背景:オムニチャネルの顧客体験を見据え、変化に即応するCRMへ

WOWOWがSalesforce導入を決断した背景には、従来のCRMの限界があった。20年近く稼働してきた独自システムは業務に最適化されていたが、サービスの多様化と進化に迅速に対応するには課題があった。放送中心から配信への転換、イベントやファン交流の強化など、エンタテインメントサービスの幅を広げるなかで、顧客対応の迅速化とチャネル拡張を見据えた新しいCRM基盤の構築が必要となった。


選定:ファクトに基づき論理的にSalesforceとNTTテクノクロスを選定


株式会社WOWOW
デジタル戦略局
ビジネスソリューション・ユニット長
神谷 徹 氏

多くのエンタープライズ向け製品を比較検討した結果、Salesforceが選ばれた。価格、柔軟性、ローンチ後の運用コストを定量的に評価し、客観的なデータに基づいた判断を下した。市場の最先端を走るSalesforceの柔軟性と拡張性は、WOWOWの多角的なサービス展開に最適と確信した。

開発パートナーには、NTTテクノクロスを選定。複数の開発ベンダーに対して、客観的な基準を設けて比較することで、良い意味でドライに選定を行った。プロジェクトを主導した神谷氏は「プロジェクト計画書を綿密に作っていただき、完成までの道筋が最初のタイミングで明確に見えた。提案に来てくれたエンジニアの方がとても優秀で、安心して任せられると確信した」と振り返る。


開発:当事者意識がプロジェクト成功を加速

 プロジェクト推進にあたっては、最初期から各ステークホルダの視点を取り入れ、包括的なアプローチで進められた。神谷氏は「プロジェクト初期段階からの関係者の参画により、それぞれがプロジェクトを『自分ごと』として捉え、積極的に関与している」と語る。

—主なプロジェクト参画部門—

• カスタマーリレーション部:顧客接点を担当し、日々の運用改善を検討
• デジタル戦略局:社内システムとコールセンター運営に必要なシステムを検討
• WOWOWコミュニケーションズ:コールセンターの実務運用を担当


株式会社WOWOW
マーケティング局
カスタマーリレーション部 チーフ
櫻内 徹 氏

Salesforceの導入パートナーとして選ばれたNTTテクノクロスは、知識差があるなかで、運用メンバーへの丁寧なフォローと知識支援を行い、コミュニケーションでの認識のずれが生じないよう細心の注意を払った。WOWOWコミュニケーションズの大田氏は「NTTテクノクロスがユーザーに分かりやすい言葉で技術を翻訳し、フォローしていただけたことで、安心してプロジェクトに入っていくことができた」と語る。
神谷氏は「プロジェクトを着実に推進してくれた」と高く評価している。業務デザイン・改善を担う櫻内氏は「一つひとつの課題に対し、API連携を含む複数の開発パターンを提案し、最適な解決策を選びやすい環境を整えてくれたことで、意思決定がスピーディーに行えた」と評価している。


成果:業務効率化と継続改善の仕組み

コールセンター業務をSalesforce Service Cloudへ移行

2024年6月に開発を完了。業務への影響を最小限に抑えつつ、Salesforceによるリプレイスが完了した。櫻内氏は「新システムの導入直後、一時的な顧客応対処理時間の増加はあったものの、全ステークホルダーによる課題抽出とNTTテクノクロスの迅速な改善により、速やかに元の水準に回復した」と語る。従来のシステムにはなかった、CRMに特化した情報の一元化やダッシュボード機能の活用により、データ抽出や分析が容易になり、管理者の負担も大幅に軽減された。大田氏は「オペレーターがセルフチェックを通じてミスを早期に発見できる仕組みも整備され、全社単位、チーム単位で業務効率を改善する仕組みが整った」と振り返る。



株式会社WOWOWコミュニケーションズ
大田 大志 氏

ローンチ後も継続的な改善が行われており、四半期ごとに新機能が追加されるなど、アジャイルなアプローチで進化を続けている。具体的には有人チャットなどの外部ツールとの連携開発を行い、応対データをSalesforceに一元化、分析や応対への活用など今後の拡張を見据える。システム改善を担う藤田氏は「ユーザー部門が常に打ち合わせに参加している点が、過去のシステム構築・運用と大きく異なり、より高品質な仕組みの実現につながっている」と語る。細かな改善を通じ、若手のオペレーターからは「以前のシステムより、Salesforceのほうが使いやすい」「追加改修でより使いやすくなった」という声が上がっている。


展望:AIと最新技術を活用した次世代顧客体験の創出


株式会社WOWOW
デジタル戦略局 チーフ
藤田 大志 氏

WOWOWは、さらなる顧客体験の向上を目指し、ボイスボットなど他ツールとの連携を進め、リアルタイムに情報を参照しながら対応できる環境の構築を目指す。また、ビデオ通話機能のPoC(概念実証)にも取り組んでいる。「AIやビデオ通話機能などを活用して、複雑な応対の解決率を向上し、顧客満足度を高めていきたい」(櫻内氏)という意気込みだ。特にAIのサポートによる応対品質向上に期待しており、情報をまとめてレコメンドすることで、オペレーターをサポートする計画を進めている。

SalesforceのメンテナンスやUI変更については、NTTテクノクロスからのスキル伝授により内製化を推進し、センター側でスピード感を持って対応できる体制を整えつつある。顧客体験と従業員の働きやすさを両立させるため、柔軟な機能実装と継続的な改善活動を継続する。


総括:顧客体験のさらなる進化へ向けて

WOWOWのSalesforce導入プロジェクトは、急速に変化するエンタテインメント業界のなかで、顧客サポートの品質向上と業務効率化を実現するための重要な一歩である。NTTテクノクロスのプロジェクト管理能力と技術提案、そして各部門の目線に立ったコミュニケーションが、プロジェクトの成功を支えている。未来に向けたAI活用やビデオ通話機能の実装など、さらなる進化を遂げるこのプロジェクトは、今後の顧客体験の向上に大きな影響を与えるだろう。


お客様プロフィール

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株式会社WOWOW

URL: https://corporate.wowow.co.jp/

設立: 1984年12月25日

従業員数:312名(2024年3月31日現在)

概要