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変化を遂げる情報システム部門の実際-その1-

情報化社会において"激動の時代"を迎えている情報システム部門。現場で働く情報システム部門の人はどのように受け止めているのでしょうか? ICT業界の情報システム部門で実際に業務に従事されている方にインタビューを行い、情報システム部門の実際について考えてみました。

〜時代を掴む、情シスの姿〜

今、情報システム部に求められる役割は確実に変化しています。「"情シス不要論"は本当?これからの情報システム部に求められる役割とは」では、「守りの情シス」から「攻めの情シス」への転換について、考えてみました。

情報化社会において"激動の時代"を迎えている情報システム部門。では、現場で働く情報システム部門の人はどのように受け止めているのでしょうか?ICT業界の情報システム部門で実際に業務に従事されている方にインタビューを行い、情報システム部門の実際について考えてみました。

お話を伺った方

社員数2,000名弱のSIer勤務。入社16年目。12年の開発経験を経て、4年前に情報システム部へ移動。基幹系システムに関する企画・開発・維持運用のチームリーダ。

時代の変化、社内の変化

世界で初めてコンピュータが登場したのは1946年と言われています。1960年代にメインフレームが登場し、1980年になるとパーソナルコンピュータが普及し始めます。 1990年に入ると、インターネットが爆発的に広がりを見せます。 また、この時期には、あらゆる世代の人びとが携帯電話やポケットベル、PHSなどの端末を持ち、電話やメールで外出先でもコミュニケーションができるようになってきました。 21世紀に入ると、ハードウェアやソフトウェアの進化とともに、インフラの整備による大容量化・高速化、サービスの発展を遂げて爆発的な進化を遂げ、今後はAIによる自動処理の範囲が広がり、コンピュータが生まれた時代の目的である業務効率化・生産性向上をさらに進展させるものと期待されています。 今の時代の便利は、コンピュータの歴史と切っても切り離せない関係性を持っています。

では、本題である社内で活用する情報システムはどのように変化しているでしょうか?

もっとも大きい変化は、時代の変化と同様、モバイル、特にスマートフォンの普及でしょう。社員がスマートフォンを活用して、手軽に社内システムにアクセスし、社外からメールの確認、営業情報の入力などを行うことも可能になってきています。

また、革新的な変化の一つとして、クラウドサービスの普及も挙げられます。クラウドサービスはモバイル端末との親和性が高く、社内・社外問わず、どこからでもクラウドサービスにアクセスし、アプリケーションやストレージとして利用することができます。

ICTにおける多くの変化は、主に個人消費者から起こります。時代の流れとともにコンピュータも進化を遂げ、個人がそれを利用し、便利と感じたもの(感覚)を、社内に持ち込み、改善を求めます。 情報システムの変化は、この感覚に基づくものも多くあります。企業におけるスマートフォンの活用やクラウドサービスの利用も、この一環であると言えるでしょう。

求められる情報システム部門の変化

では、今回インタビューを行った企業の情報システム部門において、どのような変化があったのでしょうか?

「当社は、30年あまりの歴史を持ちます。当社が商品として数多くのクラウド型のサービスを提供しているように、当然自社の基幹システムも変化をし始めています。当社では、オンプレミスの基幹システムを多く採用していましたが、現在は必ずクラウドファーストでシステムを導入する姿勢にシフトしたことは大きな変化と言えます。ここ数年、社内で新しく使い始めたサービスはほぼクラウドサービスです。」

クラウドサービスを利用するということは、多くのメリットを生み出します。例えば、サーバの管理が不要、導入初期コスト負担の軽減、サービスの切り替えが容易、などです。

まさに、オンプレミスのシステムにはない、クラウドならではの恩恵を得ることができますが、一方で、クラウドサービスを利用する場合には、カスタマイズ性が低いこと、セキュリティの検討が必要(特にネットワーク)、他システムとの連携性、といった内容について、導入を行う前に、自社システムの環境、セキュリティポリシーの実態などと照らし合わせながら、検討していく必要があります。

その他には、どういった変化があったのでしょうか?

「モバイル対応をしてほしい、という期待の声が多くなりました。情報システム部門としても『必要』と理解しているにもかかわらず、提供が遅れています。各自のスマートフォンからワークフローの承認を行ったり、営業情報を登録・確認するといったサービスは、他社では導入されている企業が多いこともあり、『なぜ当社はできないのか』とよく言われています。」

クラウドサービスの利用やモバイル化が進む中で、なかなか進まない自社システムの変化。ユーザからの大きな期待があり、必要性を自身も感じている情報システム部門。では、この企業では、どのようにモバイル化に向かって情報システム部門が立ち向かって言ったのでしょうか?ある具体的な事例をお話しいただきました。

セキュリティポリシーに対応して導入したコミュニケーションツール

「当社では、非常に厳しいセキュリティポリシーを設定しており、システム導入に関して言えば、それがネックで対応が遅れている部分はあると思います。」

企業として、セキュリティポリシーを順守することは非常に大切です。一方で、この企業では、業務上のプロセス改善による生産性向上も重要な改善事項となっており、その改善の取組みの一つとして、「メールを減らす」という明確な課題があったそうです。

「メールへの負荷を軽減するコミュニケーションツールとして、グループチャットを導入することを企画しました。
導入する製品の選定を行った後、社内のセキュリティポリシーやルールと照らし合わせてフィット&ギャップを行います。その際、セキュリティポリシー上どうしても製品の改修が必要な項目がありました。
それ以外に、当社では勤務管理においては、申請された勤務時間外でのメールの送受信の時間を照らし合わせたチェックを行っていました。グループチャットが追加されたとき、メールだけをチェック対象としていたのでは十分ではありません。
こういった対応しなければならない部分をひとつずつ穴埋めしていくような作業が必要でした。」

企画段階で多くの課題を抽出し、一つ一つの課題を製品の改修だけではなく、ルールの見直しも含めて検討を進め、導入までこぎつけることが出来たそうです。しかし、導入当初は、ほとんど使われることがなかったとのことでした。

「最初はほとんど使われることがなく、失敗したかと焦りました。そこで、社内の声をもっと拾ってみようと声掛けを行いました。すると、『協力会社とチャットが出来ないから使えない』という意見がありました。当社は開発会社なので、当社の社員だけで仕事が完結することはありません。すぐに協力会社にもサービスを開放しました。そこからは、あっという間にチャット文化が浸透し、メールの件数が想定どおり見事に減りました。」

社内へのグループチャットの文化が浸透し、「メールを減らす」という業務改革に成功した情報システム部門。

セキュリティポリシーやルールという制限のある中でも、試行錯誤を繰り返し、あらゆる方向から課題を解決しようとする情報システム部門の姿が見えてきました。

情報システム部門の苦労は、導入するだけでは終わりません。クラウドだから簡単に切り替えられる、そのような安易な気持ちで、システムを入れ替えてしまった際の影響度は、計り知れないものがあります。

「システム側の課題と同時に、組織構造や業務プロセスにも問題があり、改善の必要性があると考えています。もちろん、システムで改善できる点は変えていきます。しかし、それ以上に組織やルール、会社の戦略が重要になってきます。会社の戦略に基づき、権限設定やルールがあってのシステムですので、システムを変えればいいという話ではないのです。」

次回のブログでは、情報システム部門がシステム導入にあたって、何を実行する必要があるのか、変化に立ち向かう情報システム部門の実態、心構えについて、さらに深く追求していきたいと思います。



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