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組織を強くするための「見える化」【前編】

強い企業、組織であり続けるためには、社員が自ら考え、成長していくことが求められます。現場のカイゼン活動に「見える化」はどう位置づけられるか、そしてまず「何を見える化すべきなのか」について紹介します。

雑誌やWebの記事などさまざまなところで「見える化」という言葉を目にすることが多くなってきました。「見える化」とは「見えていないものを可視化する」という意味ですが、それだけでは組織を強くする「見える化」にはなりません。自ら考えて成長していくための「見える化」が必要です。

「見える化」の実施を検討される企業様は「ビジネスにおける問題を常に見えるようにしておくことにより、問題が発生してもすぐに対応できるようにしたい」と考えられています。さらに「見える化」を実現することにより、問題点がどこにあるかが明確となり、カイゼンすることにより問題が発生しにくい組織へと成長することが可能です。
しかし、実際に「見える化」するにあたり、単に現場からデータを吸い上げて、表示するだけでは効果が出ません。企業の「ビジョン」「戦略」「アクションプラン」に基づきカイゼンできる「見える化」が必要となります。

今回のコラムでは、企業のカイゼン活動における「見える化」の位置づけと、見える化する際に重要となる最初のポイントである、「何を見える化するのか?」についてお話します。

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1.カイゼン活動の中における「見える化」

なぜ今「見える化」が注目されているのか?

そもそも、なぜ今「見える化」が求められているのでしょうか?
従来、企業はITを活用してさまざまな作業の省力化・効率化を図り、一定の成果を挙げてきました。しかし、ビジネススピードの加速やビジネス環境の複雑化といった状況の中、強い企業・組織であり続けるためには経営者にはより迅速な意思決定が求められます。一方で現場担当者に対しては、「上司に指示をされて動く」のではなく、自律的に正しい意思決定をして、「カイゼン」していくことが求められるようになってきました。

カイゼン活動の中における「見える化イメージ」イメージ

現場力を向上させるカイゼン活動と「見える化」

では、担当者自らが日常的に正しい意思決定をし、カイゼンを実施するためにはどうしたらよいでしょうか?カイゼン活動を4つのステップに分けてみていきます。

第1ステップ
   :問題・課題を発見する
第2ステップ
   :問題・課題の真因を発見する
第3ステップ
   :真因を解決してあるべき姿に近づける
第4ステップ
   :あるべき姿に近づいたのか確認する

まず第1ステップとして、「問題・課題を発見する」ですが、ここで重要なことが「あるべき姿」をきちんと定めることです。問題とはあるべき姿と現状とのギャップであり、課題はそのギャップを埋めるための方策となります。つまり、カイゼン活動を行なうためにはまず、 「現状」と「あるべき姿」とその「ギャップ」を「見える化」 することに始まると言えます

第2ステップでは、現状を分解して、その結果をもたらす原因は何かを探ります。そしてまたその原因をもたらす、更なる原因はなにか・・・と探っていき、真の原因を見つけます。真因が見つかったらそれを解決するための具体的アクションプランやそのアクションプランが実行されているかを測る指標を策定します。

第3ステップでは、アクションプランに基づき実行し、真因を解決していきます。同時にアクションプランに従って正しく実行できているか、つまり 実行状況を「見える化」 します。

最後が第4ステップです。真因が解決できたら、あるべき状況に近づいたのか、効果を確認します。もし、あるべき姿に近づいていないのであれば、真因から見直しが必要です。あるべき姿に近づいていたならば、あるべき姿をさらに高めてさらにカイゼンしていきます。この 効果の「見える化」 は忘れがちですが、とても重要です。

このように、組織に所属するすべての人が、正しい意思決定をして自律的に行動していくためには、1)組織に属するすべての人が共通の認識を持つための「見える化」、2)担当者自らが判断して行動するための「見える化」、3)行動した結果を確認して、次のカイゼンにつなげるための「見える化」が必要になるのです。

見える化の必要性についてはお分かり頂けましたでしょうか。
しかし、「必要性はわかっても、実際に何をどうすればよいのかが分からない」という方も多いのではないでしょうか?

次に、今、何が見えているのか、あるいは、見えていないのか、についてお話します。

2.本当に見えているか?

今、腕にはめている腕時計の絵を描けますか?

突然ですが、今、腕にはめている腕時計を何も見ずに絵を描けますか?
文字盤の色、数字、ベルトの材質など、細かい部分まで思い出せますでしょうか。実際思い描いた時計と実物を見比べてみてください。自分で吟味し、気に入って購入した時計。今まで何万回も時間を確かめるために見ているはずの時計ですが、なかなか、正確には思い出せないのではないでしょうか。

「人間は意識しないと見えない」腕時計を思い浮かべるのに苦労している人

それでは次に、今、何時だったか覚えていますか? 今、時計を見たばかりなのに、材質や文字盤など時計の外見を意識している と、「時間」の情報は目で見ても、認識されないことがよくあります。このように人は意識しないと見えないものなのです。

意識しなくても「見える」ようにするための工夫

企業内の活動においても同じことが言えます。多くの情報は日々のレポートや報告書などに既に存在しているのですが、それらを漫然と眺めているだけで終わってしまっているケースも少なくありません。また、これらを単にパソコン上にグラフや表で表示されるということでも、「見える化」にはなりません。
「見える化」には、カイゼンすべき問題・課題が「いやでも見えてしまう」見せ方が求められてきます。

カイゼンすべき問題・課題がいやでも見えてしまう、効果的な見える化システムを設計・構築するためのポイントは3点あります。1点目は、何を「見える化」するのか、です。企業の戦略や事業の内容、あるいは見る人の立場によって見えるべき情報が異なります。2点目は1点目で決めた見るべき情報をどこからもってきて見せるか、です。社内には膨大なデータが存在しますが、そのデータを目的に即した情報に加工して見せる必要があります。3点目はその情報の見せ方です。

次に、「何を見える化するか」についてお話します。

3.何を見える化するのか?

「見える化」する対象を考えるときに、まず初めにあるべき姿、つまりビジョンとそれに向けての戦略・戦術・アクションプランを定める必要があります。そして、戦略・戦術・アクションプランのゴールとなるものが達成目標です。企業活動はその達成・進捗度合いを測るために指標が必要となります。

指標を考える際の2つの観点から考える必要があります。 1つが、「切り口」です。たとえば、経営状況を見える化する場合、代表的な切り口にバランススコアカードがあります。当社でも、「見える化」活動を数年来取り組んでいますが、この分類で見える化しています。

バランススコアカードの観点から「切り口」を変える

もう1つの観点に、「見方」があります。ものを見るときには「全体をつかむ鳥の目」、「詳細をきちんと見る虫の目」、そして「流れをつかむ魚の目」の3種類があります。

鳥は大空を飛びならが、森全体を見て、獲物を探しています。同様に、企業全体を見渡して、問題・課題のありそうなところを見つけていきます。企業で言えば、例えば全社的・ブランド別売上が該当します。

鳥の目で問題・課題が見つかったら、次にその真の原因をつかむ「虫の目」があります。例えば、製品個別の損益などが該当します。 そして、これとは別に、企業の将来を見据える、魚の目が必要となる場合もあります。魚は汐の流れをつかみ、自分の進むべき方向を決め泳ぎ続けます。近い将来起こりうる異常を早期に検知し、その対策を早めに打つ必要があります。企業で言えば、例えば異常な返品や歩留り、クレームなどが該当します。

目的によって見る「目」を変える

このように目的によって見る目を変える必要があります。 そして、実際の見える化システムでは、この「切り口」と「見方」をマトリックス構造の中でそれぞれ指標(KPI)を設定することにより、「何を見るべきか?」が決まります。

4つの見える化ソリューション「InfoCabina」

NTTテクノクロスでは、見える化の視点マトリックスをカバーする4つの見える化ソリューション「InfoCabina」を用意しています。全体をカバーする「経営の見える化」、そして、虫の目が中心となる「現場の見える化」、顧客から見た評価が中心となる「顧客の見える化」、人・組織の成長を助ける「知識の見える化」です。

次回 は、「見える化すべきデータはどこにあるのか?」、「データを『情報』に変えるにはどうしたらよいか?」についてお話したいと思います。

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著者プロフィール
中島 陽子
中島 陽子

NTTテクノクロス株式会社