『NTT-TX Design Sprint』が生まれるまで
UXデザインを具体的にどのように行えばよいのか?その手段の1つであるDesign Sprintを、当社でアレンジした「『NTT-TX Design Sprint』が生まれるまで」のご紹介をします。
(366)日のUXデザイン 第18回
- 2019年10月10日公開
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
HCD-Net認定 人間中心設計スペシャリスト 井山貴弘です。
前回まで当社大野によるUXデザインの必要性を説明する連載をしていましたが、今回はUXデザインを具体的にどのように行えばよいのか?
UXデザインを内包した手段の1つであるDesign Sprintを、当社でアレンジした『NTT-TX Design Sprint』が生まれるまでのご紹介をしたいと思います。
ルールに縛られず柔軟に考えるための手法
2019年3月、株式会社ニューロマジックのフェリペ・ポンテス氏と永井菜月氏による『NTT-TX Design Sprint』を、3日間にわたって開催しました。
参加した当社メンバは、こころを動かすICTデザイン室、UXデザイン推進(現UX/UIデザインラボ)、戦略ビジネス特区、そして製品担当から選抜された計14名。
参加者の選抜基準として、『UXデザインやデザイン思考の習得と普及に意欲的で、かつ一定のスキルを持っていること』というものがありました。
今プログラムは単にSprintを行うだけではなく、数々の手法とそのファシリテート方法を身に付けて実業務で活用できるようになる、という目的があったからです。
チームのミッションの1つに「UXといえばNTT-TXという認知を高めたい」があります。
そのために、まず私たち自身がルールに縛られず柔軟に考えるための手法を提供するスキルを身に付け、そして社内や社外に浸透させ、ビジネスに、社会に貢献していくことが必要になります。
ビジネスは刻一刻と変化しており、そのスピードは年々加速する一方です。
1つのルールはすぐに過去のものとなっていき、新たな選択を迫られます。
日本人は1つのルールに従うのが得意と言われています。
逆を返せば、ルールにないことをするのが苦手とも言えます。
日本企業は、ルールに従う日本人社員が変化するビジネスのスピードに合わせられように、ルールに縛られず柔軟に考えるための手法をわかりやすく適切に提供・運営していく必要が、海外企業以上にあると言えるのではないでしょうか。
だいぶ強引な論理展開ではありますが、海外企業が活用しているDesign Sprintという手法を、日本企業も導入していく必要があると考えられます。
実業務に適用する場合、Sprintの内容は課題によって変わるものであり、1つに縛られるものではありません。
たくさんの手法を知り、それらを適切に組み合わせることで、課題を解決していくことができます。
2つのDesign Sprintが融合
『NTT-TX Design Sprint』の特長として、2つのDesign Sprintが融合しているということがあります。
1つ目は、ジェイク・ナップ氏の提唱する「Product Design Sprint」。
チームに既に新たなアイデアや方向性があり、チーム内に知見を持ったメンバが多く参加しているときに有効です。
2つ目は、デニー・ピニェイロ氏の提唱する「Service Design Sprint」。
チームがまだ明確なアイデアがない段階や、チーム内に知見が深くないメンバが多く参加しているときに有効です。
講師のフェリペ氏は、前者をテスト重視の米国式、後者を調査重視の欧州式、とも表現していました。
では、日本企業にはどちらのDesign Sprintが適しているかというと、「文化が異なるのでどちらも一長一短がある」という回答になります。
そのため『NTT-TX Design Sprint』では、事前にプログラムを検討し、当社がお客様提案/提供時に抱える課題を演習テーマとして設定し、当社と当社のお客様、BtoB/BtoBtoC業界で使えるSprintにしました。
それから2つのDesign Sprintの中から工程ごとに、最も日本企業で有効と考えられる手法を選定し、ひとつひとつの手法を学び、スキルとして身に付けられるプログラムを策定。3日間に渡って実施しました(インタビュ宿題も含めると4日間)。
DAY 1:課題を設定し、ソリューションを創出していく日
(HOMEWORK DAY:対象ユーザとなる人にインタビュを行う日)
DAY 2:ソリューションを1つに決めて、そのカスタマージャーニーをつくる日
DAY 3:ソリューションを組み立てる日
真剣に楽しく取り組める
それぞれ詳細まで書くと記事が長くなってしまうため、割愛しますが、1つ1つの工程はもちろん、合間のアイスブレークまでも質が高く、それ単体でアイデア発想をできるほどでした。
1番のポイントは、真剣に楽しく取り組めること、でした。
たとえばペルソナをヒーローと呼び替えたり、1つ1つの資材がオシャレだったり。どこかワクワクした気持ちにさせてくれる仕掛けがあって。
仕事は真面目に大人しく、という想いをシステムにまで背負わせてしまったことが、過去のエンタープライズ系システムが見づらく使いづらいものになった要因と言われることもあります。
使いやすく笑顔でポジティブになってもらえる、そんなシステムやサービスを考えるためにも、開発者側が検討時点で楽しさを持つことが大事なんだと思います。
ふざけて手を抜いてではなく、真剣に取り組むからこその楽しさ、笑顔をいかに引き出して、いいアイデアを創るか。そんな場のつくり方から改めて勉強することができました。
そんな充実した3日間の最後には、『NTT-TX Design Sprint』の履修完了を示す卒業証書が手渡されました。
「実用的」「効率的」「革新的」そして「有意義」なSprint
この記事を執筆している段階で、『NTT-TX Design Sprint』実施から半年経っています。
その間、Sprintで学んだ手法が、ひとつひとつパーツとして活用され、自社製品の開発を中心に、着実に実績をつくれています。
単なる学びだけではなく、ビジネスの課題に取り組むときに活用できる、「実用的」「効率的」「革新的」そして「有意義」なSprintであったと感じています。
また、直接的にビジネスに結び付ける以外の活用法もあります。
「UXデザインがなぜ必要なのか?」を学んだあとには、「UXデザインを業務でどう使えばいいのか?」という課題が待ち受ける職場が多いのではないでしょうか。
業務で使う前の壁として、どうやってUXデザインを業務に組み込めるよう上司を説得するかで悩んでいる方も多いと思います。
調査や分析、そんな時間のかかることより目先の売上だという声もあることかと思います。
Design Sprintは、短期間で調査・分析から立案、検証まで行うことができます。
UXデザインに懐疑的な上司を巻き込んで、Sprintを行い、その効果を体感いただき、納得感を持たせる。
そのあとで、時間をかけた調査や分析など、UXデザインを使った開発に導いていく。
そんなきっかけのツールとしても活用できると思います。
当社としても『NTT-TX Design Sprint』を活用しながら、社内外に「UXといえばNTT-TX」という認知を持っていただけるよう実績をつくり、このSprint、この手法に磨きをかけていきたいと考えています。
まだまだ1歩踏み出したレベルですが、この1歩が当社の1歩でなく、日本企業の1歩であった、と言われる未来を思い描きながら、まい進していきたいと思います。
『NTT-TX Design Sprint』の取り組みに興味がある方、質問がある方は、以下バナーの遷移先にあるお問い合わせフォームより、お気軽にご連絡ください。
※会社名、製品名などの固有名詞は、一般に該当する会社もしくは組織の商標または登録商標です。
2001年入社時より、Webシステムを中心にユーザ向け画面のデザインを担当。 2015年秋よりUXデザイン推進担当として、社内外にUXデザインを広める役割を担う。 2017年、HCD-Net認定人間中心設計スペシャリスト資格取得。 結婚披露宴のお色直しで新婦と共に「ふたりの愛ランド」を歌いながら登場するなど、面白く楽しませることが好き。