開発担当がUXデザインをOJTで学んでみた(前編)
それまでの業務の割合は「開発:デザイン=99:1」。デザイン業務は初心者の中の初心者が、「UXデザインをOJTで学んでみた」経験をお話ししていきます。今回は前編です。
(366)日のUXデザイン 第19回
- 2021年03月29日公開
はじめまして。流杉です。
私の業務の割合としては「開発:デザイン=99:1」。
つまり、デザイン業務は初心者の中の初心者です。
そんな私が「UXデザインをOJTで学んでみた」経験をお話ししていきます。
UXデザイン手法を解説するのではなく、実践したときの感想がメインとなります。
開発職である私が、UXデザインに取り組んだ中で得た「気づき」を記しております。
同じ状況にある方の参考になればと思います。
実施したデザイン工程は、当社グラフィックレコーディング(グラレコ)チーム『TXフェニックス』にまとめていただきました。以下をご覧ください。
前編となる本記事では、「施策のキックオフ」と、グラレコ中にも記載のある「ユーザーインタビュー」「インタビュー分析」についてお話させていただきます。
初心者といってもどの程度のレベルなのか?
2017年に社内のUXデザイン系研修に参加したことでデザインに興味を抱き、社内の研修講師にアクセスしました。
その後、デザインコンサルティングを行っている社内組織である「こころを動かすICTデザイン室」「UX/UIデザインラボ」から支援依頼があった際、サポート要員のひとりとして、数回、数時間、スポット的に参加していました。
今回の案件:「壁ジャーナル」の電子版立ち上げ
現状は壁に貼っている新聞記事を社内サイトでただ羅列しているだけであるため、新たにWeb向けの電子版を立ち上げたい!という依頼が届きました。
しかも、デザイン人材育成の一環として、私がリーダー的な存在となって案件を回してほしいという...。
「壁ジャーナル」とは?
当社社内の掲示板やサイネージに掲示されている社内報の1つで、「壁新聞」と呼ばれています。
- 「ちょっとした笑顔をつくることが私たちの使命」をモットーに2015年1月創刊
- 2週間に1号程度の発行頻度で、オフィス全拠点の掲示板に紙媒体として掲示(一部サイネージ利用)
- リモートワーク推進により、2020年4月よりPDFを社内イントラに掲載
1.依頼者の想いをヒアリングして、ゴール(目標)を明文化&共有する
まず依頼者がUXデザインに触れる機会がなかったということでUXとは何か?ということをお話し、UXデザインの過程や必要性を説明。その後、具体的な今後のアウトプットやスケジュールを説明、共有していきました。
- プロジェクトのゴール(目標)
- ターゲットユーザ
- 全体スケジュール(実施項目検討)
- 具体的なアウトプット
ゴール(目標)を明文化&共有
上記の中で特に「ゴール(目標)」を明文化&(都度)共有することが非常に重要と感じました。
この「ゴール(目標)」がふわっとしていたり、関係者への共有がされていないとUXデザインの工程で実施する内容が主旨とずれてしまったり、関係者と円滑にUXデザインが進められない、といったことがありました。
2.ユーザインタビューは「常に全力笑顔!」「バイアスに注意!」「通信環境が大切」
ここでは、ターゲットユーザに対してデプスインタビュー(以降、インタビュー)、行動観察を実施しました。
デプスインタビューとは?
1名のモニターに対して、詳細に話を伺う。あらかじめ大まかなインタビュー項目を定めておき、それぞれの項目を詳細に伺う、半構造化インタビューを行う。
行動観察とは?
実際のユーザの行動を観察することで、何をやっているのか、そのときに何を考えているのかを知る事ができる。
インタビューでは、社内HPや各組織サイトなどを使った情報収集について、日常的にどのように行っているか、そこでの課題は何かを聞き出しました。 (インタビュー時間の中で、行動観察も実施(提示した社内情報へアクセスするための操作を観察))
常に全力笑顔!
インタビューでは「常に全力笑顔であること」を意識して進めました。
なぜ「全力笑顔」なのか。コミュニケーションを取ろうとしている二者が互いを信頼し合い、気兼ねなく、心を開いて語り合える関係を構築する(ラポール形成)ために、特に意識したことの一つです。
インタビュー対象者の方も話しやすい雰囲気でしたとおっしゃってくださったので、素直に受け止めたいと思います(笑)。
バイアスに注意!
次に、インタビューを実践して気を付けなければいけないな、と感じたこととして、自身に「バイアスがかかってしまった」ことです。
予定していたインタビュー項目と類似した内容を他で聴けた(と思っていた)ため、予定していた項目を飛ばして進めたところ、インタビュー終盤でOJT指導者からの指摘が入り、あたらめて予定していた項目を確認した際に新しい気づきを得られる発言がでてきたことがありました。
インタビューで予定している項目は、依頼者からの声などから検討した必須項目であり、聞き逃しがないよう注意が必要だと実感しました。
通信環境が大切
最後に、リモート環境でのインタビューならでは感じた「通信環境が大切」について。インタビュー者とインタビュー対象者、共に顔出し音声ありで実施していましたが、安定した通信が保てず、音声のズレや音飛び、映像の乱れや停止などが発生したことがありました。
インタビュー中、何度も聞き返してしまったり、映像の乱れが落ち着くのを待ったりといったことが発生し、リズムが悪くなりお互いのストレスになることがありました。
テンポ良くインタビューを行うため、感じる必要のないストレスを発生させないためにも、「通信環境って大切」と心から感じました。
3.インタビュー分析は「気づきをしっかり吸い上げる」「地道」
インタビューで得られた発言に対して、カテゴリ分け(社内情報との接点、壁新聞との接点など)を実施。その後、発言全文の一つ一つを読み、自身のバイアスは一切排除して事実に基づき,課題やニーズに繋がりそうな「気づき」をまとめるといった作業を行いました。
気づきをしっかり吸い上げる
本作業を行っている中で、インタビュー対象者より「こうしたほうが良いと思う」「これなら壁新聞をより読むようになる」といった、ポジティブな要望や提案を多く発言されていたことで、「気づき」=「ターゲットユーザの要望、提案」という思考となってしまい、ネガティブな発言(気づき)を逃してしまうことがありました(作業終了時のチェックでOJT担当者よりご指摘を受け発覚)。
この時、ネガティブな発言(気づき)をしっかり吸い上げることが出来ていなかった場合、後のアイデア創出の幅が狭くなっていたかもしれないと反省しました。そして一つ一つの発言にしっかり向き合い、ポジティブ、ネガティブ関係なく「気づきをしっかり吸い上げる」ことがとても重要だと感じました。
地道
また、本作業は「地道」の一言に尽きると思います。インタビューでの発言を文字に起こした大量のデータを一つ一つ読み、カテゴリ分けを行い、カテゴリ内で似た発言は纏める。似た発言をまとめるときは「こうだろう」という主観が混じらないように注意し、根気強く着実に気づき吸い上げる。一連の作業は、まさに「地道」であると身を持って感じました。
次回予告
本記事では「施策のキックオフ」「ユーザーインタビュー」「インタビュー分析」についてお話させていただきました。
次記事では「既存社内報分析」「ジャーニーマップ」「アイデア創出」についてお話したいと思います。
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