OpenStack Summit 2017 Boston速報 2日目
OpenStack Summit 2017 Bostonの報告・第二弾です。
テクノロジーコラム
- 2017年05月10日公開
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ボストンからこんにちは!
本日も、OpenStackSummit 2017 Bostonのホットな情報をお届けいたします。
2日目は、キーノート・興味深かったセッション・サミット後のパーティーの様子をご紹介したいと思います。
また、1日目のキーノートの補足も最後に記載しております。
サプライズゲストである、エドワード・スノーデン氏も登場しますので、お楽しみいただけると幸いです。
※なお、本記事の記述は概要に留まります。見聞きしてきたセッションのより詳しい情報は、後日別記事にてご紹介する予定です。そちらもご期待ください!
※第一回の記事はこちら(/column/tec/openstack_summit_2017_boston_1/)をご覧ください。
■キーノート
2日目のキーノートはOpenStackファウンデーションのCOO、マーク・コリア氏が司会を務めます。
OpenStackをとりまく世界
各企業の事例が中心だった1日目のキーノートに比べ、2日目はOpenStackと機械学習の関わりなど、IT業界におけるOpenStackの立ち位置を見直すような内容が中心となります。
印象的だったのが、Ironicが講演の俎上に上がっていたことでした。
Ironicはベアメタルプロビジョニングを行うOpenStackコンポーネントですが、これまで比較的地味な立ち位置で、キーノート等で大々的に取り上げられた記憶はありません。
これは、ここ最近Ironicに(特にネットワーク関連の)機能拡充が行われ実用性が高まったことに加え、VMよりもコンテナが目立ち始めたために、ベアメタルプロビジョニングが脚光を浴びるようになったということかもしれません。
ちなみに、ベアメタルプロビジョニングしたマシンにボリュームをアタッチするというデモでは、作成したボリュームのステータスが「creating」から先に進まない、というトラブルが発生。
「今朝までは動いていたんだけどなあ」という、非常に共感性の高いぼやきが聞けました。
他に面白かったのが、KubernetesとCockroach DB(なんという名前!)というソフトウェアを組み合わせて、異なる環境にデプロイされたCockroach DBであってもクラスタ形成ができることを示す「InterOp Challenge」というデモです。
ここでは、Canonical, Redhatなど、クラウドを運用する計15社の代表者が壇上にずらりと並び、各々のクラウド環境にCockroach DBをデプロイしていきます。
それら異なるクラウド環境にデプロイされたCockroach DBが、マスターとなるクラスタに次々組み込まれていく様は、なかなか壮観でした。
スノーデン氏登場!
本日のキーノートで最もセンセーショナルだったのは、間違いなくエドワード・スノーデン氏のストリーミング映像出演でしょう。
ストリーミング映像による出演とはいえ、アメリカ国内とリアルタイムに通話している様を見ると、(氏の状況を考えると)ちょっと驚かされます。
心なしか普段よりも緊張した面持ちのマーク・コリア氏の質問に対し、「(ブラックボックスになっている各種システムに比較して)オープンソースの重要な点は......我々はより良い世界を望んでいて、我々はそれを作るためにここにいます」と彼らしい回答をすると、会場から大きな拍手が沸き起こりました。
■セッション
ここでは、特に興味深かったセッションについて簡単に記載いたします。
High Availability for Instances: Moving to a Converged Upstream Solution
OpenStackのVMインスタンスの高可用化(を実現するコンポーネントMasakari)に関するセッションです。
まず前提を確認するために、OpenStackのコントロールプレーンとコンピュートプレーン各々の高可用性について説明がありました
コントロールプレーンは既に公式のHAガイド文書があり、解決済みです。
一方、コンピュートプレーンの高可用性については、当該機能を担当するMasakariがまだ活発に開発されており、進行中の状態です。
次に、おなじみ(?)VMに関するペットVS家畜の比喩があり、VMインスタンス高可用性の意義が説明されます。
ここまで説明が済んでから、いよいよMasakariのアーキテクチャやデザインゴール、他の手法に比べた優位性といった内容が説明されていきました。
「novaのEvacuate APIを、ライブマイグレーションAPIと同様に進捗が分かるように改善したい」など、開発のスコープはMasakariだけに留まらずその外にも広がっています。
本セッション、「VMは完全に家畜化しているから、コンピュートプレーンの高可用性はいらないよ」という人ばかりだとそもそもの意義がなくなってしまうのですが、会場には多くの人が足を運んでおり、皆様神妙にプレゼンを聞いていたので、やはり世の中ペットなVMの根絶はできないようです。
このMasakari、実は執筆者(の一人)も開発に携わっているのですが、現状活発に開発進んでおりますので、VMインスタンスの高可用化にご興味お持ちの方はぜひご注視ください(もしくは本記事冒頭の連絡先にぜひご連絡ください)。
Future of Containers in OpenStack
コンテナ作成や管理をすることができるzunというOpenStackプロジェクトがあります。
zunはneutronのネットワークやcinderのボリュームなどとコンテナを統合するAPIを提供します。
例えばclientからコンテナ作成のzunのAPIをたたくと、以下のような処理が実行されます。
・neutronから利用可能なnetwork情報を取得
・kuryrでネットワークを作成
・dockerでコンテナを作成
・コンテナをネットワークに接続
このように他のOpenStackコンポーネントを統合するのがzunの特徴と言えます。
コンテナと言えばKubernetesのイメージが強くなっていますが、コンテナ化していくOpenStackをよりシンプルに利用できるようにすることを考えると、OpenStackの様々なコンポーネントを統合するzunも今後注目度が高まっていきそうです。
■サミット後のパーティー
OpenStackサミット恒例の、セッション終了後のパーティーですが、今回はボストンレッドソックスの本拠地、フェンウェイパークにて行われました。
歴史ある野球場が貸切ということで、ボストンを満喫できる趣向となっています。
サミット後のパーティーはコミュニティのメンバーや他社の方とフランクに話せる貴重な機会ですので、もし本記事を読んでいる皆様が今後サミットに行く場合、ぜひパーティーまで参加することをおすすめします。
(......ただ、現在ボストンの気温は日本に比べて大変低いため、吹きさらしになっているこの会場はなかなか身体にこたえました......)
■補足
1日目のキーノートについて、興味深い情報を書き逃していましたので、以下に補足します。
・1日目のキーノートではeBay社の発表がありました。
その中で、彼らが自作したkubernetesとOpenStack等をインテグレーションさせるツール、『TessMaster』を近々OSS化するとの発言がありました
ご興味お持ちの方は注視しておくと良いでしょう。
