伊藤忠エネクス株式会社

概要

伊藤忠グループのなかでも、エネルギーに特化した商社として、1961年に設立された伊藤忠エネクス株式会社。

主たる事業はLPガスなどを主力とする「ホームライフ部門」、ガソリン、灯油といった自動車の燃料供給、自動車関連製品を扱う「カーライフ部門」、事業者向けに燃料、アスファルト、エコ商材などを供給する「産業ビジネス部門」、省エネルギー、電力関連、熱供給事業で快適性と経済性を追求する「電力・ユーティリティ部門」の4つに分かれている。

課題

古くからの慣例が積み重なり、極めて非効率な営業体制になっていた

itcenex_2021伊藤忠エネクス株式会社
執行役員 電力・ユーティリティ部門長
田中 文弥 氏

歴史あるエネルギー商社である伊藤忠エネクス株式会社では、顧客管理や営業管理などを表計算ソフトに頼っていた。また、ワークフローも旧来の仕組みを踏襲していた。そのため、多くの無駄が生じていた。

2021年に電力・ユーティリティ部門の部門長に就任した田中文弥氏は、当時を振り返る。

「まず、顧客管理ができていないのです。営業担当個人のパソコンや共有フォルダにしか情報がない。そのため、お客さまに過去にどんな見積もりを出していたか、どんな契約があったかをたどることが難しい。そんな状態でした。」

ワークフローも煩雑になっていた。見積書を出すだけでも全件上長の承認が必要で、田中氏は当時大量の「単に承認するだけの仕事」をせざるを得なかった。しかも、上がってきた見積書の中身を精査できない。過去の取引データや類似案件のデータを探すことが事実上できなかったからだ。

田中氏は「組織が生きていない」と感じたという。営業担当も多くの不満を抱えていた。申請書類作成で多くのリソースが割かれ、お客さまへの対応に時間をかけられない。営業が仕事のはずなのに、書類を作ることが仕事になっている。

これらの課題を解決するために、田中氏は営業支援システム(Salesforce)を導入、効率化を進めることとした。そこで課題となったのが「データ連携」だった。

解決へのアプローチ

関連するシステムとの連携は多岐にわたり、その間でデータを管理しなければならない

itcenex_2021伊藤忠エネクス株式会社
電力・ユーティリティ部門 統括部長
國府田 和彦 氏

営業支援システムの導入を進めるなかで、課題となったのが「データ連携」だった。営業支援システムは、単体ではその真価を発揮できない。特に同社では、数多くのシステム、データの連携が不可欠だった。

「残念ながら、顧客データは表計算ソフトで管理されていて、いわゆる顧客台帳が存在しなかったのです。そのため、当事業部での取引がある顧客が、他事業部で取引があるかなど、基本的な情報もわからない。これでは顧客満足は得られないし、営業成果も期待できない。営業支援システムは、CRM・商品・サービスのデータベースと連携していないといけないのです。」

同社の営業支援システムには、「債権管理システム」や「料金計算システム」などのバックエンドシステムとの連携も欠かせない。電力販売は毎月請求が発生する、その料金を計算し請求書を発行、金融機関に連絡する、延滞者へ督促状を発行するなど、さまざまなシステム連携、データの連携が求められた。

しかし、多様なシステム、データの連携が可能なサービスがなかったのが現実だった。結果、営業支援システムは導入が決まったが、データの連携では課題が残っていた。

ソリューションとその成果

汎用性が高いデータ連携ツール「DataSpider Cloud」の導入を決定

itcenex_2021伊藤忠エネクス株式会社
電力・ユーティリティ部門 マーケティング課長
古川 哲郎 氏

同部門のマーケティング課長、古川氏は次のように語る。

「今回のシステム構築のキーワードは連携だったといっても過言ではありません。電力販売では、地域ごとに異なる電力料金をベースに緻密に料金を計算するシステム。電力切り替えで求められる既存電力会社との連携。請求書の発行・送付をお願いしている外部協力会社とのデータ連携など、営業支援システムだけでは業務が完結しません。かつては、これらのデータ連携は個別にシステムをスクラッチして構築していましたが、煩雑になりますし、工数がかかりすぎる。更新するにも個別に作業が発生して、あまりに大変でした。そこで、汎用的に活用できるデータ連携ツールを探すことになったのです。」

その結果、営業支援ツールのシステム構築を支援してくれたベンダからの紹介で、「DataSpider Cloud」が検討されることになったという。

「まず、当時はどれだけの連携が発生するか、正確に把握できなかった。その後のビジネス展開で連携先がどんどん増えていく可能性もあった。そこで、拡張性が高いデータ連携ツールであることが条件でした。また、こういったシステムの連携は当社内では大きなメリットがあるのですが、顧客には見えない部分です。そこに多額の資金を投入するのは難しい。コストをできるだけ抑える必要もありました。サブスクリプションモデルのクラウドツールである「DataSpider Cloud」ならば、スモールスタートすることもできると有力視されるようになっていった経緯があります。」

加えて、NTTテクノクロスは、「DataSpider Cloud」の提供元であるセゾン情報システムのExpertパートナーであり、知識と経験が豊富なこと、Salesforceなどの周辺システムとの連携ノウハウがあり、データ連携の構築においてもシステム構築ベンダを支援できることが生かされ、同社が望むシステムの実現につながったと強調した。

システム概要図

今後の展開

業務効率が大幅に削減、大量にあった承認作業は、システム管理された電子承認に

多くの社内システム、協力会社、取引先とのシステム連携と、それに関係するデータ共有を実現し、同社では営業支援システムが順調に活用されるようになった。その結果、大きく業務が効率化されたという。田中氏は次のように語る。

「大量にあった承認作業は一日数件、日によってはないこともあるようになりました。それだけ、営業担当も申請書類を作る手間はなくなっているはずです。大きな契約の場合はもちろん、承認申請が来るのですが、その際も類似案件やその会社との取引履歴などをすぐに確認できます。また、マネジメント面でも誰がどれくらい働いているのか、無駄なリソースを使っている作業はないか、などが一目瞭然です。導入当初はデータ入力が面倒だ、という声もありましたが、そこはあえて無視しました。やってくれ、と。特例を認めるとせっかくのシステムが使われないシステムになってしまいます。そこは譲れなかった。今では抵抗感をもっていた人も、その利便性がわかったのか、便利に活用しています。」

田中氏、古川氏の両人が声をそろえるのが「システムは導入するだけでは意味がない」という点だ。営業支援システムも、導入しただけで、他システムとのデータ連携がなければ、単なるコミュニケーションツールになり、本来の効率化や営業の高付加価値化には寄与できない。また、システム導入に合わせて、ワークフローなどの社内の仕組みも変えていく必要がある。同社では、データ連携を重視したおかげで、「システム上でほとんどの業務が理解できる状態」ができあがり、効率的な社内の仕組みへの改善につながった。

「相当うまくシステムの活用ができていることは事実で、社内でも評判が広がっています。今後は他部門でも積極的な導入が進むと思います。それを踏まえて、NTTテクノクロス様の助けは欠かせない。今後は、今まで以上に積極的な提案を期待しています。」

同社のビジネスでは、LPガス、石油の事業分野で、まだ十分なCRMシステムが構築されていないという。今回、新規ビジネスである電力事業での実績をもとに、全社へのシステム展開をしたいと語る。

お客様プロフィール

 お客様プロフィール
設立 1961年(昭和36年)1月28日
事業概要 ●ガス販売事業 ●石油製品販売事業 ●電力事業 ●自動車関連事業 ●家庭向けサービス ●熱供給関連事業 ●環境対応事業 ●災害対応
資本金 198億7,767万円
従業員数 単体 663名(出向者163名含む) 連結 5,558名 (2021年3月31日現在)
URL https://www.itcenex.com/ja/

※2021年11月現在