ワークスタイル変革のために、『今』企業ができること
企業や政府から注目を集める「ワークスタイル変革」。従来の働き方にこだわらない、柔軟なワークスタイルを求める声は近年ますます高まっていますが、その背景には何があるのでしょうか? そして、企業が今できることとは? 今回は日本の労働環境が抱える問題から、企業や自治体の取り組みまで、ワークスタイル変革の「今」について考えます。
トレンドコラム Bizニュース
- 2016年12月15日公開
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少子高齢化や介護人口の増加、女性の労働参加率の促進など、現在日本の労働環境をとりまく問題は数多くあります。これらの問題を解消するには、従来の働き方にこだわることなく、ワークスタイルを変えていく柔軟な取り組みが求められているのです。しかし、具体的に何をすれば良いかが見えていなかったり、自社では無理だとあきらめてしまっていたりする企業も多いのではないでしょうか?
最新の統計や国の取り組みから、日本の労働市場が抱える問題について考え、企業や自治体によるワークスタイル変革の実例をご紹介します。
なぜ、ワークスタイルの変革が必要なのか?
現在の日本の労働環境が抱える問題としてまず挙げられるのが、少子高齢化でしょう。2015年に実施された簡易国勢調査では、1920年に調査を開始してから初めて、人口が減少していることが明らかになりました。
また、女性が働くうえでの障壁が大きいことも大きな課題となっています。日本の女性の就業率は、出産や子育ての時期にあたる20歳代後半から30歳代にかけての年代が他の年代に比べて大きく落ち込んでいますが、アメリカやスウェーデン、フランスではこのような傾向は見られません。
そして、やむを得ない理由で職場を離れなくてはならない状況にあるのは、子育て中の女性だけではありません。年老いた親の介護のために離職を余儀なくされる40歳代、50歳代の会社員も増えています。
時間的な制約から介護しながら働くことが難しかったり、働けても不安定な非正規雇用の仕事に限定されてしまったりすることも多く、その結果、貧困状態に陥ってしまうケースもあります。介護は、男女、年齢関係なく、誰もが直面する可能性のある問題だけに、こちらも深刻かつ早急な対策が必要となっています。
どのような解決策が考えられるのか?
このような日本の労働環境をとりまく問題を解決するための対策として、政府は「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」および「安心につながる社会保障」という3つの目標を掲げています。
それぞれの概要は、以下のとおりです。
働き方を変え、労働生産性を向上させる
1つ目の「希望を生み出す強い経済」では、最低賃金や賃金の引き上げや法人税の引き下げ、女性や若者、高齢者、障害者などの活躍を促進することなどに加えて、ITを活用した中堅・中小企業の生産性向上や新事業促進といった地方での先駆的な取り組みを人材面・情報面から支援することなどが掲げられています。
若者が結婚や子育てをしやすい環境づくり
2つ目の「夢をつむぐ子育て支援」では、結婚・子育ての希望が実現しにくい状況を変えることをめざしています。
具体的には、非正規雇用労働者を正社員に転換することや、非正規雇用労働者であっても育児休業を取得しやすくするなど、若者の雇用を安定させたり待遇を改善させたりすることが挙げられています。
結婚や子育ての基盤となる環境および仕事と子育てを両立できる環境をつくり、保育サービスを充実させるなど、妊娠・出産、子育てまでの期間を切れ目なく継続して支援していくことも目標とされています。
介護離職をなくす環境づくり
3つ目の「安心につながる社会保障」では、介護と仕事を両立させるための各種の支援体制により、介護離職をゼロにすることを目標としています。
総務省統計局が発表した「就業構造基本調査」によると、家族の介護や看護を理由とした離職・転職者の数は、2011年10月から2012年9月までの1年間で10万1,000人にものぼるそうです。今後さらに高齢者が増加していくことで、このまま何も対策をしなければ、介護離職をする人の数はますます増えていくいことは間違いないでしょう。家族の介護が必要になっても働き続ける環境をつくるために、この対策案では、介護サービス基盤を確保したり、介護サービスを提供するための人材を育成したりするとしています。
そして同時に、介護に取り組む家族が介護休業や介護休暇を取得しやすい職場環境を整備することで介護と仕事を両立できる労働環境を整備することが挙げられています。
企業や自治体では、どのような取り組みが行われているのか?
このような課題を解決するために、これまでのワークスタイルを変え、より働きやすい環境をつくったり生産性を向上させたりする取り組みは、すでにさまざまな企業や自治体が実施し始めています。
企業での取り組み
長時間労働を減らすためにノー残業デーを設定したり、無駄な会議をなくしたりといった現在の業務のあり方を見直すことで生産性の向上をめざす取り組みが行われています。また、育児や介護中の社員を働きやすくするためには、時短勤務や在宅勤務が選択できる制度を導入することによって、柔軟な働き方を可能にし、子育てや介護と仕事を両立しやすくする環境をつくる必要があります。
日産自動車は、全従業員を対象に、月5回の在宅勤務制度の利用を推奨。育児や介護をしている人に限定せず、すべての従業員を対象とすることで、働く時間の柔軟性を高め、生活の質を向上させることをめざしています。
また、三菱ふそうでは、2014年より間接部門の全社員を対象に在宅勤務制度を開始しました。もともと同社にて育児や介護中の社員を対象に試験導入されていた在宅勤務制度から、「育児・介護」という枠を取り払った形になります。個別の社員だけを対象にするのではなく、全社員にワークスタイルの選択肢を与えることで、例えば育児に力を入れたいと考える男性社員にとっても満足度の高い制度になったといえるでしょう。
在宅勤務の実施にあたっては、モバイルツールを活用し、社外からでも業務を進めやすくしたり、社内のスタッフと常にコミュニケーションを取りやすくしたりする必要があります。ただ、勤務状況の管理がしづらいことや、個人のパソコンを業務に使用することによるセキュリティリスクなどの問題が懸念されています。
自治体での取り組み
さらに、全国の自治体でも、共同宣言やワークライフバランスへの取り組みが行われています。
例えば、東京都では「働き方改革に向けた取組」として、ライフイベントへの対応や地域活動への積極的な参加も容易となる、仕事と生活の調和のとれた働き方の実現に取り組むための共同宣言を行い、さらに、都や東京労働局、労働組合総連合会や商工会議所連合会をはじめとした各団体からなる「東京の成長に向けた公労使会議」を設置し、長時間労働の解消や非正規雇用者の正社員転換・待遇改善などに関する議論を行っています。
また、鳥取県は2015年より、県本庁や事務所にパソコンやプリンターを利用できるサテライトオフィスを設置し、子育てや介護を行う長距離通勤者が自宅の最寄りの事務所で勤務できる制度を導入。さらに、自宅のパソコンなどを利用した在宅勤務の実施も試行しています。
ワークスタイルの変革は、環境の整備から
ワークスタイル変革のためには、これまでとは異なる働き方でも滞りなく業務を進めるための環境の整備をセットで考える必要があります。先述の日産自動車の在宅勤務制度も、音声会議やテレビ会議でコミュニケーションをとったり、離れて仕事をしている人の状態を確認したりできるしくみをITの活用によって実現しています。
新しい働き方の導入にあたっては、どのような環境が必要なのかを明確にして、それを準備することが必要になります。その際には、コミュニケーションや勤怠管理といった業務を進めるためのしくみはもちろん、セキュリティ対策なども欠かせないものとなるでしょう。
参考文献
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