概要

NTTビズリンクは、会社設立は約10年前だが、事業統合により引き継いだテレビ会議(ビデオ会議)サービスでの実績は通算14年以上を誇る。ISDN多地点接続サービスを皮切りに多様なサービスを提供してきた映像コミュニケーションのプロフェッショナルだ。そして2011年4月、新たにNGN(次世代ネットワーク)を用いた「ひかり電話多地点接続サービス」を開始した。

既存のテレビ会議端末を流用でき、標準画質(SD)なら3分100円を切る低価格を実現した、高品質・クラウド型の画期的なテレビ会議多地点接続サービスだ。その開発に貢献したのがNTTソフトウェアのNGNゲートウェイ「Crossway(クロスウェイ)」だ。

課題

仕様が異なる端末をどう接続するか

テレビ会議オペレーションセンタ
しかし、ひかり電話でテレビ会議をするには、ひかり電話対応テレビ会議端末が必要だ。既存のテレビ会議ユーザーにも利用してもらうためには、ひかり電話未対応の端末からも接続を可能にしなければならない。


また、通常テレビ会議端末は通信プロトコルの標準化により相互接続性を考慮しているが、繋がらないこともある。ひかり電話でどこからでも参加できる柔軟なテレビ会議サービスを実現するためには、異機種同士の接続も実現しなければならなかった。


開発時の苦労を東條氏はこう振り返る。


「現在、NGN(ひかり電話)は日本のみで提供されているので、そこに既存のWorldWideで展開しているメーカのテレビ会議端末をつなげることは非常に困難でした。端末メーカに仕様変更をお願いするなど、いろいろな方法を試しましたが無理でした。2年ほど検討を続けてから、開発は暗礁に乗り上げてしまいました」


そこでNTTビズリンクが相談したのがNTTソフトウェアだった。NTTソフトウェアのひかり電話サービスに対応したIP電話ゲートウェイ装置「Crossway」を使えば、各社の通信プロトコルの違いを翻訳して異機種間の相互接続が可能になるはずだ。NTTビズリンクとNTTソフトウェアの共同開発がスタートした。

解決へのアプローチ

地道なテストで幅広い端末に対応

ところが、「Crossway」で解決できると思われた相互接続だったが、実際はそう簡単にはいかなかった。テレビ会議端末は多種多様であり、メーカや機種によって“方言”の違いもある。NTTソフトウェアでは国内外のメーカの多種多様なテレビ会議端末を苦労して用意し、想定されるあらゆる環境、さまざまな組み合わせのパターンで相互接続テストを繰り返した。ソフトウェアの設計・開発技術だけでなく、NGNなどの最先端の通信ネットワークに関して豊富なノウハウを持つNTTソフトウェアにしかできない、地道で難しい作業だったといえる。



テレビ会議端末の相互接続だけでなく、回線の安定性についての検証も入念に行った。インターネット網が品質保証のない“ベストエフォート”であるのに対し、ひかり電話は“帯域確保型”だ。契約した帯域内で利用している分には安定した映像・音声品質が確保される。しかしテレビ会議の特性として、画面の切り替え時に瞬間的にトラフィックが増加することがあり、それがひかり電話の確保帯域を超えると映像・音声に乱れが生じる。この問題については、NTTビズリンクが14年来培ってきた帯域管理のノウハウと、「Crossway」のチューニングによってクリアする仕組みを構築した。



そして両社の共同開発によって、2011年4月、「ひかり電話多地点接続サービス」がリリースされた。

「サービス構成図」

ソリューションとその成果

NTTグループの経営レベルの会議で活用

ひかり電話多地点接続サービスは、標準画質(SD)が99.75円/3分、HD画質が152.25円/3分という、画期的な低価格で高品質テレビ会議を実現したクラウド型サービスだ。レンタルされるCrosswayを設置することで、企業はMCUを購入することなく、現在使用中の端末を流用して高品質な多地点のテレビ会議サービスを利用できる。

NTTビズリンク株式会社 鈴木 康之氏
「当社で長年提供してきたISDN多地点接続サービスの128kbpsクラスと同じ料金で、格段に高品質なテレビ会議多地点接続サービスを利用できます。古いテレビ会議端末のリプレイスと同時にサービス内容の変更をご検討中の企業様、既存のテレビ会議端末を生かしながら運用コスト削減を図りたい企業様にとって大変有効です」
(NTTビズリンク 鈴木康之氏)


同サービスの導入をすでに決定している企業もあり、また多くの引き合いも来ているという。さらにこのサービスは、NTT(持株会社)が主催しNTTグループ各社が参加して定期的に行われる経営レベルの会議にも使用されることが決まった。通信会社のトップが集う会議で認められたことからも、品質の高さをうかがい知ることができる。



今後の事業展開について、東條氏はこう語る
「このサービスはNGN(ひかり電話)回線にWiFi経由で接続することにより、テレビ会議端末だけでなくスマート端末やタブレット端末とも接続することを考えています。社内の打合せコーナーや専用のテレビ会議端末が無い会議室からも、スマート端末の利点を生かして、ひかり電話多地点接続サービスを利用できるようにすることを現在検討中です。」

お客様プロフィール

 お客様プロフィール
設立 2001年
事業概要 テレビ会議サービス事業、データセンタサービス事業を展開。 NTTコミュニケーションズとNTT東日本、両株主のネットワークや設備などの資源を最大限に活用し、設計から構築、保守・運用に至るまでのトータルアウトソーシングサービスをワンストップで提供している。
資本金 24億5,000万円
従業員数 230名
URL http://www.nttbiz.com/

※2011年11月現在

背景

従量制・安価なテレビ会議へのニーズが高まる

企業がテレビ会議を導入する際は、高価なMCU(多地点接続装置)やテレビ会議専用端末を購入し、専用線やVPNを介して利用するケースが一般的だ。この場合、テレビ会議の利用頻度に関係なくネットワーク費用などの月々の固定費用が発生する。固定費を負担と考える企業にとって、使用した分だけ料金が発生する従量制サービスに対するニーズは高いと考えられる。また昨今では、インターネットを使った安価なテレビ会議・ウェブ会議を導入するケースも増えている。
ただしインターネットを利用すると映像・音声品質が安定しないだけでなく、セキュリティリスクも高くなる。

NTTビズリンク株式会社 東條 弘氏
「当社はテレビ会議の分野では、1997年からISDN回線を使った従量制の多地点接続サービスを提供してきました。ISDNはNTTグループが提供する従量制ネットワークで、他拠点との接続を容易に実施できる、帯域が保証されているため通信が安定している、国内外で幅広く利用されているなどのメリットがあります。
こうしたメリットを活かしつつ、より高速な回線で高品質なテレビ会議を実現するために、NGNを使ったサービスの開発をスタートしました」

NTTビズリンクの東條弘氏は開発の経緯をそう語る。


NGNはNTTグループが提供し、信頼性や安定性を確保しながら、インターネットのような公衆性・経済性も備えた次世代の通信ネットワークである。そのNGNで提供されている安価な従量制・帯域確保型サービスが「ひかり電話」だ。ひかり電話の仕組みを利用すれば、映像・音声品質が高く、セキュリティ面の信頼性も高い、従量制のテレビ会議多地点接続サービスを実現できる。

検討課題と解決策