概要

 世界中の顧客に、夢や感動にあふれるサービスや、安全かつ高品質な空の旅を提供する全日本空輸株式会社(以下、ANA)。「安心と信頼を基礎に、世界をつなぐ心の翼で夢にあふれる未来に貢献します」という企業理念に基づき、定期航空運送事業、不定期航空運送事業、航空機使用事業、その他附帯事業を展開している。
 整備部門では、安全かつ高品質な空の旅を提供する取り組みの一環として、4,000名を超える整備士が活用する機体整備情報の共有方法をファックス送信からintra-martによる電子化へと刷新。現場の整備士もアプリケーション開発者として加わって進められた電子化の取り組みによって、年間約8,400時間もの作業工数を削減するなど、現場の業務を改革できる仕組みを実現した。

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課題

1日100枚のファックスのハンドリングに時間と負荷がかかる

 ANAの整備部門では、世界各国の機体整備工場で機体の整備作業を行い、整備士が整備内容をデータシートに記載して、ファックスや海外からは郵送で、日本の技術部門に送られていた。技術部門に届くファックスの量は、1日あたり約100枚。その日のうちに、各担当部門に配布され、担当者は手作業でシステムに入力していた。
 機体事業室 機体技術部 フリート運用技術チームの長谷川翔一氏は、「入力に関しては、それほど時間はかかりませんが、担当者に配布されるまでに、いくつかの課題がありました。たとえば、ファックスを受け取ると、それを回収してチームごとに仕分けをし、各チームの担当者に配布されます。そのためのハンドリングに、時間と作業負荷がかかっていました」と話す。
 また、手書きのファックス送信では誤記や記入漏れのリスクがあった。誤記や記入漏れなどがあると記入者を探して訂正する必要があり、余計に時間がかかってしまう。整備士のスキルに依存せずに効率的にデータを取得する仕組みが必要だった。こうした背景もあり、機体整備データのファックス送信業務を電子化することが必要だった。
 整備センター e.TPS イノベーション推進室 ITチーム マネジャーの中邨剛士氏は、「2015年ごろ、整備士にタブレットが配布されていたことも、ファックス送信業務の電子化のニーズが高まった背景の1つでした。PCへの入力だけなく、タブレットからデータを入力することで、業務の効率化も期待できます」と話している。

解決へのアプローチ

開発の自由度、コスト、短期導入でintra-martを採用

 ANAの整備部門では2016年、ファックス送信業務の電子化を実現するためのプラットフォームとして、intra-martを採用した。採用の理由を整備センター e.TPSイノベーション推進室 ITチームの長津聡明氏は「いくつかのツールを検討しましたが、開発の自由度の高さ、導入および運用・維持コスト、短期導入が可能なことなどを総合的に評価して、intra-martの採用を決めました」と話す。
 導入の際には、NTTテクノクロス株式会社がインフラ構築からアプリケーション開発までの技術サポートを提供した。同社の技術サポートについて、中邨氏は次のように語る。「NTT グループで技術サポートを提供してもらえることも、intra-martの採用を後押しした要因となりました。特に今回のプロジェクトでは、アプリケーションを開発するメンバーが、ITのプロフェッショナルではなくて現場の整備士だったので、技術サポートは不可欠でした」
 intra-martを採用したファックス送信業務の電子化は、2016年1月より一部の部門でトライアルを開始。その後、9月ごろから整備部門に導入を開始して、さらにトライアルを繰り返し、12月より本格的な運用を開始した。長津氏は「整備士のITスキルが予想以上に高かったので、整備部門でのトライアルを始めてから約3カ月という短期間で運用を開始できました」と当時を振り返る。


ソリューションとその成果

年間 15,000枚分の紙資料保管スペースが不要に

 ファックス送信業務の電子化によって、ファックス用紙や通信料を削減することができた。また、以前は、受け取ったファックスを各部門に仕分けし、データを手作業で入力していたが、その作業も必要なくなった。さらに、ファックスで受け取ったデータは、入力後すぐ活用できたが、海外のデータは郵送で受け取るため約1週間かかる。そのため、約1週間後だったデータ解析を即日でできるようになった。
 「ファックス送信業務の電子化によって削減できた時間は、機種ごとの整備傾向や不具合発生率の分析に使えるようになりました。データをタイムリーに解析できるようになったので、今後さらに高い精度で予防保全ができるようになることも期待できます」(長津氏)。

 intra-martの導入効果について長谷川氏は、「1日に受け取るファックスの枚数が、約7割削減されました。そのおかげで、ファックスを関連部門に配布したり、ファックスに記載されたデータを分析ツールに入力するまでの業務工数を、年間で約8,400時間削減できました。手入力が不要になったので誤入力もなくなり、データの精度も向上しています」と語る。また、年間15,000枚分の紙の資料を保管するためのスペースも不要になったという。
「整備部門が自らアプリケーションを開発する」という体制で電子化を推進した副次的効果として、整備部門からより積極的に業務改善案が出てくるようになったこともあげられる。機体整備の設備に不備があったとき、その設備にタグを付け、紙ベースで担当者に渡したり、管理したりしていた業務を、整備士たちが自らIM-Workflowで電子化したケースもあったとのことだ。こうした日々の取り組みがANA社内でも評価されて2017年度の整備部門全体の社内改善活動報告会(e.TPS 博覧会)にてグランプリとして表彰されている。

今後の展開

他部門にもintra-martによる業務の電子化のメリットを啓蒙

 今後は、ファックス送信業務の電子化と同様の仕組みを、機体整備用の予備部品を管理する部品管理部門にも導入する計画を立てているという。中邨氏は「部品管理部門では、どの部品をどこにいくつ送るなどの情報を、紙ベースで管理しています。紙ベースで業務を行っている部門は他にもあるので、intra-martによる業務の電子化のメリットを、広く社内に啓蒙していきたいと思っています」と話している。

お客様プロフィール

お客様プロフィール

会社名 全日本空輸株式会社
設立 1952年12月27日
事業概要 定期航空運送事業、不定期航空運送事業、航空機使用事業、その他附帯事業
従業員数 14,242名
URL http://www.ana.co.jp/

※2019年3月31日現在