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地震大国日本、企業の災害対策をICTが変える!

2011年の東日本大震災をきっかけに、各企業におけるリスクマネジメントの一環として、BCP対応が緊急課題となり、取り組みが加速していきました。「BCP」とは災害発生時に企業がどのように行動するかをあらかじめ定めておく、事業継続のための計画のことです。今回は、このBCPに基づく災害対策のなかで、ICTをどのように活用すれば良いかをご紹介します。

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人類はこれまでに三つの大きな革命を経験してきたといわれています。

一つ目は農業革命、二つ目は産業革命、そして三つ目が情報革命ですが、私たちは今まさに三つ目の情報革命を現在進行形で経験しているといえるでしょう。

ICTの進歩は、私たちの生きる世界をあらゆる意味で大きく変えました。ビジネスの世界においても、産業、工業、農業、サービス業といったさまざまなジャンルにおいて、ICTを活用したイノベーションが巻き起こり続けています。

通信環境が整備され、インターネットが社会の重要なインフラとなり、コンピュータがごく身近なツールとして一般家庭に普及したことで、情報の流通はかつてと比べて驚くほどスピーディになりました。昨今では、スマホの急激な普及がその流れにさらに拍車をかけ、「誰もが、いつでも、世界中の情報に手軽にアクセスできる時代」が訪れようとしています。

こうした情報革命によってもたらされる変化の流れの一端を、災害対策の分野にも垣間見ることができます。近年、立て続けに発生した震災においても、災害発生直後の情報伝達や事後の支援活動において、ICT技術が幅広く活用されました。

東日本大震災から熊本地震へ――ICTの活用が災害対策をどう変えたか

2011年に発生した東日本大震災は、大変痛ましい出来事であった一方で、災害発生直後から事後の復興支援までのさまざまな局面でICTが活用されたことから、国家や企業の今後の災害対策を考え直すうえで重要なターニングポイントとなりました。

東日本大震災発生当時は、スマホやSNSの普及が加速し始めたころでもあり、情報の公開や行方不明者の捜索、被災地への応援メッセージ送信などに、TwitterやFacebookなどのSNSが大いに役立てられました。

例えばTwitterでは、タイムラインで誰からともなく「被災地を支援しよう」「電気の消費を控えよう」といった呼びかけが起こり、それを契機として日本国民が一つにまとめ上げられていく様子は、傍で見ていても驚きを感じるようなダイナミックさがありました。

他方、災害発生直後の通信インフラの喪失といったトラブルが被害の拡大を招いてしまったという課題も残されました。地震が発生すれば通信網が寸断され、被災地など本当に情報を必要とする場所でインターネットアクセスが不能となってしまう場合もあります。実際、津波の被害を受けた地域においては、通信インフラの全面的復旧に約1ヶ月の期間を要し、文字通り「陸の孤島」と化してしまった地域も少なからずありました。

こうした反省点を踏まえ、自治体や企業が災害対策を強化しつつあるなかで発生したのが、2016年の熊本地震でした。災害の規模や状況が異なるため一概に比較して論じることはできないのですが、熊本地震においては災害発生後でも通信サービスを利用できる地域が比較的多かったといいます。復旧までにかかった時間も東日本大震災と比較すると短く、発生から2週間程度でほぼ全面的に復旧されています。また、大手通信会社三社によるWi-Fiスポットや充電サービスの無料提供といった試みも、災害発生直後の混乱の鎮静化に一役買ったといえるのではないでしょうか。

被災地支援の観点からは、学生を中心とした有志団体によって公開された「熊本地震リソースマップ」が威力を発揮しました。熊本地震リソースマップは、Googleマップ上にスーパーや飲食店、ガソリンスタンドなどの営業情報を表示したもので、2,000人を超えるボランティアの手で運営されました。また、熊本市長の大西一史氏がTwitter上で市民に呼びかけ、被災地の情報発信を促すような場面も見られました。こうした信頼性の高い情報源が確保されたことが、デマや誤認による混乱の抑止に大きく貢献したといえるでしょう。

企業は災害にどう備えておくべきか

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一方で、企業に目を向けると、熊本地震では災害から比較的迅速に復旧した企業の姿が見られました。

その背景として、東日本大震災の発生以来、いわゆるリスクマネジメントの一環としてBCP策定が喫緊の課題となり、取り組みが加速した事情を見過ごすことはできないでしょう。

「BCP」とはBusiness Continuity Planの頭文字を取ったもので、日本語では「事業継続計画」と呼ばれています。災害などの危機発生時の被害を最小限に食い止め、体制を立て直して速やかに事業を再開させるためには、有事の際の行動指針をあらかじめ定めておくことが大切です。このような計画をBCPと呼びます。

企業が被災後、長期にわたって事業を再開することができなければ、企業として経営的に困窮するのはもちろんのこと、顧客や消費者、パートナー企業に対しても少なからず悪影響を与えます。企業は一般市民とは異なり、自分(組織)の身の安全だけを考えればよいという存在ではないのです。

BCPを策定し、平時より災害発生に備えて適切な管理体制を整えておくことは、地震大国日本で事業を営む企業の「義務」であると言っても過言ではありません。

事業継続計画をICTの観点から考える

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もちろん、高度に情報化した近代社会において、BCPへの取り組みをICT抜きに考えることは難しくなってきています。以下では、BCPの策定・運用において、ICTがどのように関係してくるのかを具体的に見ていきましょう。

①データの保全とシステムの復旧

近年の企業活動は、多くの業務システムによって支えられています。「システムが動かなければ業務が立ち行かない」という場面は、誇張ではなく実際に拡大しつづけているといってよいでしょう。

有事の際に速やかにシステムを復旧させるための手立てを講じておくことは、BCPのなかでも重要な取り組みに位置付けられます。具体的には、システムが利用するデータを定期的にバックアップしたり、停電時にシステムが停止してしまうことのないよう無停電電源装置(UPS)による対策を行ったり、遠隔地とのデータミラーリングを行ったりといった処理を行います。

システムの基盤として、安全かつ安定性の高いクラウドデータセンターを活用することで、こうした目的に対応することができます。

②コミュニケーション手段の確保

いかに日頃から有事に備えていたとしても、いざ災害が発生すれば現場に混乱が起こることは避けられません。そうした場面において重要となるのは、安定したコミュニケーション手段の確保です。

東日本大震災や熊本地震では、連絡手段としてTwitterやFacebook、LINEなどのSNSが活躍しましたが、機密情報を含む企業内の情報伝達にこうしたSNSを使うことはできません。日頃から安全性が高く、安定して使えるビジネス向けのコミュニケーションツールを備えておくのは重要なことだといえるでしょう。

③対策本部の立ち上げ

復旧に向けての活動を展開するうえで、社内の状況を集中的に把握して対策を講じる「対策本部」の存在は重要です。特に、複数拠点で事業を展開する大規模な組織においては、災害発生後速やかに対策本部を立ち上げ、各拠点の情報の集約と指示体系の確立を急ぐ必要があります。

対策本部の立ち上げにおいては、複数メンバー間での会話をスムーズに行えるWeb会議のようなツールが威力を発揮します。

補足:地域社会に向けた情報公開

なお、自社の事業継続のための土台を強固にする一方で、地域社会の一員として災害発生時に地域に向けた支援活動を行うことも、企業としての重要な務めだといえます。避難場所やネットワークアクセス手段、支援物資の供給など、自社の事業特性を生かして可能な範囲で協力することができれば、企業の評判を高めることにもつながります。

避難場所についても、ネットワークアクセス手段や支援物資が提供できなくても、工夫次第で支援できることは見つかります。例えば、昨今、デジタルサイネージを活用した情報発信が注目を集め、さまざまな商業施設で活用され始めていますが、有事の際にはこうしたツールを支援に役立てることも可能です。

高度情報社会に突入し、目まぐるしい速度で姿を変えていく社会のなかで災害発生のリスクに備え続けるのは簡単なことではありませんが、ICTはそうした取り組みにおいて心強い味方となるはずです。「転ばぬ先の杖」という言葉もあるように、常日頃から最新情報を収集し、有事を見据えて対策を講じることが、地震大国日本の企業にとって必要不可欠ではないでしょうか。



参考文献


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