概要

新鮮な生野菜をたっぷりと使ったサンドイッチで知られる日本サブウェイ。1991年にアメリカのSUBWAY社とマスターフランチャイズ契約を締結し日本に上陸した後、国内限定メニューを販売するなど工夫を重ねながら、 大都市のオフィス街を中心として着実に人々の間に浸透していった。とりわけ近年は強いヘルシー志向も追い風となって出店ペースが急上昇、それまでの都市部だけでなく、郊外の駅ビルやショッピングモールなどにも積極的に店舗を展開している。現在、北海道から沖縄まで全国に約480店舗を構えており、そのうちの約460店舗がフランチャイズ加盟店となっている。

こうした日本サブウェイの成長を支えているものの1つがITだ。なかでも今年春より稼働を開始したPOS集配信システムとPOS分析システムは、各店舗や地域ごとの売り上げ状況を詳細に把握し、分析できるようになっており、本社スタッフや店長(フランチャイズ・オーナー)にとって日々のビジネスの方針を固めるうえで欠かせない存在となっている。

課題

急成長に追いつけなくなったPOS情報システム

更新以前のPOS集配信・分析システムは、まだ店舗が90店ほどの時代に構築されたもので、150店舗を超えたあたりからキャパシティオーバーの兆候が表れていた。店舗からのPOSデータ収集処理が正常終了せず、関連システムへのデータ配信が行えなかったり、集計分析システムのデータ更新に時間がかかり更新処理が終わらなかったりというように、業務にも支障が生じる恐れがあった。さらに200店舗を超えた頃になると、翌々日まで社内全体の売上が把握できないという状況となっていたのである。

 また、最前線で働く店長は、日々の売上を時間帯ごとに分析して明日の発注内容やアルバイトの人数などを決めなければならないが、自身の勘と経験だけを頼りにする店長も多かった。一部の店長は帳票の生データからエクセルを使って売上状況の把握や分析に活用していたものの、ほとんどはデータを開いたこともなかったのである。

 日本サブウェイの取締役で営業統括本部長を務める庵原リサ氏は、「社内でも、部門などによりKPI 経営管理指標)がばらばらで、全社としてどのKPIを追うべきなのかが曖昧でした。店舗数の急成長で立地も広がっており、かかわるフランチャイズ・オーナーも増えているなか、KPIを統一して“共通言語”を使って皆で同じ目標を追いかけられるようにしなければいけないと判断しました。そこで、見たい数字を決めて、それを誰でも素早く簡単に見られるようなシステムへと更新する必要があったのです」と語る。

NTTソフトウェアの「BIコンサルティング フランチャイズ利用モデル」の進め方

解決へのアプローチ

KPI再設定から、NTTソフトウェアと二人三脚でプロジェクトを遂行

こうして2011年、当時マーケティング本部長だった庵原氏のもと、新システムへの更新プロジェクトがスタートした。ベンダーおよびソリューションの選定に当たっては、店舗のPOSシステムを提供する東芝テック社に相談。様々なソリューションが提示される中で紹介されたのが、NTTソフトウェアと同社のBIソリューション「InfoCabina」だった。その後はNTTソフトウェアのスタッフもプロジェクトメンバーの一員に。時には店長へのヒアリング等も行いながら、日本サブウェイの成長戦略とプロジェクト全体の意図を理解したうえでのシステム提案・構築やKPI設定のコンサルティング等を実施していく。

 「システムの設計が悪いとアウトプットの質にも問題が生じてくるので、NTTソフトウェアにはKPIの設定を含めていろいろとアドバイスをもらいました」と庵原氏は言う。
 また、日本サブウェイ 営業統括本部 コーディネーション部 主任、梅原康史氏は、「NTTソフトウェアには我々と一体となってプロジェクトに挑んでもらえました。システムの提案だけでなく、KPIの数字の意味合いもよく理解してくれたうえで包括的に相談に乗ってくれたので、とても心強かったですね」と評価する。

 NTTソフトウェアの手によって、POSデータはリアルタイムで蓄積し、常に最新のデータが揃っているようになった。また、ユーザーごとに権限を与えて、それぞれ見られる情報の範囲も設けた。
「ユーザーへのヒアリングと調整が一番大変でした。皆が使う帳票となると、あれも見たいこれも見たいと言い出しますからね。営業スタッフに関しては全員から話を聞きながら、納得してもらえる結果となるよう調整に努めました。店長については、自分のやり方に自信を持っている人たちが多いので割とスムーズでしたね」(庵原氏)

システム構成図

今後の展開

成功事例を共有し、全体の底上げを目指す

日本サブウェイ内では、POS集配信・POS分析システムの更新による効果が明確に表れているようだ。

庵原氏は、「皆が同じ数字を見るようになったので、『このレポート見た?』といった会話が聞こえてくるようになりましたね。売上が下がるなど何か問題が起きた時に、具体的な施策へと落としこんで対応しやすくなったのも、同じ数字を見ていてこそでしょう」と述べる。

現在日本サブウェイが力を入れているのが、成功事例の共有化だ。例えば、“こういう立地の店舗では、どういったことを行った結果、これだけの数字が上がった”といった情報を、システムを通じて誰でも見られるようにしているのだ。このような成功事例の共有によって、全体的な底上げを図っていくことを目指しているのである。

「だいぶ使い方を把握してきたので、多くの人たちがデータをチェックするようになりました。私も今では利用者として使いながら、意見をフィードすることでシステムの改善をしていきたいと思っています。今回のプロジェクトを通じて、一気に投資してシステムを作りこむよりも、使いながら改善していくことの方がより大事だということがわかりましたね」と庵原氏は言う。

現在もNTTソフトウェアの協力のもと、段階的に帳票の利用者や帳票を追加しているという。

日本サブウェイが近い将来の目標としているのが1,000店舗の達成だ。目標に向けて現在、受発注や経理財務など、他のシステムとPOS集配信・POS分析システムとの融合も検討中である。店舗が倍増した時に、一気通貫してコスト削減につなげることで、全社のパフォーマンスを発揮できるような体制を模索しているのである。

消費者が食生活に求める健康志向は今後ますます強くなっていくと見られており、日本サブウェイにとってのビジネスチャンスはまだまだ続くことだろう。その成長をいかに後押しするのか──同社のIT戦略を興味深く見守っていきたい。

お客様プロフィール

 お客様プロフィール
設立 1991年10月16日
事業概要 フレッシュサンドイッチ・チェーン「サブウェイ」の経営およびフランチャイズ展開
資本金 1億円
URL http://www.subway.co.jp/

※2014年1月現在