概要

 株式会社 伊予銀行(以下、伊予銀行)は、2018年度 中期経営計画の中で「Digital-Human-Digital」を目指す姿として掲げている。これは、デジタルの得意な分野は徹底して「デジタル」を活用し、「人」にしかできないコンサルティングの仕事に集中することで、お客様の「想い」や「夢」に寄り添う新たなビジネスモデルのことだ。これに合わせて、行内の業務を再構築するBPR(Business Process Reengineering)にも取り組み、行員の約7割が使用する約2900台のスマートフォンを導入した。電話帳にはNTTテクノクロス株式会社の電話帳マネジメントシステム「ProgOffice Enterprise」を採用。"スマートフォン・ファースト"のコミュニケーションで業務改善を推進している。

  • 株式会社タツノ 様
  • (左から)
    総合企画部
    日髙 美月氏
    栗田 大輔氏

課題

スマートフォンを起点にBPRを一気に加速

「このプロジェクトが始まったのは、それまでフィーチャーフォンを使用していた営業係から『スマートフォンを利用したい』という声が多く寄せられたことがきっかけでした。訪問先で相場を確認しながら金融商品を提案したり、リアルタイムでお客様と情報を共有しながら営業活動を進めたいという要望があったからです」

こう語るのは、スマートフォン導入プロジェクトを推進してきた総合企画部の栗田 大輔氏。そのため、最初は営業係に約1200台のスマートフォンを導入する計画だったと言う。しかし、スマートフォン導入プロジェクトを推進してきた栗田氏はそれだけにとどめず、BPRの視点から融資係、外国為替係など、内勤が主な行員も含めて、スマートフォンを約2900台導入する計画に拡大した。その理由について、栗田氏は次のように説明する。

「スマートフォンで業務改善できるのは、外出の多い営業係だけではありません。内勤の者は固定電話を使用していましたが、会議で離席していると電話に出られませんし、着信があったこともわかりません。さらに、同僚が電話を受けて、メモを残すなどの作業も発生してしまいます。もしスマートフォンで離席中も本人が直接対応できれば、同僚が電話を受ける時間も節約され、1対1でスピーディに業務が進むからです」

スマートフォンの電話帳に、クラウドサービスの「ProgOffice Enterprise」を採用した決め手について、栗田氏はセキュリティの高さを第一に挙げる。スマートフォン自体には電話帳の連絡先はもちろん、ショートメール、電話の発着信履歴などのデータが一切残らないため、伊予銀行が定めるセキュリティの基準を満足させることができた。栗田氏は電話帳を平仮名で検索できることも高く評価している。

ショートメール監視機能の追加でお客様とのやりとりを促進

2019年1月から、「ProgOffice Enterprise」でショートメールの発着信履歴とメッセージ内容が監視できるようになったことも魅力だったと語るのは、栗田氏と二人三脚でプロジェクトを進めてきた日髙 美月氏だ。

「フィーチャーフォンを使用していた当時は発着信履歴やメッセージ内容の監視ができないことからショートメールの使用を禁止していました。そのため、お客様からショートメールをいただいても、行員からは返信ができなかったのです。対応が遅れて『ショートメールを送ったのに、見てくれていないのか?』『なぜ返事をくれないのか?』とお叱りを受けることもありました」

「ProgOffice Enterprise」でショートメールをやりとりすれば、発着信履歴やメッセージ内容の監視ができるので、ショートメールの利用を許可することができる。誤送信を防ぐため電話番号の手入力は禁止して、「ProgOffice Enterprise」の「社外(共有)電話帳」から必ず発信するようにしている。これで、営業係がお客様のアポイントを取ったり、行員間で簡易な連絡をするなど、ショートメールでコミュニケーションする環境ができあがった。

栗田氏は、ショートメールをBCP対策としても活用できると考えている。伊予銀行が主に展開する愛媛県、広島県は、平成30年7月豪雨で甚大な被害を受けた。さらに、南海トラフ巨大地震の想定震源域にもなっている。

「災害時にショートメールは重要な連絡な手段です。スマートフォンと『ProgOffice Enterprise』のコンビが、私たちにとってBCPの観点からも重要視した部分をほとんど満たしてくれると思っています」

解決へのアプローチ

いつでも、どこにいても、業務が行える環境にむけて

お客様の電話番号が登録された「社外(共有)電話帳」は、営業店の上席者が一元的に管理している。営業店ごとにフォルダがつくられ、行員は所属する営業店のお客様の電話番号を共有する。しかし、自分が所属する営業店以外の電話番号には通話やショートメールの送信ができない仕組みだ。「社外(共有)電話帳」は、伊予銀行が従来から行ってきた発信先の管理と親和性が高かったと日髙氏は指摘する。

「フィーチャーフォンで連絡ができるお客様は、営業店の上席者が承認したものに限るという規則がありました。従来は専用のお客様リストを作成していましたが、それと同等の機能を『ProgOffice Enterprise』の「社外(共有)電話帳」で実現することができました」

伊予銀行では、一元管理を徹底するため、行員が各自で登録できる「社外(個人)電話帳」の機能は使用していないため、画面にも表示されないようにしている。

行内の電話番号は「社内電話帳」に登録されている。これもクラウドサービスで一元管理できるため、異動があっても電話帳のマネジメントが容易だと栗田氏は話す。

株式会社タツノ 様

ソリューションとその成果

将来にむけたICT活用のプラットフォームとして期待

いま栗田氏は、スマートフォンとWi-Fi、ノートパソコンを組み合わせ、いつでも、どこでも、仕事が行える環境の構築に取り組んでいる。セキュリティ上の理由から、ノートパソコンからインターネットに接続はできないが、Wi-Fiでどの部屋からも行内システムに接続できる。これに、インターネットを閲覧したり、お客様とショートメールのやりとりも行えるスマートフォンを加えた3点セットが、新しい業務環境を支えると栗田氏は強調する。

「将来的にはインターネットメールやグループウェアの活用なども『ProgOffice Enterprise』を入口として、スマートフォンだけでも完結できるようにしていきたいですね。我々はスマートフォンを導入したばかりで、ようやくBPRのスタート地点についたばかり。営業力の強化という面でもモバイルの活用は必須です。たとえば営業店の統合が都市部で行われても、営業力を落とさないために、人間としてのソリューション力を高めながら、デジタルの面での競争力も負けないようにしていかなければいけないでしょう」

伊予銀行のBPRは、スマートフォンと「ProgOffice Enterprise」の組み合わせで一気に加速した。情報漏えいや不正使用を防ぎながらデジタルを積極的に活用する伊予銀行のBPRは、金融業界に幅広くインスピレーションを与え続けるだろう。

お客様プロフィール

 お客様プロフィール
設立 1878年3月15日
事業概要 「いつでもどこでも、簡単・便利」にご利用いただける銀行として「デジタル」を徹底的に活用し、利便性を追求するとともに、行員は「人」にしかできない肌理細かな価値提供に専念する。 
従業員数 3,029名 ※2018年3月31日現在
URL https://www.iyobank.co.jp/

※2019年6月1日現在

※ ページに記載した会社名、製品名などの固有名詞は、一般に該当する会社もしくは組織の商標または登録商標です。