概要

Webサイトや携帯電話、スマートフォン向けに「いつもNAVI」ブランドを展開している株式会社ゼンリンデータコムは、地図情報を活用しながら施設検索やルート検索、渋滞情報など様々な地図関連サービスを提供している。そんな同社が新たに海外版の地図情報サービス「いつもNAVI[海外]」を企画したのが2010年3月のこと。このプロジェクトにおいて、システムの基本設計からモバイル・アプリケーションの開発、UI(ユーザインタフェース)設計など開発工程全般を担当したのがNTTソフトウェアだ。

課題

新たに企画された新サービスのプロジェクトがスタート

【NTTソフトウェアを選んだポイント】
  • 要件定義の段階から、一緒にアプリケーションの実現を進める提案力
  • 携帯電話やスマートフォンなどモバイル・アプリの開発経験が豊富
  • サーバからモバイル・アプリ、UI設計まで含めた総合的な開発力
  • NTTグループとしての安心感
  • コンセプトが同じプロジェクトの経験があり、不安感を払拭


膨大かつ正確な地図情報を駆使して、人々の行動に必要な情報を様々な形で提供している(株)ゼンリンデータコム。情報が溢れている時代だからこそ「新たなコンパス」となるサービスを提供することを企業ビジョンに据え、「いつもNAVI」ブランドでWebサイトや携帯電話、スマートフォン、PNDなどあらゆる情報端末に向けて地図情報及びナビゲーションサービスを展開している。また、「ピンポイント天気」をはじめ、「全国ご当地グルメ」や「ハイキングガイド」、AR(拡張現実)で現在地周辺の情報を表示する「直感ナビ」など、地図情報と連携した便利なサービスも展開、幅広いユーザからの支持を集めている。

株式会社 ゼンリンデータコム 高橋 完爾氏
そんな中、NTTドコモの携帯電話向けにプリインストールされる海外版の地図情報サービス「いつもNAVI[海外]」が2010年3月に企画され、そのための開発プロジェクトが立ち上がることになった。
「Webサイト上で海外向けの地図情報を先行して提供していましたが、携帯電話にプリインストールするアプリケーションとしては初めての試みです。」と語るのは企画・制作本部 サービス制作部 副部長の高橋完爾氏だ。

解決へのアプローチ

モバイル向けの豊富な実績とノウハウを高く評価

構想が持ち上がった当初は、自社で開発を行うことも検討した高橋氏。しかし、プリインストールが前提だったことでカットオーバーまでわずか1年あまり、短い開発期間で作り上げるには、厳しい面もあったという。
「NTTドコモさんとの開発経験が少なく、ノウハウが不足していたのが正直なところです。」と高橋氏は当時の課題を振り返る。そこで協力を仰いだのが、同じNTTグループの中でもモバイル向けのアプリケーション開発に関して豊富な実績を持っていたNTTソフトウェアだった。
「以前も別の携帯向けアプリケーションでご協力いただいたことがあり、経験とノウハウを持っていることは十分理解していました。安心感のある開発パートナーとして、すぐに頭に浮かんだのを覚えています。」


そこで、システム全体の基本設計からサーバ及びアプリケーション開発、UI設計など広範囲に渡ってNTTソフトウェアが関わることになったという。

高いプロジェクト遂行能力と開発における総合力を評価

「いつもNAVI[海外]」は、日本で提供している地図と同様の見映えや日本語の注記を採用することで地図の分かりやすさを追求し、海外で通信料を極力発生させないよう、事前にSDカードへ各種情報がダウンロードできる仕組みを採用している。2012年1月時点では22カ国40都市の地図・スポット情報を提供しており、世界約130の国と地域の基本情報が収録、登録されているスポット情報は1万5000件にも及ぶ。事前にダウンロードした地図情報とGPSの測位情報によって自分の位置をプロットすることでルート案内も可能だ。また、「いつもNAVI[海外]」だけで海外旅行できるよう工夫されており、スポット情報や乗換案内をはじめ、通貨計算機能やお天気情報、トラベル英会話など、旅先で困り事が解決できるような機能が豊富に実装されている。

「いつもNAVI[海外]」

ソリューションとその成果

試行錯誤を繰り返し、より使いやすいUIを実現

株式会社 ゼンリンデータコム 吉田 圭佑氏
開発におけるポイントは、その使いやすさへのこだわり部分だろう。誰にでも直感的に操作できるようサービスを作ることはモバイル・アプリケーションにとっては生命線。具体的な指標がない中でも、一緒になって仕様を固めていってくれる心強いパートナーとしてNTTソフトウェアを高く評価しているという。
「無理を言ってプロトタイプを作ってもらい、直感的に使えるよう現地に出向いてフィールドテストを繰り返しました。開発担当の方にも現地に同行いただき、大変感謝しています。」と語るのは同本部 サービス企画部の吉田圭佑氏だ。GPSの測位テストも含めて数カ国を訪問し、ユーザの立場に立ったUI設計にこだわり、試行錯誤を繰り返しながらその使い勝手を検証していったという。


なお、フィールドテストによって新たに追加した機能はたくさんある。
「行きたい場所の地図を見せても、現地の言葉でないと当然理解できません。そこで、日本語と現地の言葉を併記するようにしたり、施設を指し示す矢印をマップ上に追加したりなど、いろいろな機能追加をお願いしました。通貨計算機能も当初はなかった機能です。ユーザの使い勝手を最大限考慮したとはいえ、NTTソフトウェアさんには無理ばかりお願いすることに。」(吉田氏)


もちろん、機能追加があっても納期がずらせない状況に変わりはない。そんな中でも、仕様追加などに柔軟に対応しながら遅延なくカットオーバーまでこぎ着けることに成功した。NTTソフトウェアのプロジェクト遂行能力はもちろん、「各機種が持っている性能の限界まで引き出すアプリケーションの設計ができたのは携帯電話を知り尽くしているからこそ」と高橋氏は高く評価している。
他にも、アプリケーションを配信するサーバのサイジングやコンテンツプロバイダとのAPI連携、負荷を考慮したネットワーク設計、端末アプリケーションのUI設計から開発まで、モバイル端末向けのアプリケーション開発における環境構築すべてを総合的に任せることができた点も評価ポイントだと高橋氏。


「想定ユーザ数を伝えて実際のサーバ環境の設計から構築までをお願いしました。様々な種類の膨大なコンテンツをバックヤードで効率的に処理できるようにサーバ構築を行っただけでなく、データ量やスクロールなどの操作性を加味してFlashを提案して頂くなど、限られた開発期間の中で高い品質のアプリケーションを提供いただけました。」
と高橋氏は満足げだ。

「システム概要図」

また、モバイル端末向けの開発につきものなのが機種依存の問題だ。今回も60を超えるモバイル端末の検証を行い、サービスに影響がないよう細かくチューニングされている。
「カットオーバー間近に発覚した問題もありましたが、期待通りのスピード感で対応いただけました。無事に納期通りに稼働させることができてひと安心です。」と吉田氏。

今後の展開

さらなる端末への対応と対応エリアの拡大を目指す

今後について高橋氏は、さらなるモバイル端末への対応をはじめ、スポット情報の追加などサービス拡張を進めていくという。
「すでにスマートフォンへの移植は終わっていますが、さらに携帯電話も含めたモバイル端末へ対応していきたい。」と語る。スポット情報についても、例えばハワイにあるアラモアナショッピングセンター内の施設地図を提供するなど、特集的なスペシャルマップを今後も追加していく予定だ。サーバサイドの機能拡張も含め、今後もNTTソフトウェアに協力をお願いしたいと抱負を語っていただいた。

株式会社ゼンリンデータコム (右)高橋 完爾氏、(左)吉田 圭佑氏

お客様プロフィール

 お客様プロフィール
設立 2000年4月13日(平成12年)
事業概要 各種モバイル端末向けの地図情報検索・ナビゲーションサービスを中心として、付加価値の高い地図情報サービスや地図ソリューション事業を展開している。サービスの提供先は、コンシューマーから企業ウェブサイト、主要なポータルサイトにおよび、同社のサービスの品質と信頼性は高く評価されている。

■モバイル端末向け事業:携帯電話・アンドロイド端末・iOSの3社での地図情報検索およびナビゲーションサービスの展開
■ネットナビ事業:コンシューマ向け地図情報サービス及び付加価値サービスの提供、主要ポータルサイトへの地図・コンテンツおよびサービスの提供
■地図ソリューション事業:PCやモバイル上での地図ASP、開発ソリューションの提供
資本金 17億8,306万円
従業員数 154名(2011年4月1日現在)
URL http://www.zenrin-datacom.net/
株式会社ゼンリンデータコムの吉田圭佑様の「吉」が、常用漢字でないため、本文中は、常用漢字の「吉」を利用させていただいております。

※2012年3月現在