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社内でUXデザインを推進するための2つの取り組み(その2:普及・育成)

現在、社内でUXデザインを推進するために『業務支援』『普及・育成』という2つの取り組みを実施しています。今回紹介するのは、その2つ目の取り組みである『普及・育成』です。

おはようございます。こんにちは。こんばんは。

HCD-Net認定 人間中心設計スペシャリスト 井山貴弘です。

挨拶

 

今日12月7日は、東京タワーが公開された日だそうです。それも1958年ということで、2018年の今日時点でちょうど60年、還暦となります。

 

なんだか親しみ深い、あの橙と白の姿を見ると、経験したことのない昭和のノスタルジィまで感じることもあります。

 

昼の東京タワー

 

...と同時に、還暦になっても、変わらず立ち続けているその姿に、定年が55歳から60歳、さらに65歳、そして70歳へと伸び続けていく、会社員たちの姿が重なって感じられてしまいます。

 

自分が還暦を迎えたとき、東京タワーのように、現役で立ち続けて、多くの人が親しみを感じてくれる、そんな存在であり続けられるでしょうか。

 

前回から2回に渡って紹介している「社内でUXデザインを推進するための2つの取り組み」。

 

1つ目として『業務支援』をご紹介しましたが、今回は2つ目として『普及・育成』をご紹介したいと思います。

 

 

2つ目の取り組み:普及・育成

文字通りの意味しかない『育成』という言葉に対して、『普及』という言葉の持つ意味が大き過ぎて、すべてを包括してしまいそうですが、もう少し小さな、地道な、草の根な話で。

a)普及

普及

 

まず『普及』に関して、社内はもちろん、社外に対しても、取り組みを行っています。

 

『NTTテクノクロスは、UXデザインを推進している会社である』

 

...ということを、社外から認識していただくことで、社内の理解が進みやすくなる効果が期待できるからです。

 

そのために社外イベントへの参加、事例の発表を行っており、いやらしい話ですが、このブログもそのひとつです。

 

社外イベントで代表的なのは、NTTグループに所属する、デザインに興味がある有志たちで運営し、今年で7年目になる、勉強会への幹事としての参画です。

 

各幹事が持ち回りで、年5回勉強会を開催する中、当社も年に1回は主催しています。

 

勉強会の内容については、参加者のみなさまが、デザイン事例を学んだり、新たな手法を体験したり、デザインへの興味を深めてもらえるよう、毎回検討しています。

 

社内においては、主催でなくても勉強会の度に、社内サイトやメールでお知らせし、社員が「デザイン」の文字を、年に何度も目にするようにしています。

 

また参加者募集だけでなく、発表者としての登壇も積極的に促し、当社のデザインに関する、さまざまな取り組みを発表し、グループ各社に、事例を共有することも行っています。

 

デザインにあまり興味がない社員も呼び込めるよう、当社製品のUI改善をワークショップの題材にしたり、開発色の強い製品担当と共に登壇したこともありました。

 

そうすることで、自分がしてきたことが認められる場になることはもちろん、新たな交流が生まれた例も多くあります。

 

またグループ各社のデザイナたちが、製品をどう見るのか、UXデザイン手法を用いた製品はどう見られるのか。

 

そんな生の反応を製品担当に見ていただくことも、UXデザインを推進していくための貴重なポイントとなります。

 

『普及』の中でも『巻き込む』を実践しています。

 

2017年の合併で、UXデザインコンサルティングなどを社外展開している「こころを動かすICTデザイン室」が加わったことで、確かな強み、実績をアピールできる土壌もできました。

 

こころを動かすICTデザインラボバナー

 

さらに今年度は、グループ外の組織との交流も深め、当社広報ブログ「謎のクリエイティブ集団現る。」で紹介したような、共催イベントもあり、少し運営のお手伝いもしました。

 

他者と比較することで自分の立ち位置を認識できる、それも人間の性質のひとつですので、こういった共催イベントも、今後増やしていきたいと考えています。

 

このように、UXデザインやデザインに触れる場をつくり、見せながら、『NTTテクノクロスは、UXデザインを推進している会社である』...ということを、社内外に認知していただけるよう努めています。

 

b)育成

育成

 

『育成』については、とっても月並みですが、まず社内研修や社内ワークショップを開催しました。

 

社内研修・ワークショップ

最初に「UX/UI基本研修」という2日間の研修を立ち上げたとき、組織ごとに枠を設けての選抜形式にし、製品担当の若手に対し、半強制的にUXデザイン手法を学んでいただいていました。

 

研修設計時に注意したことは、受講者が自分事として実感できることです。

 

講義も事例を多くし、当社製品をベースにしたテーマで、インタビューからプロトタイプ作成まで、演習前に丁寧に解説を行うようにしました。

 

「デザインは見た目のことではなく、設計や計画の意味です」というのも決まり文句です。

 

その後、当社社員が講師を務める自由応募形式にし、UXデザインに興味のある社員が手を挙げて参加していく研修に変わりました。

 

そして、現在は「UXデザイン実践研修」と名前を変えてリニューアルし、当社製品から離れたテーマで、演習時間が全体の8割を占めるほど濃密で、かつ他社からの参加もある、汎用性の高い研修となりました。

 

また2日間研修では敷居が高いこともあったので、今年度から半日研修を2つ増やしました。

 

1つ目は、「UXデザイン入門研修」。UXとは?という定義を学んだあと、スタンフォード大学d.Schoolが開示しているワークショップをベースに、デザイン思考の工程を体験します。

 

2つ目は、「UXデザイン視点で考える、使いやすさ評価・試作研修」。システムUIを専門家評価できる客観的な視点を持ち、ペーパープロトタイプによるテストを行えるようにします。

 

後者は、開発職の多い当社に向けた内容ですが、「デザインに必要なのは、センスではなく整理である」というところを伝えることを重視しています。

 

研修を設定するときの、もうひとつのポイントとして、お菓子を用意したり、音楽をかけたりして、楽しめる場をつくることはもちろんありますが、それ以上に大切にしているのは「共創できる場」にすることです。

 

共創というと複数の企業やユーザが共に創り上げることが想像されますが、ここでの意味はもうちょっと小さな、社内の組織が垣根を超える規模です。

 

3つの研修はどれも、複数人のチームを組んで演習を行うのですが、その際、組織や性別、年齢など、背景が異なるメンバになるようにしています。

 

いろいろな層の声が集まってチームになることによって、お互い想像もしないアイデアが飛び交い、それらが面白く膨らみ、洗練もされていきます。

 

同世代、同組織の仲良しチームではないような、少しの緊張感も、いいスパイスになります。

 

これは研修だけではなく、実際の現場でも、いろんな背景を持った人が集まった方が面白い場合もあります。

 

同じ製品担当であっても縦割りで組織化されている、営業や開発、保守など、別業務のメンバが集まることで、各々の工程に、意外な相関関係があることも気づくこともできるかもしれません。

 

組織ごとに成果を出すように言われている会社も多く、社外よりも社内、同じ製品担当内の方が共創するのが難しい、そんな場合もおそらくあると思います。

 

しかし、組織を横通しすることで得られる価値があるのであれば、隣の組織がなにをしているか、自分たちの組織でなにか手伝えないか、組織同士が共有し合える環境、手伝ったことを評価する制度をつくるのも、もしかしたらいいかもしれません。

 

...というメッセージも、こっそりと研修に含めています。

 

現時点で3つの研修合わせて、のべ180名ほど、当社の1割くらいの社員に受講いただいており、文化として根付くための芽は撒かれてきたと思います。

 

また研修の他にも、勤務時間後に自主的なワークショップを催し、ペルソナ、カスタマージャーニーマップなど、1工程ずつ、学び合うことも行っています。

 

コア人材

こうした研修やワークショップの場で、「業務でUXデザインを実践したい」という志を持った方を募っています。

 

当社では、その志を持った方を「コア人材」と呼び、社外研修や業務支援への参加、そして勉強会や研修講師を行うなど、UXデザインを学び、磨ける場を継続的に設けています。

 

各組織にコア人材が点在し、それぞれがUXデザインに関するスキルを高め、組織の実際の案件で、UXデザインを主導していく、そんな未来が理想の姿です。

 

実際に、コア人材による各組織勉強会での講義や、UXデザインを用いての製品改修などがはじまっています。

 

今はまだ道半ばですが、たくさんの「コア人材」たちが集い、いつかひとりひとりが羽ばたいていけるように、良い距離感でのサポートを努めていきたいと思っています。

 

以上が、UXデザイン推進のために取り組んでいる『普及・育成』でした。

 

前回に続き、推進している方には当たり前の話だったかもしれませんが、トップダウンで号令がかからないような推進活動は、草の根でコツコツと続けて、小さな実績を重ねていくのが大切なのだと思います。

 

『業務支援』と『普及・育成』、2つの取り組みを回していくことで、社内にUXデザインを推進していきたいと努めています。

 

さて、ここからは冒頭に東京タワーの話をした、その理由について話したいと思います。

 

『育成』に関しては、個人的に、もう1つ考えていることがあります。

 

育成というと、どうしても若者のためのもののように考えられがちです。

 

また、UXデザインのような歴史が浅いものは、どうしても若者のもののように扱われることも多いです。

 

しかし、UXデザインは、たとえ年齢を重ねても、重ねているからこそ、辿り着ける境地もたくさんある、そんな分野ではないかと個人的に思っています。

 

歳を重ねると、対応が難しい業務もたくさんでてくると思います。技術革新の波が激しい昨今では、尚更そんなことも多いと思います。

 

でも、UXデザインは、技術を知識として持ちさえすれば、あとは紙とペンだけで、できることがたくさんあります。

 

人の話をじっくりと聞いて、無意識に近いニーズを見つけ、その人に沿った、精一杯のおもてなしを考える。

 

ひらめきの速度は、若者に敵わないかもしれませんが、歳を重ねたからこその余裕を持つことで、人に寄り添った、おもてなしができるのではないでしょうか。

 

歳を重ね、経験を重ねても、わからないことはたくさんある。新しいこともたくさん生まれている。

 

謙虚な気持ちを持って、そんな真実と向き合って。

 

でも、経験の中にある光り輝く技術は、胸を張って、すべてを後世に伝える気持ちで。

 

還暦を超え、きっとこれからもずっと立ち続ける、なんだか親しみ深い、東京タワーになってみませんか。

 

夜の東京タワー

 

...という不思議な締め方をした理由は、きっと次回からの連載で少しわかるかと思います。どうぞお楽しみに。

※会社名、製品名などの固有名詞は、一般に該当する会社もしくは組織の商標または登録商標です。

連載シリーズ
(366)日のUXデザイン
著者プロフィール
井山 貴弘
井山 貴弘
2001年入社時より、Webシステムを中心にユーザ向け画面のデザインを担当。 2015年秋よりUXデザイン推進担当として、社内外にUXデザインを広める役割を担う。 2017年、HCD-Net認定人間中心設計スペシャリスト資格取得。 結婚披露宴のお色直しで新婦と共に「ふたりの愛ランド」を歌いながら登場するなど、面白く楽しませることが好き。