Open Infrastructure Summit 2019 Denver参加レポート
2019/4/29~2019/5/1 にデンバーで開催されたOpen Infrastructure Summit 2019 Denver の現地の様子、気になったセッションなどをお伝えします!
テクノロジーコラム
- 2019年06月03日公開
はじめに
皆様、こんにちは!NTTテクノクロスです。 2019/4/29~2019/5/1 にデンバーで開催されたOpen Infrastructure Summit 2019 Denver の現地の様子、気になったセッションなどをお伝えします!
サミット会場であるコロラドコンベンションセンターで参加者を迎えてくれたのは 『I SEE WHAT YOU MEAN』という作品で、会場で行われる様々なイベントに興味を持って覗き込んでいるというコンセプトのようです。
今回の参加メンバーは、サミットの名称が『OpenStack Summit』の時から複数回に渡って参加経験のある2名と, 『OpenInfrastructure Summit』と名称が変わって初参戦の2名の計4名で参加してきました。
※2018年のSummit参加レポートは以下を参照してください。
- OpenStack Summit Berlin
- OpenStack Summit 2018 Berlin参加レポート
- OpenStack Summit 2018 Vancouver速報1回目
- OpenStack Summit 2018 Vancouver速報2回目
Keynote
今回のKeynoteはサミット初日に実施されました。
Keynoteのなかから、気になったトピックについて紹介します。
5G built on Open Infrastructure
AT&Tは2018年12月に米国初の5Gの商用サービスを開始し、現在は全米の19都市、2020年初頭までに全米でサービス展開予定との事で、5G Evolved Packet CoreをAirshipでデプロイ&管理している点をアピールしていました。
そして、2018年5月のOpenStack Summitでパイロットプロジェクトとして発表したAirshipが、今回のサミットの初日(2019/4/29)に1.0としてリリースした事が発表されました。
『5G = ULTRA-LOW LATENCY』のデモとして 二人のプレイヤーがヘッドマウントディスプレイを被った状態で、映し出される映像を元に発光するボタンをリアルタイムにタッチしていくゲームをプレイし、
3G・4G・5Gのそれぞれの遅延差を表現するようなデモが行われました。
5Gと4Gの差は体感的にはわかりにくかったものの、3Gとの差は明らかにプレイヤーの反応差が出ていたように感じました。
LIFE ON AN OSF PROJECT
OpenStack Foundation配下で運営されるプロジェクトのPilot ProjectのKata Container, StarlingX, Airship, Zuulのうち ZuulとKata Containerの2つのプロジェクトについては成熟度が進み、Confirmed Projectになった事が発表されました。
4 Open
また、今回のキーノートおよびいくつかのセッションで見かけたキーワードが「4 Open」です。
「4 Open」は以下4つの「Open」を指しており、これらを守ることでOpenStackは優れたコミュニティを形成出来ているという説明がされていました。
- Open source (ソースコードが開かれていること)
- Open design (設計が開かれていること)
- Open development (開発(の体制)が開かれていること)
- Open community (コミュニティが開かれていること)
OpenStack FoundationはOpenStackに加えて新たにコミュニティを主催しているStarlingXやAirship、Kata等のコミュニティも「4 Open」の名のもとで、サポートしていくとのことです。
Canonical Sponsored Keynote
Canonical社のスポンサードキーノートでは、COOであるマーク・シャトルワースが今回も自ら登壇しました。
UbuntuとOpenStackの10年にわたる歩みなど、Canonical社とOpenStackの関係性が熱く語られていましたが、この講演のハイライトはやはり当日(2019/4/29)にリリースアナウンスされた「Ubuntu advantage for Infrastructure」でしょう。
Ubuntu advantageはCanonical社が提供するUbuntuのサポートサービスで、これまでは対象製品ごとに細かくプランが分かれており、やや複雑な形態になっていました。Ubuntu advantage for Infrastructureではそれらを統合し、Linux, Kubernetes, Docker, OpenStack, KVM, Ceph, Swift等、インフラストラクチャに関わる広範な製品をこのプラン1つでカバーできるようになっています。自社でUbuntu OSを利用したインフラを運用する場合、従来より更に魅力的なサポートプランとなったのではないでしょうか。
なお、NTTテクノクロス株式会社では、Ubuntu advantage for Infrastructureの日本語窓口業務を行っております。 日本語による対応をお求めの場合、お気軽にこちらからお問い合わせください。
セッション
参加メンバーが聴講したセッションの中から興味深かった内容について紹介します。
Lessons Learned running Open Infrastructure on Baremetal Kubernetes Clusters in Production
このセッションではKeynoteでも発表のあったAT&Tのチームの発表で 2年間に渡ってkubernetesクラスターの運用を実施してきた中で、直面した課題とその対処から学んだ教訓を紹介するセッションです。
サミット初日のKeynote直後のセッションということもあり、立ち見の参加者が出る程の人気のセッションで "We strongly advocate" のフレーズで経験に基づいた提言をあげていた部分が印象的でした。
DockerやKubernetesのアップグレードに関する話題や,Self-Hosted Log Managementに関する話題などが挙げられていました。
本セッションは、ビデオが公開予定という事で楽しみにしていましたが、本記事の執筆時点では公開されていないのが残念です。
Ops War Stories / Architecture Show and Tell
OpenStackクラウド基盤の運用者が集まり、実運用で困ったエピソードに関するライトニングトークを行うセッションです。
直前まで発表のエントリがほぼ皆無で、本当に開催できるのか(個人的に)心配していたのですが、いざ開催されてみると飛び入り参加の方も現れるなど、なかなかの盛況でした。
発表タイトルはこちらのEtherpadにまとまっています。
トップバッターの「Real-life horror stories about cinder」は弊社の本上の発表です。
内容は会場限定のオフレコ部分があり(残念ながら)詳細にご紹介できないのですが、Cinderドライバにまつわるトラブルエピソードや検証時の注意点を語ったところ、参加者の共感を得られたようで、笑いが何度か起きました。
他のライトニングトークも、OVS関連のネットワークトラブルや、OpenStackアップグレードを契機にトラブルが発生した等、私も見たことがある事象が多く、OpenStackの運用者として非常に共感できる(と同時に背筋が凍る)エピソードが満載でした。
このセッションのような、OpenStack運用者が情報を持ち寄りお互いにフィードバックする会合は「Ops Meetup」という名称でしばしば開催されています。日本でも2019年7月22日(月)~2019年7月23日(火)に開催されるCloudNative Days Tokyo 2019 / OpenStack Days Tokyo 2019の中で開催を予定していますので、興味がありましたら、注目してみると良いでしょう。
ちなみに、セッションの最後には、最も興味深かったエピソードへの投票が行われましたが、本上のライトニングトークが1位となり、次回(もしくは次々回)サミットのチケットを獲得しました。
Kubernetes - 7 lessons learned from 7 data centers in 7 months
このセッションではAdobe社のKubernetes利用に関する内容の発表でした。
環境としてOpenStack上とAWS上の両方を使い分けており、それぞれの特徴としては、OpenStack側の環境はオートスケールは発生させず、固定的なフットプリントとなる設計やPersistent Storageの利用をしていない点が挙げられていました。AWS上ではcluster-autoscalerを有効にしており、オートスケールが頻繁に発生する要因としては機械学習のワークロードを動作させている為であるとの説明がありました。
Container use-cases and developments at the CERN cloud
このセッションでは、CERNのコンテナ環境のユースケースが紹介されていました。
CERNでは、OpenStack上で1796個のMagnum nodeを使ってKubernetesクラスターを375個動作させていて、ストレージ機能やADの連携といったカスタマイズに加えログの集約をElasticSearchを利用しているそうです。 ユースケースとしてはバッチ処理/エンドユーザーの分析用/機械学習/CI等の様々な用途で利用していて、ニーズに合わせた使い方の事例として参考になる内容でした。
Comparing Service Mesh Architectures
このセッションでは、『サービスメッシュとは?』、『サービスメッシュによって提供される機能とその利点』といった基本の説明から始まり、 製品分類ではOpen Sourceに分類されるものとしてEnvoy, Istio, Linkerd, Linkerd2 Commercialに分類されるものとしてConsul, Aspen Mesh, Kong Enterprise Mesh, AWS App Meshが紹介されていました。
アーキテクチャの分類としてはLibrary, Node Agent, Sidecarの3種類の特徴の紹介後、それぞれのメリットとデメリットについて解説がありました。
各分類のメリットとデメリット
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Library型のメリットとしてはリソースが各サービスの一部として含まれる点で、デメリットとしてアップグレードの困難さが挙げられていました。
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Node Agent型はオーバーヘッドが少ないものの、デメリットとしてサービス間通信の暗号化等の部分に柔軟性にかける点が挙げられていました。
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Sidecar型はサービス間通信のきめ細かい暗号化の実現や透過的な点がメリットであるが、Sidecarのオーバーヘッドがデメリットとして挙げられていました。
まとめ
OpenStack Summitという名前の頃から数えると今回で19回目を迎える本イベントですが、実は会場規模や参加者数は2015~2017年頃の最盛期に比べるとやや縮小しています。 近年話題のインフラ系イベントでいえば、たとえばKubecon(kubernetesのサミット)は参加者が1万人を超えているそうで、現状の勢いとしてはそちらのほうが盛り上がっていると言えそうです。 OpenStackは登場してから10年経っており、技術として成熟してきていますので、これはある種当然の流れと言えるでしょう。
ただし、OpenStack FoundationがOpenStack以外のソフトウェアもホスティングしたことで、エッジコンピューティングやコンテナのセキュリティなど、サミットで扱われる話題の幅は従来よりも大きく広がっています。 そのため、扱っているインフラ技術の広さ・深さという面で、今後も注目のイベントであることに変わりはなさそうです
以上、デンバーで開催されたOpen Infrastructure Summitの参加報告でした。
本記事に対するお問い合わせ先: OSSクラウド基盤トータルサービス
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