株式会社ダーウィンズ様
オペレーターの全通話音声記録を効率的にモニタリング
~KPI改善に向けた課題の可視化と売上向上効果を立証~
概要
コールセンターBPO 事業によりクライアントへの高い事業収益貢献度で厚い信頼を得ている株式会社ダーウィンズ(以下、ダーウィンズ)は、アップセル率や販売成約率を高めるための業務改善施策の導出やオペレーターの応対品質向上を目的に、音声認識技術と音声データ分析技術の活用を想定した検証プロジェクトを実施。
NTTグループの最先端技術を活用したForeSight Voice Miningを試験導入し、コールセンターで実際に利用することで導入効果を試算した結果、年間商品売り上げが1.5倍、金額で1.2億円増加することを確認した。
課題
大量の通話音声からのサンプル確認ではトークスクリプトの改善が不十分
通販会社などのクライアントからインバウンドでの受注業務やアウトバウンドによる販売推進を担うコールセンターは、ネット時代においても商品を購入するお客様からの生の声を最初に受ける窓口となる。そのため、オペレーターの応対品質が受注獲得やアップセル/クロスセルの成功率を大きく左右するなど、コールセンターの重要度は高い。同時に、コールセンターは戦略的BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)のひとつであり、クライアントは付加価値とROI(投資効率)のバランスを重視し、いかに質の高いコールセンター事業者を選定するかがダイレクトマーケティング成功の重要な鍵となっている。
ダーウィンズの強みは、徹底したオペレーターの教育にある。受電・架電冒頭の挨拶から販売成立まで、緻密に設計されたスクリプト通りにトークを展開するようオペレーターの教育・指導を徹底している。完成度の高いトークスクリプトを遵守させることで経験値やスキルの有無を問わずサービス品質を高いレベルで平準化し、お客様に安心と信頼を感じてもらえるメリットがあるという。
「当社のコールセンターでは、インバウンドならアップセル率やクロスセル率、アウトバウンドならば販売成約率などがKPI(重要達成度指標)の要素となっており、それを上げることが管理者であるSV(スーパーバイザー)の最大ミッションとなっています。もし、KPIが思うように上がらない場合、従来はトークスクリプトの内容をどのように改善するかに焦点を当てていましたが、それはオペレーター全員がお客様にトークスクリプトのアナウンスを実践していることを前提としており、対策としては不十分ではないかという疑問を持っていたのです」と語るのは、新規事業部長 執行役員 佐藤 渉氏だ。
全オペレーターが決められたトークやキーワードを漏れなく伝えているか否かを調べるには、1日に数百件も蓄積する通話記録を個々に聞くしかなく、確認する現実的な手段がなかったと打ち明ける。
解決へのアプローチ
ForeSight Voice Miningを実環境でPoC オペレーターの全通話をモニタリング
そこでダーウィンズでは、音声認識技術と音声データ分析技術を活用し、NTTテクノクロスの分析・コンサルティング業務を専門とするアナリストと共同で分析・仮説立案を行い、2つの視点で仮説・検証にチャレンジしようと考えた。
1つは「応対評価」。トークスクリプトに従った応対をオペレーターが実施しているかを調べるため、お客様との全通話を対象にモニタリングし、内容を可視化・分析する。それにより、KPI停滞の原因を把握すると同時に、オペレーター個別の教育・指導も効率化できると仮定した。
もう1つは「優良事例の導出」。受注成績上位者の通話内容からノウハウとなる応対方法や出現頻度の高いフレーズを抽出する。それをトークスクリプトに反映・改善し、全社で共有できれば、受注成功率の向上が可能なはずだという仮説を立てた。
問題は検証に使用するシステムだが、佐藤氏がかねてより注目していたのが、NTTグループのAI技術「corevo」をベースにコールセンターAIソリューションとして開発された「ForeSight Voice Mining」だった。そこで、ダーウィンズのコールセンターに「ForeSight Voice Mining」を設置し、仮説検証を実施することとした。 「ForeSight Voice Miningは世界最高レベルの音声認識技術とVOC(顧客の声)分析に特化した機能がリアルタイムに連携しているので、検証作業が大幅に効率化できると考えました」(佐藤氏)
検証は、2018年9月~12月を期間とし、東京・水道橋コールセンターの10席をピックアップ。複数の業務に対応するシェアード担当オペレーターを対象に、インバウンドとアウトバウンドの両面で実施した。
「応対評価」の検証では広告を見たお客様からの受電を対象とし、お試し商品を申し込んだお客様に本契約である定期購入を促す過程で、アップセルや切り返しに必要なキーワードが出現しているか通話内容から分析した。
一方の「優良事例の導出」の検証では、受注成績上位者と受注下位者の各通話集合を偏り単語抽出機能で比較し、上位者に出現頻度の高い特徴的な単語と、その単語を含む提案フレーズ(効果的なセールストーク)を抽出。双方の検証過程で対象となった通話数は延べ3万4000 件にも達したという。
検証の結果、「応対評価」については、トークスクリプトの準拠状況を把握するモニタリング効率が従来のやり方に比べ数倍に向上したことに加え、トーク未実施の課題が可視化された。業務指導が必要な通話の抽出と問題箇所の特定が容易になり、SVの業務負担の軽減に貢献した。また、対象オペレーターに対して定量的な評価を元に公平性をもって指導できることから、オペレーターの納得感を高めることにも貢献した。
「優良事例の導出」においては、受注成績上位者から効果的な提案フレーズやセールストーク例を数多く収集することができ、それがトークスクリプトに反映されれば、実際の売上向上にも役立てられる可能性があるという。
ソリューションとその成果
年間売上額が1.5倍となる1.2億円の売上増を想定 オペレーターのモチベーションも向上
さらに、年間売上を想定した効果の試算もおこなった。
その結果、インバウンドとアウトバウンドの合計で、年間約1.2億円の売上増が試算された。実際に成績が向上したため、社内のモチベーションも向上したという。
「このアップ率は通常通りのオペレーションではまず考えられない数字です。ForeSight Voice Miningの活用により、トークスクリプトの内容を変えるよりも、まずは全オペレーターにトークを徹底してもらう指導が最も効果的であることや、優良事例からノウハウを導出して横展開すれば売上向上に貢献できることなどが確認できた意義は非常に大きいと思います」と佐藤氏は評価する。
ダーウィンズと同じサービスを展開しているコールセンターは数多くあるが、根本の悩みは共通していると思われる。今回の検証結果は、今後通信販売業界やコールセンター業界にとって注目すべき重要な指標となるのではないだろうか。
お客様プロフィール
設立 | 2007年11月13日 |
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事業概要 | 通信販売企業向けコールセンター事業を基盤とした総合ダイレクトマーケティング支援カンパニー。 札幌、徳島、東京・水道橋、立川に自社コールセンターを持ち、膨大な支援実績に基づくデータドリブンなマーケティング設計を強 みとする。 短期間での高い売上創出を生み出すアウトバウンドのパイオニアとしての実績と、高いアップセル率やCS重視のカスタマー系業務を実現するインバウンドの接客品質で、延べ400 社を超えるクライアントのマーケティング活動を最前線で牽引してきた。 |
従業員数 | 600名(内、520名はコールセンターアルバイトスタッフ) |
URL | https://www.darwinz.jp/ |
※2019年6月現在