概要

ビジネス環境のグローバル化に伴い、国内外に対する貨物配送の需要が増加し続けている航空業界。全日本空輸株式会社では、航空貨物の業務を担う貨物系システムが稼働するメインフレームの保守期限切れに合わせて、柔軟なオープン系システムへの転換を図ることを計画し、システム統合基盤パッケージを利用した貨物系共通HUBシステムを構築した。ビジネス拡張にも柔軟に対応できる貨物系共通HUBシステムの中核を担っているのが、NTTソフトウェアが提供するシステム統合基盤webMethods及びシステム統合ソリューションだ。

課題

メインフレームの保守期限切れでオープンシステムへの移行を計画

航空運送を中核に、世界の旅客・貨物輸送を担うアジアを代表する企業グループを目指している全日本空輸株式会社。成長を続けるアジアをはじめ、欧州や北米など国境を超えてビジネス展開するグローバル企業はもちろん、全国に拠点を広げている国内企業などを物流面で支援するべく、フォワーダー(貨物利用運送業者)や荷主のニーズに合わせた様々な貨物サービスを提供している。航空貨物サービス「ANA CARGO」をブランド名に、安心・確実・迅速な輸送を心掛けることで、多くの顧客から信頼されるグローバルな航空輸送インフラを作り上げている。

全日本空輸株式会社 後藤 孝宏氏
そんな同社の貨物事業を支える貨物システムの刷新が計画されたのが2006年、貨物システムが稼働するメインフレームのハードウェアが保守期限切れを迎えることになり、新たな環境を構築する必要に迫られたと全日本空輸株式会社 IT推進室 開発推進部 運航・貨物・整備チーム 主席部員 後藤氏は当時を振り返る。
「技術者確保が困難になってきたことはもちろん、その専門性の高さゆえに開発保守コストが高騰するなど、メインフレームを利用することでのデメリットが顕在化していました。経済発展が著しいアジアなどへの貨物供給が増えることが中長期的な視点でも予想されていたため、システム拡張へ柔軟に対応できるオープンシステムへの移行が検討されたのです。」

解決へのアプローチ

習熟度の高さからくる充実したサポートと運用実績の高さが決め手に

新たなインフラ作りを検討するにあたり、貨物事業に必要なおよそ20システムをハブ&スポークで連携することでのシステム統合が検討された。
「すでに空港系システムでEAIを用いたシステム統合が稼働していたこともあり、貨物系システムでも同じようなインフラを考えたのです。」と後藤氏はきっかけを語る。また、各システムをメッシュ型で連携すると開発やテストの工数が膨大になることが予想された。さらに、機体あたりの貨物収入を最適化する機能の実装など、将来導入を検討していたものがオープンシステムでしか対応できない状況にあったという。


メインフレームからオープンシステムへの移行は避けられない状況となる中、後藤氏は異なるインターフェースが柔軟に吸収できるシステム統合基盤導入を決意した。
システム統合基盤の中核に据えるパッケージには、選定候補となった複数製品の中から最終的にNTTソフトウェアが提供するwebMethodsが採用された。
「価格面で優位性があったことはもちろん、製品に対する十分なサポート窓口が国内に用意されていたことが大きな選定ポイントです。webMethodsに関するNTTソフトウェアの習熟度は非常に高く、安心して選択できました。」(後藤氏)


海外製品の中には、提供元の技術者と直接やり取りせざるを得ない製品もあり、保守の面で起こりうるリスクは可能な限り避けたかったと後藤氏。規模の大小問わず様々な場面でwebMethodsが採用されており、その安定した運用実績についても評価したポイントだったという。

ソリューションとその成果

安定稼働を可能にしたシンプル設計!高度なプロジェクト遂行能力を高く評価

現在は、webMethodsによって構築された貨物系共通HUBシステムが二重化されており、負荷に応じてバランシングが行われている。基幹となる新国内・国際貨物システムをはじめ、空港上屋輸出入機能や収入管理、貨物のトレーサビリティを表示するインターネット連携など20あまりのシステムとの連携が貨物系共通HUBシステムを通じて行われ、24時間365日稼働し続けている状況だ。性能要件は、スループットが20件/秒、EAI滞留時間は1秒以内となっている。

全日本空輸株式会社 渡邊 祐次氏
貨物系共通HUBシステムの特徴については
「貨物はフライトに直結する仕組みのため、安定した性能を徹底的に追及しているのが特徴です。辿りついた答えがシンプルな仕組みでした。」データの受け渡しをスピーディに行うことを重視し、データ変換などは一切行っていないと語るのは全日空システム企画株式会社 貨物・整備システム部 第一チーム シニアエキスパート 渡邊氏だ。シンプルだからこそ安定的に稼働しており、稼働後は大きなトラブルは一度も発生していないという。
「高速道路で言えばインターチェンジ、人間の体で言えば心臓のようなもの。これが止まるとすべてが動かなくなるため、基盤として安定稼働させることが絶対条件です。」(後藤氏)


課題になっていた開発工数の削減については、
「新たに接続先が追加された場合、開発期間もコストも半分ぐらい。接続先とwebMethodsとの間だけのテストで済み、他システムに影響を与えることがありません。」と渡邊氏は評価する。優れたGUIによって保守作業も簡便となり、全日空システム企画株式会社への技術移管もスムーズに行われ、最小限のコストで安定した運用を実現している。


今回のシステム開発でもっとも評価が高かったのが、NTTソフトウェアのプロジェクト遂行能力だ。
「プロジェクトで課題になる可能性のある事象を正確に予測しながら、開発部隊との情報共有がきちんと行われていました。その結果、プロジェクトの遅延が一切なかったのです。」後藤氏は舌を巻く。また、プロジェクトに関わるすべての企業を巻き込みながら、状況把握や課題の抽出を行い、やるべきことをしっかりと伝えるコミュニケーションンスキルの高さにも後藤氏は驚きを隠せない。「外部要因でスケジュール遅延が発生した時にも柔軟に吸収していただきました。人的な対応能力が高かったことはもちろん、安定したパッケージを利用したこともプロジェクト成功のポイントの1つになっています」と渡邊氏。

「システム概要図」

今後の展開

貨物系システムの玄関として今後も積極的に活用

今後の展望については、予算に余裕が出た段階で早急にwebMethodsのアップグレードを実施したいと後藤氏。また、システムの拡張については
「我々は小口から大口まで幅広い貨物を扱っており、同じ売り上げ規模でも他社に比べてトランザクションが多い部分も。ただ、今回はシステム的にも十分ゆとりの設計となっているため、今すぐ拡張の予定はありません。さらなる取引量の拡大にも対応できるインフラが構築できたことに満足しています。」と後藤氏。逆に、安定した運用を維持するためにも、他部署から上がってくる要求に対して“我慢する姿勢”が重要だとも。


今後は、貨物系システムの玄関となる貨物系共通HUBシステムを中心に、クラウドサービスなど外部サービスの利用も積極的に行いたいと今後の抱負を語っていただいた。

(右)全日本空輸株式会社 後藤 孝宏氏、(左)全日空システム企画株式会社 渡邊 祐次氏

お客様プロフィール

全日本空輸株式会社/全日空システム企画株式会社 様 全日本空輸株式会社様
設立 1952年(昭和27年)
事業概要 定期航空運送事業・不定期航空運送事業・航空機使用事業・その他附帯事業
資本金 2,313億8,178万4,228円(2011年3月31日現在)
従業員数 12,848名(2011年3月31日現在)
URL http://www.ana.co.jp/

全日空システム企画株式会社 様

設立 1986年(昭和61年)
事業概要 コンサルティング、システムインテグレーションサービス、受託ソフトウェア開発、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)、情報システム運用管理保守、ソフトウェアプロダクト仕入販売
資本金 5,250万円(2011年6月17日現在)
従業員数 754名(2011年6月17日現在)
URL http://www.asp-kk.co.jp/

※2012年1月現在