OpenStack Ussuriがリリースされました!
OpenStack Ussuriのリリースハイライトから気になる情報を紹介致します。 また、Ubuntu 20.04(Focal Fossa)のOpenStackに関わる変更も紹介しています。
テクノロジーコラム
- 2020年06月30日公開
はじめに
2020年4月23日、Ubuntuの新たなLTSバージョンとなるUbuntu20.04(Focal Fossa)がリリースされました。
更に2020年5月13日、OpenStackの新たなメジャーバージョンとなるUssuriがリリースされました。
※UssuriはUbuntu20.04でLTSとなるOpenStackバージョンとなります。
Ubuntu OpenStack release cycle(外部サイト)
新たなLTSとなるため、今後よく利用される重要なリリースとなりますので本記事ではOpenStackに関わるUbuntu20.04とOpenStack Ussuriの新機能について紹介します。
OpenStack Ussuri
リリースハイライト
新機能や変更点は以下のページにまとめられています。
ここでは注目度が高いと考えられる、コミュニティの動向が伺える新機能とインスタンス関連の機能をピックアップして紹介させて頂きます。
neutron OVN-ML2ドライバーの追加
OVNはopenvswitchのサブプロジェクトとして誕生したSDNです。
現在はopenvswitchドライバがデフォルトですが、コミュニティでは今後OVNドライバをデフォルトのドライバとする計画があるようです。
Ussuriから新しく追加されたドライバとなりますが、今後主流となる可能性もあるので要注目です。
openvswitchドライバとOVNドライバを機能比較する上で、アーキテクチャと高可用性に影響する違いを紹介します。
- neutronエージェント-サーバー間の通信
- openvswitch rabbitmqを介した通信
- OVN ovsdbプロトコルを用いた通信
- East-West通信
- openvswitch DVRのときだけネットワークノードを介さず通信可能
- OVN 常にネットワークノードを介さず通信可能
- DHCPサービス
- openvswitch network namespace内で稼働するdnsmasqによって提供
- OVN OpenFlowとovn-controllerによって提供
さらにOVNドライバは複数ノードで稼働を検知すると自動的にDVRをつかった高可用性を実現します。
このような点からopenvswitchドライバよりも優れているとして、OVNドライバを推進していくようです。
クロスセルのインスタンスリサイズ/コールドマイグレーション
Ussuriでは異なるセル間でのコールドマイグレーションとリサイズが可能になりました。
ユースケースとしては古いハードウェア群と新しいハードウェア群を異なるセルに分離した際、今回のアップデートによって"古いハードウェア群で稼働しているインスタンスを円滑に新しいハードウェア群に移動させる"といった運用保守面での恩恵が受けられるようになりました。
Glanceイメージプリキャッシュ
virtドライバでは一度作成したインスタンスのOSイメージをキャッシュする機能を備えていますが、Ussuriではこの機能をより発展させたイメージのプリキャッシュ機能が追加されました。
事前にOSイメージをキャッシュしておくことでGlanceサーバーへの負荷軽減やインスタンス起動高速化に寄与します。
今回のリリースでは最小限の実装に留めているためスケジューリングなどの高度な設定は出来ませんが、今後エッジコンピューティングのような大量のインスタンスを一斉にデプロイするユースケースでイメージプリキャッシュがさらに重要になっていくと考えられます。
帯域保証のあるポートを持つサーバーの移動
帯域保証などのリソースリクエストのあるネットワークポートを持つサーバーの退避、ライブマイグレーションが可能になりました。これまでのリリースで段階的に機能拡充してきた本機能ですが、Ussuriでサーバーの移動について一通り実施できるようになりました。(リサイズ、コールドマイグレーション、ライブマイグレーション、退避、shelve)
サーバー作成と同時に帯域保証のあるポート作成はまだ出来ないため、事前にポートを作成してからインスタンスにアタッチする必要があります。
port with resource request(外部サイト)
Glanceマルチストアの機能拡張
Glanceではストアという考え方によってOSイメージを保存するバックエンドを複数選択できます。
Ussuriではインポートしたイメージを複数のストアに保存する、登録済のイメージを複数のストアに保存する、特定のストアからイメージを削除するといった機能が拡張されました。
インポートには次の3種類の方法があります。
- glance-direct(ファイルからイメージ登録)
- web-download(URLからイメージ登録)
- copy-image(あるストアから別ストアにもイメージ登録)
Ussuriからcopy-imageが新たなインポート方法として追加され、OSイメージを手軽に冗長化する事ができるようになりました。
Ubuntu20.04(Focal Fossa)
"Fossa" by zoofanatic is licensed under CC BY 2.0
Python2のサポート終了
2020年1月1日をもってコミュニティサポートが終了したPython2ですがUbuntuのmainリポジトリからインストールが出来なくなりました。OpenStackもPythonで実装されていますが、Python2.7の試験/サポートはUssuriで終了します。 そのためUssuriからはPython3のインタープリターで動作させる必要があります。
Ceph Octopus
OpenStackのバックエンドとしても利用できるCephですが、2020年3月2日に新メジャーバージョンOctopusがリリースされました。Ubuntu20.04LTSでデフォルトで利用可能なバージョンとなります。(Ubuntu18.04LTSでは前メジャーバージョンであるNautilusが利用可能でした。)
cephadm
Octopusでは新たなCephのデプロイツールcephadmがリリースされています。cephadmはコンテナ上でcephサービスを展開・管理するための管理ツールです。更に特徴的な利点としてcephadmで管理されたクラスタのバージョンアップが1コマンドで実施できることが挙げられます。この機能を利用することで、cephクラスタを止めずに(利用可能な状態のまま)、簡単にバグフィックスやセキュリティ対応のアップデートを実施出来るようになりました。まだ現状では安定性が十分ではなく限られた環境でのみ利用を推奨するとのことですが、コミュニティでは今後開発が注力されていくツールとなることが示唆されています。
終わりに
Ussuriではより大規模なOpenStack環境を運用・維持していくための機能拡充がされてきた一方で、新しい機能を標準としたいコミュニティの動向も伺えました。
NTTテクノクロスではコミュニティの最新動向もキャッチアップしつつ、これまでに培ってきたOpenStack構築・運用のノウハウを活かした幅広いソリューションをご用意しております。
Ubuntu/OpenStack/OSS製品について何かお困りのことがございましたら、是非お声掛けください。
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