みんなに愛される『CipherCraft/Mail 7』のつくり方(その2:調査準備篇)
当社が提供している「CipherCraft/Mail 7」が、UXデザイン手法をどのように活用して、生まれたのか。今回はユーザ調査の準備工程です。
(366)日のUXデザイン 第2回
- 2017年09月28日公開
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
HCD-Net認定 人間中心設計スペシャリスト 井山貴弘です。
突然ですが、このブログの記事は、一体どのような方に伝えたいのでしょうか?
第1回は、読んでくれている方の間口が広がるように、と書き進めていました。
UXとは?という話は、既に優良な記事が多数ありますので、そちらにお任せをしまして、、、
ほんのりとでもUXデザイン、この取り組みに興味を持ってもらえるように、写真を多用して、文字も大きくして、楽しく表現してみました。
第2回以降は、硬派に...というのは言い過ぎですが、
UXデザイナやこの分野に少し興味のあるみなさまがワクワクするようなところと、
製品に興味を持ってくださったみなさまが「こんなことまで考慮していたのか」と発見してくれるところ、
その両立ができる記事を目指して、UXデザイン推進担当が実際に行ったことを、可能な限り細かく書いていく形で、進めていきたいと思います。
...というような方向性の確定を、「CipherCraft/Mail」製品カイゼンの場でも序盤に行っていました。
第1回の振り返り
メール誤送信防止ソフトウェア「CipherCraft/Mail」の製品カイゼンでは、まず、2つの課題を解消するための目的とゴールを設定しました。
1. 点検項目の見直しも含めた根本的なカイゼン
誤送信が本質的にゼロになるよう、UXの観点から点検項目の一新を図り、更に人間工学の要素を取り入れて、機能から検討し直すこと。
2. 日々の点検フローを考慮した見た目のカイゼン
見た目のデザインが古くメリハリもないため、今風なデザインの画面にし、どこが点検において重要項目なのか、明確にわかるようにすること。
これらの目的とゴールを達成するため、2つの調査を行っていきました。
製品カイゼンのために行った、2つの調査
その2つの調査をAとBとした場合、
課題1のためのA、課題2のためのB、というものではなく、
ABそれぞれの調査の一部と一部とで、課題1と課題2を満たす、
というものになります。
...と文字にすると、ややこしさ満載なので、つづくお話しの中で、理解していただけたらと思います。
調査A.誤送信事例調査の準備
誤送信を根本的に防ぐには、誤送信が起きた事例を洗い出し、どこに課題があるのかを明らかにし、まず機能面でその改善策を検討。そして、どの点検項目を注目させるデザインにすれば誤送信をゼロにできるのか、画面案を検証していくことが最良の手段と考えました。
CipherCraft/Mailを2003年から販売している中で、多くの顧客のインシデント情報を収集し、誤送信を起こしやすい人間の行動パターンを抽出してきました。
そこで、どのような条件下で発生したかを改めて分類し、うっかりや無意識、焦りや見間違いなど、人間の抱える根本的な問題の解決方法を検討する材料としました。
これらの材料について、人間工学の要素を使って、調査・分析を行っていきます。(この項、次回につづく)
調査B.インタビュー&現場調査の準備
こちらの話はやや長くなります。
CiperCraft/Mailの点検画面について、使い勝手はどうなのか。
初見の使いやすさを追求する製品ではなく、数年後も、漏れのない点検を促し、マンネリ化を防ぐ、そういった意味での使いやすさを持った製品であるべき。
そうした、年を重ねても耐え得る、バランスをとる必要があるため、使いやすさ重視となる初めて使うユーザへの調査よりも、製品に習熟した社員への調査を中心に実施することとしました。
習熟した社員、つまりヘビーユーザの意見を聞くことで、時が経つにつれて点検が疎かになる(マンネリ化しやすい)項目も明確にすることが可能です。
加えて、社員のターゲット領域を広げて、さまざまな立場にいる社員の言葉を聞くことで、想定していない利用場面を明らかにすることも考慮しました。
CiperCraft/Mailの場合、調査時点(2016年)で、ありがたいことに1400社以上のお客様が導入してくださっており、多種多様の業種が混ざっているため、幅広いユーザをフォローする必要がありました。
そこで、開発系、総務系、営業系、メールの送り先や場面の異なる社員に対して、インタビューを行い、課題を浮き彫りにすると共に、改善要望を聞き出すこととしました。
更に、実際にメール送信をしている一連のフローを、普段通りのやりかたで再現していただく、いわゆる『現場調査』を行って、実際にどう使っているかを明らかにし、どの項目が課題となっているかを目視で確認。
同時に、理想の点検方法を行っているか、慣れや状況からリスクを高める独自の点検方法になっていないか、そちらも検証することにしました。
インタビューの内容検討
インタビューのための質問項目は、どのようなものが適しているのでしょう?
得たい情報、目的によって異なるので、質問項目に、これ、という決まりがあるわけではありません。
今回は個人ごとの課題や要望を明らかにしたいので、その要素となるたくさんの言葉を引き出す必要があります。
後述の現場調査の内容も含んでしまいますが、大枠で以下のような質問内容を用意しました。
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業務内容を質問する
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いつ?どこで?誰に?どのように?...を質問する
⇒いわゆる5W2Hを網羅し、ユーザが製品に触れるタッチポイントを明らかにする -
ストーリー仕立ての標準的な操作手順を伝え、実際に操作する様子を見ながら、使いやすさ/使いにくさの質問をする
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製品を使ってみた印象を、5段階評価で質問する
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製品を友人に勧めたいと思うか?を10段階評価で質問する
⇒前項目の本人評価よりも本音が出やすいので、どうして勧めたいか?どうすれば勧めたくなるのか?を聞き、改善アイデアを引き出す
加えて、CiperCraft/Mailの点検画面をキャプチャし、実際の画面のどこが課題か、具体的なコメントが行えるような資料も用意することとしました。
現場調査の内容検討
現場調査では、まず対象とすべき社員の選定基準を検討することとしました。
業務内容だけでなく、1日あたりの社内と社外宛のメールの送信数、メールの質と量まで深掘りして、選定基準を設けました。
次に、メール作成から送信まで、どの社員も統一して行えるよう、製品の標準的な機能を網羅するだけでなく、送信者の立場や状況まで組み込んだ、ストーリー仕立ての操作手順を用意しました。
...と、通常は標準的だけなのですが、今回はそれだけでなく、調査Aで明らかになった誤送信が発生しやすい条件を組み込んだ、2通りの手順を用意しました。
更に、こちらはUX担当側のお節介ですが、調査中、シナリオを一通り行う時間も計測することとしました。
製品の乗り換えを促したい場合、既存機能(今回の場合、誤送信防止)強化に加えて、コスト効果の向上、というのも大きな強みとなるため、こうした要素も入れておくのが効果を値として明示しづらいUXデザインを関係者以外に理解してもらうコツでもあります。
インタビュー&現場調査の課題と目的
社員インタビューと現場調査について、今回は誤送信の減少を担保した上で使いやすさを向上させることが目的となるため、単なる不満や自由な意見を出すだけではなく、誤送信を減らすという本質に基づいたカイゼン意見を持てる、ユーザビリティに精通した社員を集めることが必要でした。
そのため、社内で見た目のカイゼンを支援している組織、D-Labというものがあるのですが、そのD-Labに所属するデザインサポーターたちを中心に選出し、質の高いコメントを抽出できるようにしました。
そして、現地調査の対象社員については、検討段階で対象部署、そしてメールの質と量まで絞り込んであったので、その中でUXに興味を持ってくれたメンバを中心に選出することとしました。
というのも今回の支援には、社内におけるUXデザイン推進担当として、各々UXに触れてもらってその有用性を浸透させる、という隠れミッションもあったのので、調査を受けることで、触れて、学んでいただければ、という思惑がありました。
更に、この支援には、デザインコンサルティングを行っている、2017年4月に統合して同じ会社になった旧NTTアイティ社、こころを動かすICTデザインラボ(以下こころラボ)のサポートもありました。
こころラボに、CiperCraft/Mailを導入していなかった、旧NTTアイティ社社内での調査を実施いただき、当社内では対象者がいなかった、初めて利用する方のコメントも収集することとしました。
...ということで、調査の事前準備が完了しました!
実際の調査内容、そしてその結果は...
次回につづく!
ちなみに、次回以降の予告を兼ねまして、調査Aで抽出した誤送信の根本的な要因を防ぐためのヒントは...
この写真の中にあります。どうぞお楽しみに!
※Windows は米国 Microsoft Corporation の米国およびその他の国における登録商標です。
※「CipherCraft」はNTTテクノクロス株式会社の登録商標です。
※その他会社名、製品名などの固有名詞は、一般に該当する会社もしくは組織の商標または登録商標です。
2001年入社時より、Webシステムを中心にユーザ向け画面のデザインを担当。 2015年秋よりUXデザイン推進担当として、社内外にUXデザインを広める役割を担う。 2017年、HCD-Net認定人間中心設計スペシャリスト資格取得。 結婚披露宴のお色直しで新婦と共に「ふたりの愛ランド」を歌いながら登場するなど、面白く楽しませることが好き。