概要

 ランプやレーザーなどの産業用光源をはじめ、 世界トップシェアを誇る様々な光製品を提供しているウシオ電機株式会社(以下、 ウシオ電機)。同社は、ファクトリーオートメーションによる生産性・品質向上とともに、製造現場の見える化など情報活用によって業務改善のPDCAサイクルを生み出すプロジェクトを進めている。 業務ごとに管理されてきたExcelや紙によるデータをDWHに集約し、 NTTテクノクロス株式会社(以下、 NTTテクノクロス) が販売するブラウザベースのBlツール「Yellowfin」で分析し、 現場の改善活動を後押しする取り組みを継続的に行っている。

課題

製造現場の問題や改善活動の効果を見える化し、気付きが得られるデータ分析基盤が必要に

ウシオ電機株式会社 IT戦略部門 部門長
須山 正隆氏

 1964年の創業以来、光をあかりとしてだけではなく、エネルギーとして利用・応用し、新しい光市場を創出することを事業方針に掲げるウシオ電機。産業の最先端分野で求められる様々な光製品を提供しており、独自の技術によって、半導体製造で用いられる紫外線ランプ、プリント配線基板用露光装置、シネマ映写機用ランプといった数多くの世界シェアNo.1製品を生み出している。

 同社では、現場にあるデータを見える化し、問題検知、原因分析、対策実施、効果確認というPDCAサイクルを効率的に回す環境を構築すべく、データ分析基盤構築プロジェクトを2016年にスタートさせた。現場には多くの情報が存在したものの、紙やExcel、個別システムに分散し、一元管理されていなかったとIT戦略部門 部門長 須山 正隆氏は当時を振り返る。

 「製造現場では、従来から生産性・品質向上のための活動を続けています。しかし、情報が散在していると、改善活動に向けた情報収集や分析に多くの時間がかかり、問題検知と原因究明が遅れ、対応が後手に回ることもあります。これではPDCAサイクルを素早く継続的に回すことができない」。

 そこで、データ活用の目的、収集データと評価指標、担当者の役割とアクションなどPDCAのシナリオを精査し、IT化による情報収集から分析までのプロセスの効率化とPDCAサイクル定着に向けたプロジェクトをスタートさせた。具体的には、製造実績や品質情報や4M変更情報、設備の稼働実績やプロセスデータなど、現場に散在している情報を収集し一元管理する仕組みとともに、データ分析基盤の構築に取り掛かることになった。

業務改善のPDCAサイクルを支援するための先進的な機能に注目

 同社がデータの分析結果やレポートを現場に見せる化するソリューションとして注目したのが、NTTテクノクロスが販売するBIツール「Yellowfin」だ。

 「BIツールの分析レポートは製品ごとに一長一短があり、選定時の大きな優劣にはなりませんでした。また、我々は単にレポートを作りたいわけではなく、業務改善のために、現場で働くメンバーのPDCAサイクルを支援できる環境を構築したいと考えていました。そこで注目したのが、Yellowfinの先進的なコラボレーション機能でした」と須山氏。分析結果を関係者で議論する際に必要なコミュニケーション機能、その過程で発生するタスクの管理機能など、関係者同士の共同作業が行いやすい機能により、問題解決のための効率的な方法を提供してくれることを高く評価したという。

 また、Yellowfinが描くロードマップも高く評価したポイントだという。「例えば、言葉やデータだけでなく、より効果的にインサイトを共有するストーリーテリングは、他のユーザとのコラボレーションの促進に役立ちます。また、大量のデータに煩わされることなく、パーソナライズされた重要な情報のみを提供してくれるシグナルは自動ディスカバリーに優れています。その他にも、自動インサイトや自然言語クエリーなど、Yellowfinが目指す将来像にも興味を持ちました」と須山氏。

 実際には、レポーティングの基本機能、表現力や操作性、データソースへの対応状況、高度な分析機能、パフォーマンスなど、様々な項目を比較した上で、同社が考えるデータ分析のための基盤としてYellowfinは高く評価された。なお、今回、DWHはAWS上のRedshiftを採用しており、その導入支援を行うNTTテクノクロスについても評価を寄せている。

 「データ分析基盤として利用するAWSに関する知見も実績も豊富で、パートナーとしても高く評価しました。Yellowfinそのものだけでなく、導入支援いただくパートナーとしての実績も考慮した上で選択したのです」と須山氏は語る。

システム概要図 BIツールYellowfinによる製造現場の導入事例

現場主導で情報を活用できる基盤づくりにYellowfinが大きく貢献

 播磨事業所の製造ラインで生産性・品質向上を目指して、Yellowfinの活用をスタートさせた同社。今では、製造現場からの要望に応える一方、売上など損益分析に利用する経営企画部、ロスコスト削減や品質向上を目指す品質保証部など、他部門への展開も積極的に行っている。現在は200名ほどのユーザがYellowfinの各種分析レポートを利用しており、IT戦略部門ではDWHの拡充やYellowfinの教育活動を進めている。

 「IT戦略部門では、教育カリキュラムやお試し用DBだけでなく、Yellowfinユーザのためのポータルサイトを用意し、マニュアルやノウハウを含めたTipsはもちろん、社内の様々な活用事例やユーザ間で情報交換するためのコミュニティサイトを提供しています。今では、ユーザ自らレポート作成するケースが増えています」と須山氏。

 Yellowfinによるデータ分析基盤を整備し、工程ごとの生産状況や検査結果、材料ロットや設備号機ごとの不良率などを表示する大型ディスプレイを製造現場に設置。その結果、製造ラインにおける人員や設備、材料などのリソースコントロールが効率的に行えるようになった。また、製造設備から収集した情報をもとに品質に影響を与えるファクターを傾向管理し、閾値を設定することで、品質異常が発生する前に製造設備の調整が可能になるなど、製造現場ごとに様々な効果が表れている。

ウシオ電機 播磨事業所
ウシオ電機 播磨事業所

 「データが一元管理され、各工程のデータが紐付けできるようになれば、Yellowfinのレポートやダッシュボードを活用することで、トレーサビリティ確保が実現でき、工程内不良の原因調査や影響範囲の見極め、品質安定化に向けた分析や対策立案に役立つ情報の確保も容易になります。ロスコスト削減、生産リードタイム短縮、設備管理の高度化にも有効です。また、御殿場事業所ではクリーンルームに配置したセンサから環境データを収集し、品質管理を徹底するとともに、工場内の電力センサデータと紐づけて電力の最適化・削減にも取り組んでいます。これまでは経験と勘に頼ることもありましたが、現場の知見を活かしながら、情報をもとに気付きを得られる環境が整備できました。レポートに基づいて素早く判断し、改善のアイデアが現場から出てきている状況です」と須山氏は語る。

 Webブラウザだけで分析できるWebアーキテクチャを採用したYellowfinについては、使いやすさの面で評価の声が挙がっている。「以前、社内で導入していたBIツールはレポート作成に高度な知識が必要だったため、ユーザ部門でレポートを作成できず、改善活動につながらなかった経験があります。その点、Yellowfinは直感的に操作でき、表現したいことがすぐに実践できます。全体的な評価として、使いやすさは大きなポイントの1つです」と須山氏は評価する。

 データ分析基盤の提案から運用定着支援までを手がけているNTTテクノクロスに対しては、「データ分析基盤の導入や展開は、その段階によって必要なエンジニアのリソースや進め方が異なります。このことを考慮し、リソースをコントロールしやすいようプロジェクトに合わせた体制を柔軟に用意いただきました。Yellowfinのノウハウ提供も含め、今後も協力いただきたいと考えています」と須山氏は評価する。

国内外のグループ会社にもYellowfinを展開し、グローバルでの生産性と品質の向上に役立てたい

 今後について、同社の製造現場で構築したデータ分析基盤を海外や国内のグループ会社に展開していくことで、グローバルで品質改善や生産性向上に役立つ活動につなげたいという。

 「海外生産拠点でもペーパーレス化を進め、日本でのノウハウを活かして製造実績や品質情報を管理するシステムが稼働しました。国内のグループ会社の生産拠点への展開も予定しており、グローバルでのデータ分析基盤としてYellowfinを活用し、生産性・品質向上を推進していきたい」と須山氏。また、既存市場での競争力強化、そしてウシオの強みを活かした新規市場開拓・新規事業創出に向けた迅速な経営判断にもYellowfinを活用していきたいと須山氏は語った。

お客様プロフィール

社名 ウシオ電機株式会社
URL https://www.ushio.co.jp/jp/
設立 1964年3月
資本金 195億5632万6316円
従業員数 単体1,590名 / 連結5,847名(2018年3月31日現在)
事業内容 光応用製品事業ならびに産業機械およびその他事業
本社所在地 〒100-8150 東京都千代田区丸の内一丁目6番5号 丸の内北口ビルディング

※2018年3月現在