実はこんな業務にも...仮想通貨だけではないブロックチェーン活用例
ブロックチェーンの仕組みをおさらいしつつ、具体的な活用例について解説していきます。
特集記事
- 2018年01月31日公開
情報システム部門の方であれば、「ブロックチェーンなんてまったく知らない」というはずはなく、ある程度の知識は持っているのではないでしょうか。しかし、実際に業務としてブロックチェーンに向き合わなければならないのは金融業界くらいで、自分たちにはあまり関係がなさそうだと考えている方もいるかもしれません。ブロックチェーンは仮想通貨や金融取引のためのインフラなどにとどまらず、実は各分野での活用が見込まれています。そのため、実用的なシステムに持ち込むためのPoC(Proof of Concept=概念実証)も、金融系のみならず、すでにそのほかの業界へ展開しており、様々な業務において実施されています。今回はブロックチェーンの仕組みをおさらいしつつ、具体的な活用例について解説していきます。
ビットコインの中核として生み出された画期的な技術、ブロックチェーン
ブロックチェーンは、ビットコインの考案者であるナカモト・サトシ氏がビットコインを支える基盤技術として考案した「分散型台帳技術」です。分散型ネットワークを構成する多数のコンピュータに、公開鍵暗号などの暗号技術を組み合わせ、取引情報などのデータを同期して記録する手法を用いています。この仕組みこそが、次項で説明するような数々のメリットにつながっており、それを利用して銀行を使わない貨幣取引を成立させたのがビットコインなどの仮想通貨というわけです。
さらに、ブロックチェーンの活用範囲を広げるのが、ブロックチェーン上で特定の契約による合意を成立させる「スマートコントラクト」の概念です。これは、ブロックチェーン技術を活用したアプリケーションプラットフォームの中で契約の条件確認や履行などを自動で行う技術であり、様々な取引や手続のあり方に変革をもたらすものとして期待されています。
なぜ、多くの企業が注目するのか?ブロックチェーンの5つの特徴
ブロックチェーンが注目される理由としては、次の5つの特徴が挙げられます。従来のシステム構築ではアプリケーションレベルで実現する必要があったものが、ブロックチェーンの仕組みのレベルで行えることが大きなメリットとなっています。
1)トレーサビリティ
異なる事業者間で容易にデータを共有することが可能な上、自動的に取引の履歴が記録され、改ざんが困難な仕組みのため、信頼性の高いトレース(追跡)機能を提供できます。
2)全員で情報を共有
ネットワーク上にある複数のノード(端末)でデータを分散管理しつつ、全体で整合性が失われないようなかたちで共有するため、従来のような、全ての情報を集中的に処理・記録する中央集権的なサーバを必要としません。
3)無停止(ゼロダウンタイム)
中央集権的なサーバに依存した取引インフラでは、そこを狙ったサイバー攻撃、あるいは負荷の一時的な増大などによって不具合が生じた場合には、システム全体でダウンタイムが発生してしまいます。しかし、ブロックチェーンの場合は、一部のノードが落ちても、ほかの参加ノードが生き残っていれば処理が続行されるため、いわゆる「ゼロダウンタイム」が実現されています。
4)データの改ざんが困難
ブロックチェーンでは、取引データを集めたブロックを、時系列順にチェーン (鎖) 状につないでいます。このときに、直前のブロックをハッシュ関数で暗号化したものを、次のブロックに格納するといった構造になっており、過去のブロックを改ざんすると、それ以降の全ブロックを書き換える必要が生じます。そのためには膨大な計算処理が要求されるため、改ざんは困難というわけです。また、一部のコンピュータで取引データを改ざんしても、ほかのコンピュータとの多数決によって正しい取引データが選ばれるため、事実上改ざんが成立しにくい仕組みになっています。
5)低コスト
2)~4)で挙げた特徴によって、バックアップやセキュリティなどに多大なコストをかけずに済ませられるため、システム面でのコストを削減できると言われています。また、それだけではなく、スマートコントラクトが金融機関のオペレーションコストの削減をもたらすように、そのほかの業務においても、ブロックチェーンの特性を生かして業務の効率化を図ることで、大きなコストダウンにつながる可能性があります。
ここまで、5つの特徴を簡単にご紹介しました。
それぞれの詳しい解説を「ブロックチェーン入門シリーズ 第1弾:ブロックチェーンとは?」に掲載しております。
また、これらの特徴を持つブロックチェーンが、私たちの生活をどのように変えていくのか?「第2弾:ブロックチェーンの可能性」も合わせてお読みください。
発想しだいで広がる活用分野。こんなユースケースが見込まれている
こうした特徴はどのような事業や業務に活かせるのでしょうか。金融分野以外でのブロックチェーンの活用例を挙げてみましょう。
食品や製造業のトレーサビリティ
「改ざんが難しい」「データ変更者が明確になる」というブロックチェーンの特性を利用して、食品や製造業のトレーサビリティの信頼性を高めることが可能です。畜産農家から解体業者、加工業者といった各々の工程において、「誰が育てたか」「誰がいつ解体したか」「誰がいつ加工したか」といったデータを改ざんできないかたちで記録するとともに、消費者は小売店に並ぶまでの流通経路を容易に追跡できます。
レンタカー会社どうしでの在庫情報共有
ブロックチェーンを用いれば、異なる組織どうしでも容易に信頼性の高いデータ連携や取引の基盤が構築できるため、別々のレンタカー会社どうしで空きレンタカー情報の共有を行うといった使い方も可能です。これにより、利用者が借りたいタイプのレンタカーの在庫が自社にない場合には、ほかのレンタカー会社から調達を行い、スマートコントラクトによりアフィリエイト(紹介料)の支払いまで行えるような仕組みが構築できます。
マンション管理組合の運用
マンション管理組合の運営においては、組合員には年度報告書のみが公開され、マンション管理会社や業務実施業者、そして、管理会社と組合理事などがどのようなやりとりをしているかが見えにくいというケースも多々あります。そこでブロックチェーンを適用すれば、実施業者、管理会社、組合理事、そして、組合員に至るまで、全ての関係者でデータを共有するとともに、監査証跡として利用できます。管理業務に関する様々な報告や支払いの透明性や信用性を高め、組合理事や管理会社の健全性を客観的にアピールできる効果も期待できます。
応用サービスの実現は決して簡単ではないが、環境も徐々に整いつつある
このようにブロックチェーンはうまく活用すれば、様々な業務の効率化やコスト削減をもたらすと言われていますが、テクノロジーとしてはいまだ発展途上の状態で、今後の動向が不確実な部分も多々あり、また、導入すれば必ずメリットが見込めるというものでもありません。そのため、ほかのシステム導入にもまして、事前にPoCをしっかりと行い、対象となるビジネスや業務の要件に本当に合うのか否か、具体的にどのような効果が見込めるのかを検証することが重要だと言えます。
実際、ブロックチェーン技術をいち早く取り入れようという企業では、サービスの実現に向けてPoCで効果や課題を確認することに取り組んでいます。しかし、ブロックチェーンが出力するログ情報はテキスト形式の数字の羅列であり、PoCの結果としてブロックチェーンの内容がどうなっているのか、評価がしにくいといったことがありえます。また、将来的に実運用を行うときに、システム管理者やシステム利用者がこの情報を見ても、サービス運用状態を視覚的に理解できないという問題がありました。
ただ、ブロックチェーンへの関心が高まるとともに、関連ツールなども揃ってきています。NTTテクノクロスでもブロックチェーン技術を利用したサービスの運用管理に必要なツール群の提供を開始しており、その第1弾として、ブロックチェーンの状態をグラフや図で表示できる「ContractGate/Monitor」を発表しました。ブロックのつながりやブロック番号・ブロック生成時間・ブロックハッシュなどの最新の状態を視覚的に確認可能なほか、アプリケーションとブロックチェーン基盤間のトランザクション数もグラフで表示されるため、アプリケーションの運用管理を容易にすることが可能です。
そのほか、NTTテクノクロスではブロックチェーンに関連する「コンサルティング」「アプリケーション開発」「ブロックチェーン基盤構築」「開発者向け技術研修」などを通じて、様々な事業でのブロックチェーン実用化を支援するサービスを提供しております。これを機に、貴社ビジネスにおけるブロックチェーン活用の可能性を一緒に検討してみませんか?