概要

NTTグループの従業員向け生命保険代理店として発足したテルウェル・ライフアシストは、保険サービス、ライフデザインサービス、福利厚生サポートサービスの3事業を中核としている。保険業務や財形関連、ライフデザイン研修などの業務は、時期によって業務量に差があり、人的リソースの配置に苦労していた。そこで、分業体制で行っていた業務を、すべての従業員がすべての業務を行えるといった「人的リソースの機動的な活用」を目指した。実現の第一歩は、業務の可視化であり、そのためのITシステム導入が経営層のトップダウンで決められた。


ほぼゼロからのシステム開発を行ったNTTソフトウェアは、ユーザの意見を随時、開発に反映していくことで、ユーザが使いたくなるシステムを構築することに成功した。これによって、テルウェル・ライフアシストは、業務の効率化と社内コミュニケーションの活性化を実現させた。

課題

組織変更を機に、トップダウンで導入決定

テルウェル・ライフアシストの業務は多岐にわたる。保険関連の業務では、繁忙期の業務量が通常期と比較して大きく増大する場合があった。従来は繁忙期に合わせて必要な人員を外部から一時的に増員していたが、同社は2009年に業務の効率化、平準化を目的とした組織改正を行った。その際に目標としたのが「相互応援 体制」の構築だ。

株式会社テルウェル・ライフアシスト 総務部長 小林 勲 氏
株式会社テルウェル・ライフアシスト 総務部長の小林勲氏は、「当社の事務処理業務には、意外にも属人的な部分が多かったのが実情です。従来の業務運営では、担当が同じでも互いの業務内容や作業手順を知らないこともありました。業務を標準化することで、業務の属人的な部分を最小化し、人的リソースを都度、最適配置できるようになります」と、システム導入の経緯を説明する。


業務の可視化・効率化の実現には、プロジェクト管理やスケジュール管理など、さまざまなアプローチがあり、多様なパッケージ製品が提供されている。しかし、ITシステムの活用方法と導入効果を熟知している同社の経営トップは、あえて「タスク管理」を中心にしたシステムを選択した。これは業務改善の第一段階として、属人性の高い業務を見える化し、標準化するためには個々のタスク情報の集約が必要なためである。


業務の可視化によるもう一つの目的は、複数業務の経験を得ることによる従業員のスキルアップである。例えば、同社の基幹事業であるライフデザイン業務では、デスクワークではなく、顧客から電話相談を受けるような対人サービス業務もある。社員の多様な業務経験が、顧客満足の向上、営業力の強化、そして従業員満足の実現につながることが期待されたのである。

テルウェル・ライフアシストの課題

解決へのアプローチ

ユーザとベンダが一体となって開発を進める

テルウェル・ライフアシストがタスク管理システムに求めた要件は、日単位での作業の予定実績管理機能を中心として、作業の着手・進捗状況を共有することで、業務量の平準化が実現できるシステムであった。

株式会社テルウェル・ライフアシスト 経営企画部門 企画担当 長崎 誠 氏
総務部経営企画部門企画担当の長崎誠氏は、「既存のパッケージ製品には満足できるものが見つかりませんでした。操作方法はもちろん、ボタンの名称ひとつとっても、分かりにくいと感じました。新しいシステムを導入する際には、ユーザの心理的な抵抗もあります。本当に活用されるシステムにするためには、ゼロから開発する必要がありました」と当時の状況を打ち明ける。


「ユーザが活用し、便利だと実感してもらえるシステム」を目指した今回のシステム開発は、従来の手法とは異なるものになった。「まず、大まかな希望を伝えて、サンプル画面を作りました。それを、社内に設けた開発委員会のメンバーに実際に操作してもらい、使い勝手や必要な機能を絞り込んでいきました。面倒な要求によく応えてくれたNTTソフトウェアの開発担当者には、感謝しています」
(小林氏)


このような例外的に見える開発手法は、設計変更や手戻りを増やし、開発工数の増大を招く恐れがある。NTTソフトウェアはSEやプログラマの担当範囲を工夫することなどで、開発工数を抑えた。「ユーザに対するアンケートや説明会などで出された意見は、随時、システムに反映していきました。また、月に1度は開発の進捗状況を報告し、経営トップと開発委員会の意識の統一を心がけました」(長崎氏)


異例の開発手法であったが、タスク管理システムはプロトタイプの開発に約4カ月、さらに約4カ月の試用期間の後、2010年8月から全社に導入・運用されている。

ソリューションとその成果

新たなコミュニケーションツールとしても活用

タスク管理システムは、ユーザが毎日、データを入力しなければ、有効に運用・活用することができない。開発したシステムには、ユーザの使い勝手を考慮した様々な工夫が盛り込まれている。完成したタスク管理システムで表示される画面は1画面で、ユーザが混乱しやすい画面遷移を極力排除する設計になっている。徹底的なユーザ視点の設計により、システム導入時の教育も最小限で済み、導入コストの削減にもつながった。


さらに長崎氏は、「システムを使ってもらうには、ユーザが楽しいと感じる仕組みが必要だと感じました。そこで、起動時にひと言メッセージを入力する機能を搭載しました」と、ユーザに入力を促す「仕掛け」を組み込んだ理由を説明する。最初の入力画面で、「今日の調子」「作業の手伝いを申し込まれた場合の対応可否」に加えて、「ひとこと」が入力できる自由記入欄が設けられている。


当初は、「ひとこと」にコメントを入力するユーザが少なかったが、徐々に浸透し、各従業員の作業状況や外出、休暇などの情報を共有できるようになっていった。そして、現在は社内コミュニケーションの活性化に大きく貢献する機能になっている。普段は顔を合わせることのない社員同士にも、仲間意識が醸成され、従業員の自主性も向上し、当初の目的であった「相互応援体制」を構築できたのである。


これによって、業務が平準化され、業務の効率化を達成している。

タスク管理システムメイン画面、自分の状況登録画面イメージ

今後の展開

社内ポータルを目指して、機能拡充を行う

「NTTソフトウェアは、我々の難しい要求に迅速に対応し、技術力も申し分ないことを実感しました。今後は、開発したタスク管理システムにスケジュール機能を搭載するなど、機能を拡充していきたいと考えています」と、NTTソフトウェアの技術力・即応力を高く評価する小林氏は、今後の希望を話す。


今回開発したタスク管理システムは、今後は社内ポータルシステムに発展させる計画もあるという。TwitterやFacebookなどのソーシャルネットワークを社内外のコミュニケーションツールとして利用する企業も増えている。しかし、ガバナンスの維持など企業での運用には課題も少なくない。今回開発したタスク管理システムはクラウドでもなくSNS機能もないが、徹底したユーザ視点での開発によって、企業が理想とする業務環境を実現することに成功している。NTTソフトウェアは、これからも高い対応力と創意工夫した開発手法でユーザの希望を汲み上げ、確かな技術力によりそれを具体化するシステムを提供していく。

お客様プロフィール

 お客様プロフィール
設立 2000年9月
事業概要 主な顧客はNTTグループの従業員・OBとその家族であり、保険サービス、福利厚生サポートサービス、ライフデザインサービスを提供している。セカンドライフの一環として、もしもの時に備えて、介護や葬儀の希望、資産情報や家族へのメッセージなどを分かりやすく記入できる自分史ノート「轍」も販売している。
資本金 4,000万円
従業員数 78名(2011年4月現在)
URL http://www.life-assist.net/

※2011年11月現在