心の仕組み、記憶と行動を左右~UXデザインを考える上で~
当社こころを動かすICTデザイン室の大野健彦が、UXデザインを考える上で知っておくべき心の仕組みとして、記憶と行動についてご紹介する。
(366)日のUXデザイン 第15回
- 2019年10月03日公開
「金融経済新聞 2019年04月22日 2面 TECH×HUMAN(7)」より転載
第一回ではUXデザインの概念と重要性について、コンビニにおける買い物行動を題材として述べた。
第二回はUXデザインを考える上で知っておくべき心の仕組みとして、記憶と行動についてご紹介する。
まず記憶について、人の記憶はコンピュータとは大きく異なり非常に柔軟ではあるが、何もかも正確に記憶することはできない。
これがUXデザインにおいてとても重要である。
作業がうまくいっているときは、その出来事を記憶することはほとんどない。スマホを無意識に操作していた、ということはよくあるだろう。
しかし、作業に失敗したり、時間がかかると、その出来事は強く記憶される。また作業が快適でない、例えばアプリの反応が少し遅いという違和感も記憶に残る。
つまり作業でネガティブな要因が発生すると、それは心に強く刻まれる。
そこでUXデザインでは、人がサービスを利用するあらゆる接点で、ネガティブに感じさせない必要がある。
一方、何か予期せぬ良いことがあると、それはとても印象に残る。
しかしながら、人はすぐ慣れてしまう。最初は印象が強くても、同じことが繰り返されるとすぐに何も感じなくなる。
これも人ならではの心の特徴である。
つまり人に継続的にポジティブな印象を持ってもらうには、同じことを繰り返すだけでは不十分で、少しずつ内容をアップデートしていく必要がある。
多くのスマートフォンアプリが頻繁に行うバージョンアップには、ポジティブな印象を継続的に与える効果がある。

次に行動について、人は合理的に考えて、その通り実行すると考えられがちである。
しかし実際は大きく異なる。我々の調査によると、その時々の状況、例えば誰とどのような場所にいるか、サービスがすぐに使えるか、他にどのようなサービスがあるかなど多種多様な要因によりサービスの使い方が大きく変化する。
そのため、サービスが実際に使われる場所や使われ方を十分に想定し、そこで快適に使われる条件を明らかにする必要がある。
次回からは、いよいよこの複雑な心の仕組みに対して、どの様にUXデザインを行うべきかを述べる。
転載を快諾いただいた金融経済新聞様に感謝します。
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心の仕組み、記憶と行動を左右~UXデザインを考える上で~(今回)
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NTTテクノクロス株式会社
こころを動かすICTデザイン室
シニアUXエキスパート
1994年、NTT入社。以来、研究所で人々が使いたくなるサービスのあるべき姿に関する研究開発に従事。2014年よりNTTアイティ(現・NTTテクノクロス)において研究成果を活用したUXデザインコンサルティングを開始。