「Skydio X10」と「みるソラ」の太陽光パネル点検検証
太陽光サイトにおいて、可視光画像、赤外線画像が同時撮影可能なドローン「Skydio X10」の撮影画像を太陽光点検アプリ「みるソラ」で活用できるよう、撮影条件の取得を目的としたフライト、撮影検証の模様をお伝えします。
はじめに
近年、太陽光発電が普及し、効率的な運用とメンテナンスが求められています。特に、太陽光パネルの点検は、発電効率の最大化、サイトの安全な運営をするために欠かせないプロセスです。その目的を達成する手段として、ドローンを活用した点検は、効率的な検査を実現する手段として注目されています。ドローンの可視光カメラを活用することで、太陽光サイトを俯瞰で撮影したり、パネル表面の破損・汚れを確認する事ができます。さらに赤外線カメラを使う事で、熱異常箇所の把握も可能となり、目視点検で行うよりも効率化が期待できます。
ただし、ドローンの撮影画像を活用するにも課題があります。動画で撮影をした場合には、異常箇所の特定には、動画の再生、停止を繰り返し確認を行わなければいけない点、静止画で撮影をした場合には、ファイルの枚数が多くなり、異常箇所を1枚1枚チェックし、ファイル選別や、位置特定等に時間をかけなければいけない点などがあります。これらの作業は事務所に戻り行うことが多いため、作業後の稼働負担がとても大きくなります。
みるソラの特長
当社では、ドローンで撮影した画像を活用する太陽光パネル点検アプリ「みるソラ」を販売しています。
「みるソラ」では、ドローンで同時に撮影された赤外線画像、可視光画像を用いて異常箇所、異常原因の特定支援が可能なアプリケーションです。特長は下図「みるソラの特長」をご覧ください。
また、インターネット接続が不要で、点検現場ですぐに利用可能です。このため、撮影直後からサイトの状況を把握でき、ピンポイントで異常箇所の確認が行えるため、その後の現場作業を効率化することが可能です。また、作業後に必要となる異常箇所の画像整理、報告書作成に向けたベース資料の作成が簡単に行えます。
「Skydio X10」検証の背景
「Skydio X10(VT-300Z)」は、先進的な自動飛行技術を搭載したドローンで、4Kカメラと赤外線カメラを搭載しており、可視光と赤外線の両方の画像を同時に取得できます。可視光画像の画像解像度は最大9248 x 6944(静止画)、赤外線画像の解像度は640 x 512です。また、マップキャプチャ機能により撮影対象範囲を指定する事で、簡易に撮影を行うことが可能です。
太陽光パネルの熱異常箇所判定においては、赤外線画像より熱異常箇所を発見し、その上で可視光画像を参照し原因の特定を行う方法があります。この場合、赤外線画像、可視光画像を同時に撮影できるドローンを利用することで効率化が期待できるため、「Skydio X10」はこのニーズにマッチしています。
当社では幅広いお客様ニーズに対応するため、NTTコミュニケーションズ様(※1)にご協力をいただき、赤外線画像、可視光画像の同時撮影が可能である「Skydio X10」の検証を実施いたしました。
検証の流れ
今回検証で利用したサイトは、1.2MWの発電量で、設置パネル数は約5,100枚です。
1. 検証の事前準備として、撮影に向けた飛行経路・範囲を検討します。今回は検証用のサイトを利用し撮影経験のあるサイトでしたが、実際には周辺環境、サイトの形、高低差などを配慮した経路・範囲を検討しておくことが必要です。また、撮影条件(高度、オーバーラップ率)についても関係者で事前に意識合わせをしておきます。
2. 撮影当日は、カメラ設定、赤外線の温度レンジ設定などを行います。また、天候に合わせ、撮影画像の白とびをおさえつつ、熱異常箇所が検出できる撮影条件をパイロットと相談しながら決めていきます。天候は午前中が曇り、午後が晴でした。今回は調整に、おおよそ45分程度かかりました。
「Skydio X10」 設定画面(左)、検証風景(右)
3. おおよその設定を決めた後、撮影条件を変更し撮影を行います。撮影画像の品質、ドローンの撮影スピード、シャッター間隔、シャッターモードの条件を変え、みるソラにとって適切な撮影方法を複数回行いました。それぞれ条件が異なるため時間のバラツキはありますが、「Skydio X10」での撮影はおおよそ10分程度、みるソラを使った合成、熱異常箇所の検出が5分程度、合計15分程度で行ったあと、みるソラの画面上で、合成結果や、熱異常箇所の検出状況を目視にて確認を行います。
4. 上記3を繰り返し、「Skydio X10」を利用した場合に適切なフライト条件を確認しました。
検証結果
今回、みるソラを活用いただくための「Skydio X10」の撮影条件を確認するという検証目的を達成できました。また、ドローンによる撮影の差異なども確認する事ができ、検証は非常に有効なものとなりました。
「Skydio X10」を利用する場合の基準となるフライト情報を取得できたので、今後、みるソラをご利用されるお客様に今回の情報を提供していきます。この情報により、「Skydio X10」をご利用のお客様が現地点検において、速やかにサイト全体の把握ができるようになると考えています。(サイト状況や、天候等による条件による変更がでてくる可能性はあります。)
今回のサイト規模では、ドローン初期設定が完了後、フライト撮影から約20分後には、みるソラの画面で熱異常箇所の位置把握が可能となりました。
汚れによる熱異常の検知(赤外線画像の水色マークはみるソラが付与※強調の為、赤丸を追記)
草による熱異常の検知(赤外線画像の水色のマークはみるソラが付与※強調の為、赤丸を追記)
参考:サーマルカメラを活用した太陽光パネル点検(NTTコミュニケーションズ様作成)
まとめ
「Skydio X10」を使用した太陽光サイトの現地撮影と、みるソラを活用した撮影直後の画像確認は、効率的かつ高精度な点検を実現するための強力な手段となると考えています。異常を早期に発見し、適切なメンテナンスを行うことで、太陽光発電の運用効率の最大化、安全な運営をすることが可能です。
今後も、ドローン技術の進化とともに、太陽光パネルの点検・メンテナンスの発展が期待されます。それに伴い、私たちが提供する「みるソラ」も、画像処理技術をベースとし、その他の技術を活用しすることでより良いアプリケーションを提供していきます。
NTTテクノクロスでは、引き続き新型ドローンの検証を積極的に実施し、お客様に多くの選択肢をご提供できるよう努めていきます。
太陽光パネル点検アプリ
※1:NTTコミュニケーションズ様(docomo skyサイト)では、「Skydio X10」利用の観点からの検証記事を掲載しています。
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