情報畑でつかまえてロゴ
本サイトは NTTテクノクロスが旬の IT をキーワードに
IT 部門が今知っておきたい最新テクノロジーに関する情報をお届けするサイトです

『技能継承』の取り組みから得たノウハウ

当社こころを動かすICTデザイン室が提供している主要サービスのひとつ、『技能継承』の取り組みを4回にわたってお伝えします。第3回は「『技能継承』の取り組みから得たノウハウ」です。

おはようございます。こんにちは。こんばんは。

HCD-Net認定 人間中心設計スペシャリスト 井山貴弘です。

 

前回は、こころを動かすICTデザイン室大野健彦さんに「『技能継承』の取り組みが生まれるまで」のお話を伺いました。今回はその後、『技能継承』を実践された中で蓄積された「『技能継承』の取り組みから得たノウハウ」を伺っていきたいと思います。

 

 

『技能継承』の取り組みから得たノウハウ

 

質問者:井山井山

回答者:大野さんこころを動かすICTデザイン室 大野健彦さん

 

 

井山
大野さん、今回もよろしくお願いします。

 

大野さん
よろしくお願いします。

 

井山
前回インタビューの中で、暗黙知を抽出するためのワークショップに関するお話を伺いました。またワークショップデザインの知識が役立った、というお話もありました。

 

大野さん
そうですね。

 

井山
まず、ワークショップに関する質問をしたいと思います。

 

大野さん
はい、わかりました。

 

ワークショップを活発にするには?

 

井山
『技能継承』の取り組みの中で、さまざまな方とワークショップを行ってきたと思います。場に慣れていない方や、話すのが苦手な方がいたこともあったかと思います。どんな場所でも活発なワークショップにするために、なにか工夫したことはありますか?

 

大野さん
業務に合わせていろいろな準備を行いますが、どこでも使える大事な工夫は2つあります。

 

井山
2つですか。

 

大野さん
はい。まず1つ目は、ファシリテーターは気合いを入れて、大きな声で頑張ることです。腹式呼吸ではっきり伝えることが重要です。

 

井山
確かに、ファシリテーターが自信なくボソボソ小さな声で伝わらないことを話していたら、暗い雰囲気になって活発化しないですもんね。

 

大野さん
はい。こちらから明るく楽しい雰囲気をつくらないといけません。いろいろとワークショップをやっていますが、特に技能継承のワークショップでは、気合を入れて、テンション高めを意識しています。

 

井山
なるほど。どんな場でも大事ですね。

 

大野さん
そして2つ目ですが、お菓子を用意することです。

 

井山
お菓子ですか。

 

大野さん
はい。食べながら進めると場が和むというのもありますが、ワークショップは頭を使うことが多いので、脳に栄養を与えるためにもお菓子が必要になります。

 

井山
確かに、ワークショップの場では、いろんなことを考えて脳をフル回転させますもんね。

 

大野さん
ワークショップをする内に、このお菓子を出したら場が活発になる、という笑い話にもなるノウハウも生まれました。これは企業秘密です。

 

井山
どのお菓子がいいか、あとでこっそり教えてください。

 

若手が必ずしも積極的に発言できないときには?

 

井山
場が盛り上がっても、中には話せない方もいるんではないでしょうか。たとえば、ベテランに遠慮して若手が積極的に発言しないこととかありませんでしたか?

 

大野さん
そういうことは起こりがちです。ベテランは気にしていなくても、若手が委縮してしまうこともあります。ですので『この場はイーブンである』ということを強調するようにしています。

 

井山
あくまで同じ立場であると。

 

大野さん
はい。最初に宣言するだけではなく、ワークショップを進める中で、考える場、書き出す場、発表する場。その場その場で『この場はイーブンである』と繰り返し伝え続けることが重要です。ベテランの方々にも協力してもらい、うまく若手がリラックスるするように声がけしてもらうと、場が和みます。

 

井山
最初に言われただけでは、あくまで前提の話と思うだけで終わってしまいますもんね。

 

大野さん
そうなんです。あとワークショップをはじめるときも工夫しています。最初に参加者全員の「夢」を語ってもらい、目指すべき方向性のイメージを作っています。

 

井山
夢ですか。

 

大野さん
業務に関する夢です。理想のベテランとはどうあるべきか、どのような姿を目指すかを話し合うことで、参加者同士がイメージを持ち合い、話しやすい場ができます。あと話し慣れするという効果もあります。

 

井山
お互いの胸の奥にある想いを出し合うことで、信頼関係も生まれそうですね。

 

大野さん
それでも話に積極的に加われない方もいます。話すタイミングをつくるために、くまモントークンを回し、若手の発言の場を作る工夫もしています。

 

くまモン

 

井山
「くまモン」ですか。

 

大野さん
熊本で買ってきた「くまモン」で、ワークショップの大事なパートナーです。実際には強制的に発言を促しているんですけど、「くまモン」を使うと和んで順番が来ても嫌な気がしないんです。固いネームプレートとかではなく、かわいいぬいぐるみがあればそれでもいいと思います。

 

井山
くまモンにもちゃんと意味があるんですね。深いです。

 

大野さん
あと、質問するのって意外と難しいんです。「勘とか経験」の話もあるので、なにを聞いたらわからない。そこで、こちらで質問カードを用意しておいて、それを使って若手に質問してもらうこともしています。

 

質問カード

 

井山
質問カードですか。場を冷めさせないだけでなく、暗黙知抽出に必要な情報を引き出すのにも役立ちそうですね。

 

大野さん
参加者に、ベテランにいろいろと質問をしてもらうのですが、例えば「もう少し詳しく教えてください」など、なかなか若手には質問しにくいが、大事な質問を、カードを選んで積極的にしてもらいます。良い問いかけが出ないときの切り札ですね。

 

井山
カードは、若手自身が気になる質問を選ぶんですか?それともランダムにカードを選んで質問するんですか?

 

大野さん
適切な質問を選んでもらいます。ファシリテーターが選んで手渡し、無理やり質問してもらうこともあります。

 

井山
なるほど。ありがとうございます。では、ワークショップから離れて、『技能継承』の最重要部分である暗黙知の抽出について伺いたいと思います。

 

体系的に暗黙知を抽出することができない場合には?

 

井山
専門家が入って、話しやすい場をつくれたとしても、体系的に暗黙知を抽出するのに苦労することはありませんか?
大野さん
最初から、暗黙知を話して、では抽出はできません。まずは手順を詳細に語ってもらいます。そうすると、徐々に暗黙知が出てきます。

 

井山
徐々にですか。

 

大野さん
はい。詳細に話してもらうと、その中に特徴的なこと。いわゆる、インサイト、気づきが混ざってきます。そこに暗黙知が隠れています。

 

井山
なるほど。

 

大野さん
手順を話してもらう途中で、話がどんどんジャンプしてもいいんです。関係ない話に思えても、そこに大事な暗黙知があることがたくさんあります。どこでどう繋がっているか、どの手順に関連する話なのかは、こちらで分析するときにまとめればいいんです。

 

井山
ジャンプさせる範囲はどのくらいですか?時間も場所も超えて?

 

大野さん
よほど話がそれなければ、どんな内容でも構いません。ただし、後で元の話題に戻す必要がありますが。

 

井山
ありがとうございます。ジャンプをさせる、というのは、暗黙知の抽出だけでなく、潜在ニーズの抽出とか、他の場面でも使えそうですね。

 

大野さん
はい。他の場でももちろん使っています。

 

井山
これまで参加者個人に関するお話を伺いましたが、もう少し話を広げて。組織で『技能継承』を進めるために必要なことはなんですか?

 

組織で「技能継承」を進めるには?

 

大野さん
組織で『技能継承』を進めるには、トップのコミットメントが重要です。

 

井山
トップというと、社長とか上位の?

 

大野さん
はい、そうです。社長、支店長など上に立つ人がやる気になることが、参加者全員のやる気を引き起こします。

 

井山
確かに、トップから号令がかかれば、社の公認でやっている、ちゃんとやらないと、という安心感と緊張感もできますからね。

 

大野さん
時間があれば、トップにもワークショップなどに参加してもらっています。参加者の士気を上げるためでもありますが、現場場を知ってもらうこと、『技能継承』抽出のための取り組み体験してもらうことも大事です。

 

井山
なるほど。社長も現場を知ってるわけではないですしね。あと、こないだ参加したあの件どうなった?とか気にしてくれそうですね。

 

大野さん
そうなんです。最後にこういう結果になりましたとドキュメントを渡して報告するだけよりも、トップに納得感が生まれます。現場の声が詰まったドキュメントを全社で使おうという気にもなってくれます。以前、実施した案件では作成したドキュメントを社長自ら読み込み、真っ赤に添削してくれたということもあります。

 

井山
なるほど。全社の取り組みとして組み込みやすくもなりますね。納品された『技能継承』のドキュメントは、各社でどのように使われてますか?

 

作成したドキュメントの利用方法は?

 

大野さん
一番大事なのは、日々の業務で使ってもらうことです。実際に使ってもらえるように、たとえば職場のメルマガで活用してもらうなど、全員の目に入るようにします。今日はこの項目、明日はこの項目と、少しずつでも現場で使える内容なんだとわかってもらう。そうしてドキュメントの価値を理解してもらうことも大事になります。

 

井山
なるほど。そうすれば、ドキュメントを現場ですぐ使おう、とならない方も引き込んでいけるんですね。

 

大野さん
あとは研修教材に使われることもあります。ひとつひとつの手順がベテランのノウハウつきで展開できるので、若手が業務の全般を理解するのに大変有効な参考書になります。

 

井山
長年作業を行ってきたベテランの、血と汗と涙の結晶、と言えるドキュメントになってますもんね。

 

大野さん
はい、結晶です。

 

井山
そうなると、いろんな分野のドキュメントを読んでみたくなりますね。
大野さん
読んでもらうことはできませんが、みなさまの持つ暗黙知をドキュメント化することはできますので、ぜひご相談ください(笑)。

 

今回は、『技能継承』の取り組みから得たノウハウをテーマにお話を伺いました。『技能継承』の場以外でも使える、ワークショップのTipsとして活用できる内容が盛り込まれていたかと思います。

 

ノウハウ

 

次回は『技能継承』の取り組みが持つ可能性をテーマにお話を伺いたいと思います。

 

『技能継承』の取り組みが、いわゆる職人的な技術がいる業務以外でも使えるのか、について聞きたいと思いますので、どうぞお楽しみになさってください。

 

『技能継承』の取り組みに興味がある方、質問がある方は、以下バナーの遷移先にあるお問い合わせフォームより、お気軽にご連絡ください。

 

こころを動かすICTデザインラボバナー

※会社名、製品名などの固有名詞は、一般に該当する会社もしくは組織の商標または登録商標です。

連載シリーズ
(366)日のUXデザイン
著者プロフィール
大野健彦&井山貴弘
大野健彦&井山貴弘


(左)大野健彦
戦略ビジネス特区 こころを動かすICTデザイン室

(右)井山貴弘
営業推進部 UXデザイン推進担当