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クラウド環境でのLive映像配信について考える

クラウドでのLive配信について、当社対応事例を例にご紹介します。

はじめに

昨今、Live映像配信の世界でもクラウドを利用した事例が数多く見受けられるようになっています。 ただし、クラウドへアップするLive映像の品質を確保するのはなかなか難しいものがあると感じています。 イベント毎に異なる機材、要件そして通信回線など考慮すべき点は多岐にわたります。

これからLive配信を始めてみようと考えている方に向け、過去にNTTテクノクロスが対応した事例を参考にどのような事に考慮する必要があるか解説をさせて頂きます。

この記事のターゲット層

  • ・これからなるべく低予算でLive配信を始めてみようと考えている方。
  • ・過去にクラウド環境を利用してLive配信を行った時に、疎通確認に苦労された方。
  • ・現在Live配信をしていて、今後クラウドに移行してコスト削減を実現できないか検討されている方。

クラウド環境Live配信での難しいところ

スタジオからのLive配信と比較して、イベント時のLive配信では求められる要件は様々であり、その要件を満たすため には多様な機器の組み合わせが必要になりがちかと思います。 また屋内からのLive配信の場合でも、ネットワーク環境としてVPN内から、NAT経由など色々な制約条件が付く場合 もあります。最近では通信回線に無線通信部分が含まれる場合も多くなってきています。

  • 〇イベント毎での考慮すべき代表的な要件例
    • ・映像品質(どんなサイズのどんな品質の映像、音声を流したいか)
    • ・遅延(どれくらいの遅延まで許容されるのか)
    • ・利用機材(利用することが決まっている機材)
    • ・ネットワーク構成(回線の種類、縛りとなるネットワーク構成、用意できる機材の制限など)

お客様の要望としては、出来るだけ手元にある機材を利用することで追加出費を抑えたいなどの要望も考えれられます。

問題解決までの道のり

クラウドでのLive配信をする場合は以下のような決めるべき項目、困りごとが発生しがちです。

決めるべき項目

  • ・コーデックパラメータ
  • ・ビットレート
  • ・利用機材
  • ・ネットワーク構成
  • ・システム構成
  • ・プロトコル

事前に机上検討を入念に行っても、実際には現場で系を組みながら試行錯誤をすることも発生したりします。

困りごと

主要なクラウドサービスでの例を上げれば、AWS Elemental MediaConnect(以降MediaConnectと略す)やAzure Medi Servicesを利用してLive配信をする場合には以下のような問題が発生する事があります。

  • 〇そもそもクラウド環境につながらない。

    • 例えばAWSの場合は、MediaConnectに意図したストーリームをアップできた後はLive配信を行うのは比較的難しくはないかと思います。ただしよくあるパターンとしては、初期設定時にMediaConnectに繋がらない、そもそも繋がっているのか判断できない場合があります。繋がったとしてもパケットロスが発生していないかなどの確認作業に手間取ってしまった経験はないでしょうか?

    • 多様な機器を組み合わせた場合には、AWSへアップするストリームが正常な出力になっているかを切り分ける場合は、多数のポイントでの確認が必要になります。そのための試行錯誤に時間を取られてしまった経験はないでしょうか?

  • 〇クラウド上での監視環境構築スキルが必要

    • クラウド環境の場合は、映像品質が悪い時にどこに問題があるのか切り分けが難しいと感じたことはないでしょうか。 MediaConnectで映像配信をする場合には、入力ストリームの品質を確認するためには監視サービスのCloudWatchにて個別にメトリクスを監視する必要あります。そのためMediaConnect以外にもある程度のAWS監視スキルが必要となります。また入力ストリーム数が多い時にそれぞれの入力状態を確認するのにも手間がかかります。

参考事例

屋外イベント記念式典(ヨーロッパ・国内)のLive映像配信時に国際回線のバックアップとしてAWS環境を利用しました。

実施前懸念点

  • 〇回線の品質レベルは問題ないか?
    • イベント毎にバックアップ回線まで専用線で対応すると回線準備に手間とお金がかかてしまいます。それならばインターネット回線の品質が良ければ、バックアップ回線として使用可能なのではとの仮説を立て検証をしてみました。(※図中のMSRについては後述)

msr-02-02.png

結果

ヨーロッパ・国内間のLive映像配信時バックアップ回線として、インターネット回線(無線通信部分含む)を利用しても高品質なLive配信が行えることを確認できました。

参考事例において確認できたこと

テクノクロスの強み

  • 〇実際の映像出力を確認しながら最適な機器の接続構成、パラメータチューニングのノウハウがある

    • 過去に多彩なLive配信環境構築を行った経験をもとに様々な機器構成でも最適な接続、設定を導き出せることを再確認できました。
  • 〇伝送品質を簡単に確認する手段(メディアストリームルーター(以降MSRと略す))がある

    • MSRはNTTテクノクロスが開発した配信用ソリューションですが、これを入力ストリーム監視に利用することで簡単に各ポイントの映像品質を確認できます。そのため機器、回線のどこに問題があるか素早く切り分けることが可能でした。

msr-input-02.png

検証結果として得られたノウハウ

  • 〇事例対応時に確認できたクラウドでのLive配信の現状
    • ・安価で高品質なインターネット接続環境がスピーディに確保できるようになってきました。
    • ・配信先からAWSエッジロケーションまでの通信手段が近年5Gを含め伝送品質が向上し、専用線の現実的な代替構成として活用できるレベルになってきました。
    • ・AWSも含めクラウド上での映像配信サービスが充実してきており映像配信サービス拡大に低コストで対応できるようになってきています。そのため今から準備すれば将来的により魅力的なサービスへの道が開けると確信しました。

使ってみて分かった問題点

  • 〇クラウド特有のスキル習得
    • ・AWSの場合は、意図したコーデック、映像品質を確認するのにCloudWatchメトリクスでの確認になります。そのためAWSの知識がある程度必要な上に手間もかかります。
    • ・ただし、AWSまで映像を届けることができれば、後はAWSでの環境構築になるので、以後の中継でも繰り返し使用可能になります。

参考事例での疎通、環境構築手順

フェーズ1:つながらない、つながるの確認

  • 〇実際に手間取ったこと
    • ・中継が複数個所からの場合、それぞれの拠点の映像確認が思いのほか手間がかかることが分かりました。AWS上だとCloudwatchのメトリクス等での確認となり、直感的な監視をできるようにするにはそれなりの稼働が必要でした。
    • ・イベント毎の異なる機器構成、配信映像のスペックに柔軟に対応する必要があります。スタジオからのLive配信であれば、既に固定回線が引いてあり機材のセットアップを迅速に行えます。しかし屋外イベントでは毎回異なる機器構成、配信映像のスペックに柔軟に対応する必要が出てきます。

フェーズ2:つながったあとの品質確認

  • 〇パケットロス対策
    • ・AWSへ映像を送れるようになったら、次に行うべきはパケットロス有無確認になります。いくら繋がってもパケットロスが原因で映像が乱れるような事があれば意味がありません。どこで、どの程度のパケットロスが発生しているかを迅速に切り分ける手段が必要になります。
    • ・パケットロスを解消できたら、今度はより伝送量を増やして映像品質向上を試してみます。この時もパケットロス監視が重要となります。

フェーズ3:送出レートを上げる

  • 〇映像品質を上げる
    • ・パケットロスを解消できたら、今度はより伝送量を増やして映像品質向上を試してみます。この時もパケットロス監視が重要となります。

あとはフェーズ2、3を繰り返して最適な映像配信の環境構築を短時間に行う事が重要です。

最後に

今回は、国際回線のバックアップ時の事例を参考にクラウドでのLive映像配信時の考慮点、対策事例を述べました。 Live配信のクラウド化の検討ポイントの1つは、クラウドに届けるまでの映像品質をいかに短時間で確保するかという事です。多様な機器構成においても最適な機器接続、設定、チューニングを行うことで低コストで高品質、低遅延のLive配信が可能となります。

今後Live配信をクラウド上に移行したいと漠然と考えられているかたは、先ずはNTTテクノクロスにご相談してみてください。今後のロードマップを含めたご相談から、実際のLive配信での悩み事解決まで幅広く対応が可能です。

クラウドでのLive配信でのお悩み事があれば、過去の豊富なLive配信ノウハウをクラウド配信でも発揮できます。

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