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スピーディな経営が求められる今、情シスがなすべきこととは?

経営変革を図ろうという企業においては、どのような考え方や取り組みが求められ、そして、そのために情シスは何をすべきなのか。具体的に見ていきましょう。

第4次産業革命の到来、グローバル市場での競争環境の激化などにより、いかなる企業も今までどおりのやり方のままでは生き残れない時代です。そうした状況の中で、企業の成長、発展と事業価値を向上させるためには、顧客や市場、競合、新たな技術などのビジネス環境の変化に敏感となり、経営における戦略とオペレーションの手法を改革していくことが不可欠だといわれています。当然ながら、これは経営層だけに突きつけられた課題ではなく、情報システム部門がいかにITという側面から支援できるかということも成否の鍵を握っています。

たとえば、以前紹介したNTTテクノクロスフェア 2017での横塚裕志氏による基調講演(イベントレポート:NTTテクノクロスフェア 2017(前編))でも述べられていたように、企業としての生き残り戦略を図るためには、既存のビジネスモデルをお客様起点に180度変え、さらには、お客様の課題解決をコミットする新たなビジネスモデルを開発することで、自社をイノベーションし続けることが不可欠といえます。

それを受けて、情シスは企業ITにおけるクラウド活用のさらなる拡大を検討しつつ、EAIなどで既存システムとの連携を容易にしておくことで、迅速かつ柔軟に、付加価値の高いシステム構築や改修を行えるようにインフラを整備しておくべきでしょう。しかし、情シスに求められるのはそれだけにはとどまりません。経営変革を図ろうという企業においては、どのような考え方や取り組みが求められ、そして、そのために情シスは何をすべきなのか。具体的に見ていきましょう。

データにもとづく意思決定を"徹底"する

【企業に求められること】

以前から「激動するビジネス環境に対応するためには、これまでのような経験や勘に頼ったやり方から、データにもとづく迅速な意思決定へとシフトしなければならない」と経営者の多くはそう考えており、現場の社員にも求めてきたはずです。そして、具体的な取り組みとして、BIツールなどを用いた「経営の見える化」に取り組んできたのではないでしょうか。

しかし、そこまでは実現できているものの、意思決定の迅速化にはつなげられている企業はまだまだ多くはありません。そもそも経営層などが迅速な判断を行うためには、常に現場の情報を把握できるようにする必要があります。そして、そのためには十分かつ高品質なデータが不可欠であり、管理会計情報にとどまらず、現場の情報や外部のデータなども取り込んでいかなければなりません。

また、BIツールを導入しているにもかかわらず、実際に企業内で利用している社員は一部にとどまるというケースも多いようです。今後はそうした状況を解消し、経営層や一部の現場だけではなく、全社レベルでデータ分析の成果を活用するとともに、データや分析結果を皆で共有しながら意思決定につなげるということを徹底していく必要があるでしょう。

【情シスがなすべきこと】

すでにBIツールを活用している企業でも、現場の依頼に応じて、情シスが分析に必要なデータを準備、さらには分析業務そのものを担っているケースは決して少なくありません。そうした状況の中で、新たなデータを次々に収集、加工し、また、現場の社員の分析スキルを高めることにも尽力し、BIツールの利用を広めていくことは容易ではないでしょう。本来、情シスは自らがデータ分析を行うのではなく、データ分析のための環境の提供、整備に徹するべきです。そもそも、こうしたBIツールを導入していても利用が浸透していない企業においては、現在利用中の製品が自社のニーズに合っていない可能性を考慮すべきではないでしょうか。BIツールは製品ごとに特徴が異なり、1つのBIツールで社内の幅広いニーズに対応することは難しいともいわれています。また、現在のBIツールは以下のような特徴を備えたものが多くなっています。

●セルフサービス/データ・ディスカバリ

GUIによる直感的な操作、インメモリ技術などによる高速レスポンス、多彩なビジュアライゼーション機能などにより、分析スキルを持たないユーザーでも容易に多角的な分析が行えます。つまり、誰もがデータから容易に洞察・知見が得られます。

●データ・プレパレーション

非構造化(非定型)データも含めて、データ分析に必要となるさまざまなデータの抽出、加工を視覚的な操作が行えることで、事前の準備をサポートします。

●アナリティクス

もともとBIは、過去や現状の把握を目的とし、あくまでも意思決定の参考とすべきものです。より意思決定に直結する(機械学習や多変量解析などを用いた)将来の予測については、ビジネスアナリティクス(BA)ツールが担っていました。しかし、現在ではBIツールでも高度な予測分析機能を備えたものが増えてきています。

裏を返せば、現在ではデータ分析を実際の意思決定に役立てるために、以下のようなことが求められているといえるのではないでしょうか。

  • さまざまなシステムからデータを集め、整理できる
  • 誰もがデータから容易に洞察・知見を得られる
  • 過去の分析だけではなく、未来の予測も行える

社内の組織を活性化しつつ、社外の"知見"も取り入れる

【企業に求められること】

イノベーションを起こすには、新たな人材を取り入れることも必要ですが、当然ながら、既存の人材、そして、その知見を最大限に生かすための環境づくりも重要といえます。そのためには、単に情報伝達や情報共有などのコミュニケーションをこれまで以上に活性化させるだけでなく、ビジネスに有効なアイデアや潜在的な問題が個々の社員の頭から自然と引き出され、スムーズに共有できるような"仕掛け"が求められるのではないでしょうか。

また、組織全体の創造力やスピードを高めるためには、旧態依然としたトップダウンの情報伝達だけではなく、場合によっては、すべての社員が組織や階層を超えて、水平的なコミュニケーションを円滑化できるような環境を実現しなければなりません。さらに、現在では企業競争力の強化を図るためにも、自社内の力だけではなく、社外のパートナーとのエコシステムを構築することも求められます。そのため、組織間、社内外などでプロジェクト型の協業を実現するための場の構築といったことにも積極的に取り組むべきでしょう。

【情シスがなすべきこと】

これまでもグループウェアなどで情報伝達や情報共有を図ってきたはずですし、少し前には企業での新たなコミュニケーションツールとしてエンタープライズソーシャル/社内SNSなどにも注目が集まったこともありました。当然ながら、こうした統合型のコミュニケーションツールによって上記のような環境を構築することも可能です。

ただ、包括的な1つのツールにあまりにも固執しすぎると、世の中の変化のスピードにツールそのものがついていけず、結局は使われなくなってしまうというリスクも生じ得ます。そのため、コミュニケーション基盤というものはいったん導入すれば終わりではなく、製品動向に注視しながら、必要に応じて全体的もしくは部分的に入れ替えていくことも検討すべきでしょう。

また、今後は業務プロセスの中でよりスムーズにコミュニケーションを図れるような環境が求められるのではないでしょうか。たとえば、前章で述べたBIツールの中には、コラボレーション機能を内蔵し、データ分析の成果を共有できる場を提供している製品も存在します。つまり、SNSのように、データ分析の結果やレポートをほかの社員と共有しながら、それをどう見るか、何をすべきかなどをBIツール上で議論ができ、スムーズに意思決定や企業戦略、アクションへつなげるという方法もあります。

このように、社内や自社を取り巻くビジネス状況の"現在"、そして、"今後"を見つめながら、経営層と現場が密接に議論を行える環境構築が重要となります。また、情シスも決して例外ではなく、ビジネスに関わるデータの管理・活用を担う立場、そして、業務部門とともに新たなサービスを創出する立場から、こうした議論の場へ積極的に参加すべき時代だといえます。さらに、それだけではなく、経営層や現場の生の声を聞くことで、自分たちの次のアクションもより的確なものにできるのではないでしょうか。

※会社名、製品名などの固有名詞は、一般に該当する会社もしくは組織の商標または登録商標です。

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