概要

東京海上グループの一翼を担う日新火災海上保険株式会社は、その創業を1908年に遡る業界の老舗である。国内リテール市場に特化し、地域社会に密着した営業活動にこだわりを持っている。コールセンターでは、オンプレミスで使用していた交換機の保守切れという課題に加えて、サーバーで管理していたCRMの応答が遅くなるなどの障害が発生するようになり、「Salesforce」および、NTTテクノクロスのCTI連携ソフトフォン「CTBASE/JointPro」の導入を決定した。

課題

古くなったシステムの運用で、 コールセンタースタッフの負荷が過大になっていた

顧客からの問い合わせのほとんどを担うコールセンターでは、次の3つの課題を抱えていた。まず「オンプレミスで使っていた交換機の保守切れ」「サーバーで運用するCRMの反応の悪さ」「障害時の対応の煩雑さ」だ。「交換機については、オンプレミスではなく、ソフトフォンに切り替えようと考えていました。そのときに、CRMも更新したいという声があがっていたので、合わせて検討することにしました」と日新情報システム開発システム開発2部の角山惠一氏。CRMが抱えていた課題としては、「新規ケースの作成、保存、検索など、一つひとつの動作に時間がかかってしまい、オペレーターからも使いにくいと言われていました。また、調子が悪いとCRMのアプリをすべてのパソコンに再インストールする必要があり、その間、コールセンターの対応が滞るなど、問題になっていました」とコールセンターを管轄する安心サービス部スーパーバイザーの山下真紀氏は語る。

同社の安心サービス部の基本方針は「顔の見えないお客さまとのコンタクトにおいて、お客さまが満足・安心する対応を行う」ことだと安心サービス部プロモーターの森川賢一氏はいう。そのためにも、新たなシステムの構築は不可欠だった。同社が新しいシステムを検討するときに、念頭にあったのがクラウドシステムだったという。「クラウドシステムにすれば、コールセンターの移動、増設も容易ではないかと考えました。当時はまだ、今ほどクラウドシステムは普及していませんでしたが、徐々に増えてきた状況だったので、積極的に検討することにしました」と角山氏は振り返る。そこで具体的に検討されたのが「Salesforce」と「CTBASE/JointPro」だった。複数の企業が「Salesforce」を使った提案をしてきたが、提案内容に大差はなかったという。しかし、NTTテクノクロスの提案は、ただ「Salesforce」を使いましょうというものにとどまらず、同社の悩みを丁寧に聞き取り、これに応えるものだった。

解決へのアプローチ

詳細な要件定義、オンプレミスで扱う 契約情報との連携がポイントに

コールセンターでの業務内容によって、CRMに求められる要件は異なってくる。「自分たちだけで考えていると、以前のシステムにとらわれてしまうし、業務フローについても変えようとは思えない。「Salesforce」で従来と同じことができないというときにも、NTTテクノクロスさんが入ることで、現実的な提案をいただけたと思っています」(角山氏)

これまでできていた当たり前のことも「なぜその機能が必要か」を掘り起こし、複数の代替案を提案していった。また、CTIとの連携、オンプレミスの汎用機で運用している契約情報、証券情報との連携が導入時では課題となった。汎用機にリアルタイムでアクセスさせることはできないため、その解決策を実現するのに時間がかかったという。年度末の組織変更の情報も反映させる必要があったが、これはテストをすることができない。実際の期末である3月末日の一発勝負であり、担当者は緊張で眠れなかったそうだ。

ソリューションとその成果

クラウド化で場所を選ばず、お客さま対応ができるように グローバル検索で、お客さま対応の内容も充実

「クラウドになってよかったこととしては、私が所用でコールセンターを離れているときでも社内であれば、コールセンターのシステムにつなげて状況を確認できる点です。気になる案件、お客さまがいても、他拠点などの外出先で状況確認ができるし、コールセンターに指示を出せる。これは素晴らしいと感じました」(山下氏)
旧システムで課題だったシステム操作の重さ、遅れも解消された。また、現在コールセンタースタッフに好評なのが「グローバル検索機能」だという。「最初は、グローバル検索の使い方がよくわかっていなかったので、別途、検索機能を組み込もうと苦労したのですが、今から思い返すと、もっとグローバル検索に頼ってよかったのだと思います」(角山氏)
「お客さまからの受電中に、別のスタッフがどのお客さまからの受電かを確認できるのですが、そのお名前をグローバル検索すると、契約内容や過去の受電履歴などをすぐに確認できます。それを見て受電中のスタッフに情報を提供したり、アドバイスをすることもできるようになっています」(山下氏)
以前は証券番号がわからなければすぐに確認できなかった情報も、グローバル検索で素早く確認できるそうだ。「過去に印象的だった受電についても、例えば、覚えている地域名や印象的だったキーワードで検索、見つけることができます。お名前や証券番号がわからなくても探すことができるのは助かります」(山下氏)
そうすることで、お客さまへの対応の質が向上しているのだという。

今後の展開

将来は在宅コールセンターも視野に

他にも様々な導入効果はあるという。「受電後に作成するレポート機能が充実したので、これまでチェックしきれなかったことも確認できるようになりました。おかげで受電後の連絡漏れは大幅に減少しました。イレギュラーが発生したとき、問題のポイントをすぐに特定できるので、対応がものすごく早くなったと思います」と山下氏。従来はクライアントサーバ型システムだったため、一度データを落とした上で加工しないと確認ができず、手間がかかりすぎていたのだという。 現在、新型コロナウイルスの影響もあり、同社のコールセンターでも、フロアの分割、複数拠点化などで、密を避ける運用を行っている。「まだまだ準備段階ですが、クラウドシステムを活用していることもあって、将来的には在宅コールセンターの運用も視野に入れ始めています。それもクラウドシステムへの転換が済んでいるからこそ、前向きに考えられることです」とIT企画部課長の三吉啓幸氏は語る。

「現場からもっとこうしたいといった声も出ています。便利だからこそ、もっと便利にという声なので、今後、改善するときには工夫したい」と山下氏。角山氏は「前回は既存業務を分析してシステムに反映させることに手一杯でした。次に改善するときには、もう一歩踏み込んで業務改善まで手を付けたい。前回もNTTテクノクロスさんは丁寧にヒアリングして、提案をいただいたので、その点にも期待しています」と語った。

写真左から 三吉 啓幸⽒ ⾓⼭ 惠⼀⽒ 久保⽥ かおり⽒ ⼭下 真紀⽒ 森川 賢⼀⽒

お客様プロフィール

 お客様プロフィール
設立 1908年(明治41年)6月10日
事業概要 1908年の創業以来、リテールにこだわり地域密着の損害保険会社として個人のお客様お客さまを中心に活動。2003年に東京海上火災保険株式会社(現・東京海上日動火災保険株式会社)と業務提携・資本提携、2006年に経営統合を経て現在に至る。
従業員数 2,215名(2020年3月31日現在)
URL https://www.nisshinfire.co.jp/