日本トーカンパッケージ株式会社

概要

 製造現場の複雑化が進む中、日本トーカンパッケージ株式会社では、工程条件や設備状態、紙幅・フルートといった多様なデータが日々生成されている。しかし、こうした情報を"判断に使える形"にすることは容易ではなく、当初はAIを活用した異常検知に取り組んだものの「なぜ異常と判断したか」が説明されず、実務判断には適さなかったという。そこで同社は、AIのブラックボックス化を避け、異常値の根拠を可視化し、変化点を自動検知できるBIツール「Yellowfin」を導入。現場の判断根拠として使えるデータ活用を推進し始めている。取り組みの狙いや成果、今後の展望について、生産技術部の根岸稔氏に話を聞いた。


課題工程データを取得しても、判断に使える形へ 整理できず、属人的な判断が続いていた
対策BIで工程の変化点や条件差を可視化し、現場判断に活かせる"見えるデータ活用"を推進
効果生産プロセスの安定性を把握でき、判断精度と改善サイクルを高めるデータ活用が定着

課題

完全受注生産の段ボール市場で求められる「止めない設備」

 EC需要の拡大、脱プラスチック、物流の小口化──。外部環境の変化にともない段ボール需要は年々増え続けている。一方、段ボールは完全受注生産であり、食品・飲料といった需要変動の激しい業界が主要顧客のため、短納期・変動対応が常態化している。「設備が止まれば、後工程がすべて滞留し、出荷スケジュールも崩れてしまいます。これまでは熟練者の経験と勘でトラブルを未然に防いできましたが、技術継承が難しくなり、属人化の限界を迎えていました」と、根岸氏は語る。

tkp002.png

IoT× BI活用の起点となった“コルゲートマシン”という最重要設備

 実証プロジェクトの対象となったのは、茨城工場の基幹設備であるコルゲートマシンだ。この機械は、原紙を波状に成形した中芯に表裏のライナーを貼り合わせることで、段ボールシートを連続生産する全長約100メートルの巨大設備で、食品・飲料向けなど多様な注文に対応するため、紙幅・段種(フルート種別)・生産速度が頻繁に変動するという特徴がある。

 この設備が停止すると、後続の印刷 → 打抜 → 製函のすべての工程が止まってしまい、工場全体の生産がストップする。まさに工場最大の“単一障害点(SPOF)”であり、予兆検知の効果が最も高いクリティカル設備だった。

AI活用は判断根拠の不透明さが壁に。予兆検知の実現に向けBIへ転換

 同社はIoTセンサーのデータ収集に着手し、振動・電流・速度などの稼働データをクラウド上に蓄積。当初はAI活用によって異常検知を試みたが、AIモデルが“なぜこの値を異常と判断したか”が説明されず、実務判断に適さなかった。「通知は来るのですが、根拠が見えない。回転体が中心の設備特性もあり、AI単体では扱いきれない情報も多かったのです」と、根岸氏は振り返る。

 そこで同社は、異常値の根拠を可視化でき、変化点を自動検知できるBIツールの検討へと舵を切った。複数ツールを比較した結果、選定されたのがYellowfinだ。採用の決め手は、「データの急変や異常値を自動検知して通知する“プッシュ型BI”である」こと、また「検知した理由をグラフとテキストで“説明可能”な形で提示できる」ことの2点。さらに事前検証では、設備をオーバーホールした日付をYellowfinが“変化点”として正確に捉えており、たしかな分析精度も導入の後押しとなった。

tkp002.png

日本トーカンパッケージ様専用ダッシュボード
コルゲートマシン全体のどこに設置されている機器で異常が発生しているのかを確認できる。

tkp002.png

各機器の状態監視ダッシューボード
IoTデータと生産管理システムのデータの相関分析結果が表示され、具体的な変化点や異常値を確認できる。

変化点検知の有効性を確認、データドリブンな予兆保全への道筋が明確に

 本プロジェクトでは、コルゲートマシンのIoTデータと、生産管理システムのロット情報・加工条件・紙幅・フルート種別などのデータを統合し、Yellowfinで相関分析と変化点検知を実施した。その結果、
・設備(状態)の変化点を正確に可視化できること
・正常稼働データの揺らぎを把握したうえで異常値を識別できる可能性
が示された。

 これにより、熟練者の経験とデータ分析を組み合わせることで、従来よりも客観的で迅速な判断が可能になると期待している。データが人の経験や感覚を完全に置き換えることは現実的ではないが、データドリブンなアプローチを取り入れることで、判断の属人化を減らし、組織全体の対応力向上につなげたい考えだ。

生産プロセス品質のモデル化へ── 工程の“揺らぎ”を捉えるデータ分析


日本トーカンパッケージ株式会社 生産本部
生産技術部 生産技術グループ付
グループリーダー(東日本担当・安全担当)
根岸 稔 氏

 Yellowfinの運用が始まった現在、同社が手応えを感じているの
が、生産プロセス全体のパフォーマンスや安定性の可視化だ。根岸氏は「生産速度の推移を見るだけでも、良い生産は速度が安定し、悪い生産ほど乱れが大きいことが分かります。こうした違いをモデル化できれば、最適条件を標準化し、生産プロセス全体の安定性を高められます」と、期待を寄せる。

紙幅・フルート・紙厚・生産速度など多数の条件を掛け合わせることで、工程のパフォーマンスに影響する要因をデータで把握できるようになった。本導入プロジェクトをリードしたNTTテクノクロスの北村麻衣も「他工場のデータを統合すれば、設備差分や環境条件の違いも比較できます。予兆検知にとどまらず、工場全体の品質改善につながる新しいインサイトを提供していきたい」と、さらなる高度化を見据える。

根岸氏は、NTTテクノクロスのプロジェクト遂行力についても評価する。「タイトなスケジュールでも確実にプロジェクトをやり切り、分析基盤の構築から実運用まで伴走してくれました。技術力も対応力も高く、安心して任せられるパートナーです」。今回のプロジェクトで予兆検知の可能性が実証され、実運用も開始された。今後も同社は、より精度の高い故障予知を実現するため、継続的なデータ蓄積と検証を重ねながら予兆保全の高度化と生産プロセスの安定化・標準化を推進し、変動の大きい段ボール市場をリードする競争力を強化していく構えだ。

お客様プロフィール

 お客様プロフィール
設立 2005(平成17)年10月1日
事業概要 段ボール製品、紙器製品、紙管、フィルター製品などの包装容器・板紙製品の製造・販売
資本金 7億円
従業員数 1,212名(2025年3月31日時点)
URL https://ntp-k.co.jp/

・ページに記載した会社名、製品名などの固有名詞は、一般に該当する会社もしくは組織の商標または登録商標です
・本ページは2026年3月取材時の情報です