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OpenStackSummitBarcelona速報第二弾

10/24(月)-28(金)の5日間、バルセロナにてOpenStack Summitが開催されています。26日に行われた講演についてお伝えします。

Hola!

バルセロナから2回目のブログ更新です。

<第一弾はこちら>

今回の記事では26日に行われた講演についてお伝えします。

キーノート

午前は2回目のキーノート(基調講演)が行われました。

まず始めに、OpenStack Foundation Executive DirectorのBryce氏から

「将来はマルチクラウドである」

という強いメッセージが打ち出されました。

最近「ハイブリッドクラウド」という言葉を耳にする機会が増えてきましたが、
なぜここで「マルチクラウド」という言葉を使ったのでしょうか?

OpenStackを利用した大規模なシステム現在も多数作られています。
そのため、そういった現状を踏まえたであろう

「スケールとは単にサーバの台数で計るものではなく、
利用するソフトウェアの数も考慮しなければならない」
「同じクラウドで多数のソフトウェアを利用することは大きな問題を招く可能性があるため、
いずれはプラットフォームを分けるようになるだろう」

という説明がありました。
つまり、パブリッククラウド、プライベートクラウドの組み合わせ関係無く運用できる時代が来た、
それを単純に「マルチクラウド」と表現したと解釈できます。

しかし、メッセージはそれだけではなさそうでした。
講演の中ではさらにOpenStackに対する3つの視点が挙げられました。

  • イノベーティブであり続けること
  • コラボレート
  • 成功の複製

です。

OpenStackのユーザは世界中に多数いて、独自のサービスや仕組みを生み出しているユーザも多いです。
そして、それらのユーザOpenStackという一つのAPIの塊を利用していることから、
お互いの知見を容易に融合させ、さらに新しい価値を生み出すことが可能です。

また、融合の対象はOpenStackコンポーネントに限りません。
例えばKubernetesなど、同じくオープンなソリューションであれば、 OpenStackと簡単に組み合わせることができます。

「ユーザの増加に伴ってイノベーションが増え、さらにコミュニティが拡大していく・・・
そういった状況になったことで、かつてのようにAWSなどのパブリッククラウドに引けを取っていた時代は終わった!」

つまり、複数クラウドを利用する中で、あえてパブリッククラウドを使わないという選択肢を選べるようになった、
私にはそんなメッセージを訴えているように聞こえました。

さて、講演の中には先日に引き続きコンテナの話題がありました。
その中から、女性向け携帯エンタテイメントを提供する企業の事例を紹介します。
サービスをベアメタル上のコンテナで提供しているそうです。

  • 25以上のサービス
  • 3億のユーザ

という大規模なサービスを展開しており、インフラも大規模です。

コンテナのホストにベアメタルを選んだ理由としては、

  • 性能が高い
  • コストパフォーマンスがよい
  • デプロイが高速である

ことが挙げられました。

私が今回のサミットで見たコンテナデプロイのデモは、
全てMagnumによってデプロイされたVMにKubernetesを導入し、
その上でコンテナを動かすというものでした。

この発表は、性能にシビアなサービスでは仮想化のレイヤを少なくする工夫が必要だという
見落としがちな観点を思い出させてくれるものであったと言えます。

興味深かったセッション

1, Enable GPU Virtualization in OpenStack

OpenStackでGPU仮想化を実現する内容です。

GPU仮想化はクラウドゲーミング、自動運転、ビデオストリーミングなどの分野で有効ですが、
現在のOpenStackには無い機能であったため、立ち見が出るほどの人気セッションとなりました。

開発方針として、単にNovaにGPU仮想化機能を追加するのではなく、
他の拡張機能を追加できるような汎用性を持ったコンポーネントを作るという方針にしたそうです。

私としては将来の多様なニーズに対応するための鍵になると睨んでおり、
今後重要性が増してくるコンポーネントだと考えています。

2. Build the Artifical Intelligens Cloud -Provision and Manage TensorFlow cluster with OpenStack

Googleが開発した機械学習(多層ニューラルネットワーク)ライブラリであるTensorFlowを
OpenStackで利用するという内容です。

聴講者も200人弱と、注目を集めていたセッションでした。

発表者はOpenStackへTensorFlowを統合する案について、2種類を挙げていました。

  • 既存のOpenStackコンポーネントであるMagnumからKubernetesクラスタを構築し、
    その上でコンテナとしてTensorFlowを動かす。
  • 既存のOpenStackコンポーネントであるSaharaの一機能として統合する

上記2案のうち、個人的には1つ目のMugnum+Kubernetes案に賛成です。
コンテナの起動までをワンストップで実行できないというデメリットはありますが、
Kubernetesの機能であるオートスケールなどのメリットを享受することができます。

Mugnumの機能としてオートスケールを実現する、という動きがあること、
コンテナ利用の関心が高まっていることも考えると、
将来的にも1つ目の案が合理的な選択だと判断されるのではないかと思います。

おわりに

OpenStack Summit速報 第二弾をお伝えしました。
明日も引き続きサミットに参加し、最新情報をお伝えしていきます。

お楽しみに!!

連載シリーズ
テクノロジーコラム
著者プロフィール
渥美 慶彦
渥美 慶彦
NTTソフトウェア株式会社
クラウド&セキュリティ事業部
第一事業ユニット