概要

カブドットコム証券株式会社

証券ビジネスにはさまざまな規制があり、企業の独自性を出しにくい業界のひとつである。その中で、1999年の株式売買委託手数料の自由化により参入したカブドットコム証券は、自社開発によるシステムを効果的に活用して、顧客に新しい利便性や、他社にはない独自性を打ち出してきた。


また、同社では、三菱UFJフィナンシャル・グループの一員であるという特徴を生かし、密接な銀行との連携によるいっそうの顧客利便性向上を目指した。そのために実現したサービスが、三菱東京UFJ銀行の口座に当日中の振込が可能な「当日出金サービス」(ゆうゆう決済)の受付時間の延長である。しかし、このサービス開始までに許された開発期間は短く、既存の勘定系システムとの連携は技術的にも難しい課題があった。それを解決したのが、NTTソフトウェアの「即時送金システム」パッケージであった。

課題

ITを駆使して、新しいサービスを提供する

同社の経営基本方針には、「先進のIT技術力を駆使し極限までシステム的に対応するとともに、ネット専業ならではのITを駆使したネットワーク型の新しいビジネスを展開」と謳われている。実際に、同社のシステムはほぼすべて自社で開発していた。


当社サービスの独自性や素早い展開の源泉の一つはシステムの自社開発にあると考えています。例えば、相場動向に応じた売買注文を可能とする自動売買機能に関しても、主要ネット証券最多の発注方式を提供しています。自社開発だからこそ、お客様のご意見やご要望はすぐにフィードバックして、素早い対応が可能でした


自社開発へのこだわりとメリットをそう強調するのは、事務・システム本部 システム部 開発課の中藤真人氏だ。


カブドットコム証券は、2006年に三菱東京UFJ銀行と提携し、2007年に三菱UFJフィナンシャル・グループの連結子会社となった。この強みを生かして、三菱東京UFJ銀行の口座を持っていれば、短時間で証券口座を開設できるなど、カブドットコム証券は新たなサービスも提供している。


証券会社として、三菱UFJフィナンシャル・グループであることのメリットを活かして、お客様に新しい利便性を提供したいと考えていました。そこで導入を決めたのが、お客様の証券口座から資金を銀行口座に当日中に出金するサービスの受付時間の延長です


しかし、この当日出金サービスの受付時間を延長するためのシステム開発は、従来のシステム開発とは事情が異なっていた。それは、これまで以上に高い信頼性が求められる送金という金融取引システムの開発であることと、開発期間が非常に短い点であった。

解決へのアプローチ

厳しい条件をクリアした唯一のパッケージ

中藤氏は、当時をこう振り返る。

カブドットコム証券株式会社 中藤 真人氏

2008年には旧東京三菱系と旧UFJ系の勘定系システムの完全統合が予定されていました。そのため、完全統合作業がはじまるまでの半年間で、当日出金サービスシステムの受付時間を延長する作業を完了させる必要がありました


当日出金サービスの受付時間の延長を実現するために、(株)NTTデータの提供するANSER-CLAサービスを活用することにした。従来の総合振込では銀行の勘定系システムへの当日振込データの連携は容易ではなく、受付時間を延長する手段としてはANSER-CLAしかなかったからである。同サービス利用にあたっては、出金企業側にゲートウェイシステムの開発が必要である。振込元銀行や全銀システムの稼動時間帯を判別してデータ送信をすることや、二重送金や誤振込防止のためのデータ保証、エラーの自動ハンドリングなど、さまざまな制御機能が求められた。


もちろん、時間的な余裕があれば、期間とコストをかけて自社で開発したと思います。しかし、今回はすべてを独自に開発するには、期間が絶対的に不足していました


さらに、ミスの許されない金融システムの構築には、ANSER-CLAや銀行との入念な試験を行う必要がある。カブドットコム証券が、当日出金サービスの受付時間延長を早期に実現するためには、パッケージの導入へ大きく舵を切らねばならなかった。そこで採用されたのが、金融機関の勘定系システムとANSER-CLAの連携を実現するNTTソフトウェアの即時送金システムだった。


実は種々の条件を考慮すると、開発コストについても、パッケージの方がコストパフォーマンスに優れていたのが実情ですと、中藤氏はコスト面についても、NTTソフトウェアのパッケージの優位性を打ち明ける。

ソリューションとその成果

わずか4カ月で、即日出金の受付時間延長を実現

パッケージソフトの導入ではあったが、先進的なIT技術が特長のカブドットコム証券にとって、カスタマイズは不可欠であった。しかし、この点も問題はなかった。


パッケージソフトながら、こまかなカスタマイズにも迅速に対応していただきました。NTTソフトウェアの技術力を感じることができました。また、過去、多くの構築実績から銀行、ANSER-CLAセンターとの調整も的確に素早く対応いただくことができました


2007年6月からスタートしたシステム構築作業は、大きなトラブルもなくスムーズに進み、わずか4カ月あまりの2007年11月には、運用を開始することができた。

送金システムの導入イメージ

実は、NTTソフトウェアの即時送金システムは、ある金融機関向けに同社が少なくないコストと期間をかけてパッケージ化したものだ。NTTソフトウェアの自社開発のため、パッケージソフトでありながらもカスタマイズにも柔軟に対応できる。もちろん、金融システムとしての実績もあり、信頼性も申し分ない。新しいシステムの導入により、三菱東京UFJ銀行カブドットコム支店への当日出金は18:30まで延長され、顧客の利便性を大きく向上させることができたのだ

今後の展開

今後もいっそうの顧客利便性を追求する

カブドットコム証券は、グループ内での連携サービスの充実を図り、顧客満足度を向上させ、その口座数を着実に伸ばしている。同社は、システムを自社で開発することで自社のサービスを差別化してきた。しかし、コスト、信頼性、開発期間などを総合的に判断した結果、当日出金サービスにNTTソフトウェアのパッケージの採用を選択した


金融機関に限らず、今後、さらに高い付加価値をもつサービスを効率的に提供していくためには、質の高いパッケージソフトの導入と、より自由度の高いゼロからのシステム構築の使い分けが不可欠である。そして、その効果的な使い分けによってこそ、魅力的な新しいサービスをスピーディーに導入できるのだ。中藤氏はこれからも、お客様の利便性向上を実現する提案を待っていますと、NTTソフトウェアへの期待を隠さない。


NTTソフトウェアは、顧客企業の信頼に応えるべく、これからも確かな技術でシステムを支え続けていく。

カブドットコム証券株式会社

お客様プロフィール

 お客様プロフィール
設立 1999年11月19日
事業概要 個人投資家への「リスク管理追求型」というコンセプトのもとに、ネット専業ならではのITを駆使したネットワーク型の新しいビジネスを展開している。三菱UFJフィナンシャル・グループに属する証券会社としてのメリットを活かし、銀行と連携したサービスや、利便性と安定性を徹底的に追求した独自のサービスを提供している。
資本金 71.96億円
従業員数 94名(2011年1月末現在)
URL http://kabu.com/company/profile.asp

※2011年1月現在

※ ここに書かれた情報は、2017年3月時点の情報です。
  NTTソフトウェア株式会社は、2017年4月1日よりNTTテクノクロス株式会社に社名を変更しました。

※ ページに記載した会社名、製品名などの固有名詞は、一般に該当する会社もしくは組織の商標または登録商標です。