話の違いや、商品単品受注と複合的な受注でのトーク内容の違い、顧客業種別のトーク内容の違いなど、ForeSight Voice Miningのデータだけでは不可能だったより実践的な分析が可能になるという。

 ただ中村氏は、オペレーターへの指導・育成においては弱点の指摘や監視をするだけではなく、本人の努力の過程や長所を見つけ出し、それをしっかり褒めることでモチベーションアップにつなげることも重要だという。「成果につながった案件は、毎朝のミニ勉強会でできるだけトーク内容を紹介するようにしています。それが他のオペレーターへの共感や、優良トーク例としてノウハウの共有にもつながると期待しているからです」と中村氏。それを可能にするのもForeSight Voice Miningの魅力のひとつだと指摘する。

 NTT 東日本では、今後もForeSight Voice Miningの活用を促進し、AIを活用したFAQ検索機能や、音声認識結果から要約文を自動作成する機能などをNTTテクノクロスの技術協力を得て利用可能にし、オペレーターのアフターコールワークの負担軽減にもチャレンジしていく予定だ。

 そして、ForeSight Voice Mining導入プロジェクトを振り返り、恵本氏は「運用開始から2年が経過し、今では各センタで日常的に活用されるツールとして定着するなど、導入を進めてきた立場としてこの選択は正しかったと確信しています。今後はAPIによる他システムとの連携なども視野に、ツールのさらなる熟成を進めていく考えです」と語る。
 地域のお客様との重要な接点を先端技術によって高度化した今回の取り組みは、業務効率化や生産性向上のみならず、現場のオペレーターの成長を促し、マネジメント側とのコミュニケーションを高める可能性も秘めている。

お客様プロフィール

 お客様プロフィール
設立 1999年7月1日
事業概要 国内屈指の電気通信事業者。1999年7月、日本電信電話株式会社の再編成に伴い、関東・甲信越以北の1都1道15県の東日本地域を分割して発足。地域電気通信業務 (音声伝送サービス、データ伝送サービス、専用サービス、電報サービス)、およびこれに附帯する業務を主な営業種目とし、「地域とともに歩むICTソリューション企業」としてお客さまの課題解決に貢献している。
資本金 3,350億円
従業員数 4,900人(2019年3月31日現在)
URL https://www.ntt-east.co.jp/

※2019年9月現在